[PI-2-1] 学校における作業療法士の役割について
【はじめに】本校は平成16年4月に開校した重度重複障がいのある児童生徒を対象にした肢体不自由特別支援学校である.R5年度は医療的ケアが必要な22名の児童生徒が在籍している.教員,看護師,介護員等とともに札幌市の技術職員である作業療法士(以下OT),理学療法士(以下PT)が療法部職員として勤務し,教育活動のサポートとして関わっている.児童生徒の実態から多職種が接する機会が多く,職種間での協働が期待されている.今回,教員との連携事例を通し学校で求められるOTの専門性や役割について考察した.なお,発表にあたり児童の個人情報の保護とプライバシーに配慮し説明後同意を得ている.
【対象】SMAⅠ型9歳男児.24時間人工呼吸器使用,横地分類ではC1を呈する.随意運動は眼球運動と眉間,両側母指伸展と足関節背屈運動が見られ,ADLは全介助.質問に対し視線を合わせることや表情にてYES/NOの表出,日常会話の理解が可能.母指伸展運動にてスイッチをランダムに押す操作ができるが,タイミングを合わせることに課題がある.また,対象への注視や指さしの理解に未熟さがあり,課題の意図が伝わらないことがある.本人や保護者の願いを踏まえた長期的な目標として,支援機器を使用したコミュニケーション手段の獲得を見据えているため,短期目標としてタイミングよくスイッチを押す,対象に注視できることを教員と共通の目標とした.
【経過】R4年より月3回の個別作業療法と教員による指導時間を中心に関わりを続けた.目標,支援の方向性の共有は,個別の指導計画を用いて学期ごとに行う会議と,放課後等の日常的な場面で実施した.スイッチはセンサー型のタッチスイッチを使用し,課題は絵合わせとした.視線入力装置はTobiiEyeTracker5,ソフトは「EyeMoT 2D」を使用し,注視を促す課題を行った.実施場所の環境設定や課題,スイッチのフィッティング,提示方法等を変えて達成度や視線の動きを比較した.実施の際は,その場で児童とOTと教員とで振り返りを行った.放課後に教員やPT等と検証し仮説を立て,実施と評価を繰り返した.また,外部機関と取り組みや関りを共有する機会を適宜設け,課題が共通していることもわかってきた.
【結果】教員や多職種と協働したことで,評価に基づく具体的な支援方法が見つかった.さらに校内での協働を外部機関と共有することができ,支援の方向性を確認したことで各々の場所での関りに生かせた.視覚と聴覚でのフィードバックを用いること,視覚刺激を制限する環境が児童に適していることがわかり,学習場面に取り入れた.それにより,授業場面にてパソコンをスイッチと視線入力装置で操作し,自己紹介の発表ができた.絵合わせでは指差しの理解とタイミングを合わせた操作の向上がみられ,視線入力装置での注視課題では全ての対象を見ることができた.
【考察】教員や多職種と日常的な情報交換や実際場面の共有,外部機関と課題を一緒に検討できたことから,細かな評価が可能となり,児童に適した環境設定や課題の段階付けができたと考える.今回の事例を通し,学校におけるOTの役割を医療職としての心身機能の評価とそれに基づく支援や助言,外部機関を含めた多職種との連携や機会を調整すること等が示唆された.児童生徒のより良い支援のためには,お互いの専門性を尊重する視点を持ち,学校という教育の場でのニーズに合わせた提案ができる技術を磨いていくことも必要と考える.今後も学校での役割を検討していきながら,教員との協働をどのように校内外への支援に生かせるか考えていきたい.
【対象】SMAⅠ型9歳男児.24時間人工呼吸器使用,横地分類ではC1を呈する.随意運動は眼球運動と眉間,両側母指伸展と足関節背屈運動が見られ,ADLは全介助.質問に対し視線を合わせることや表情にてYES/NOの表出,日常会話の理解が可能.母指伸展運動にてスイッチをランダムに押す操作ができるが,タイミングを合わせることに課題がある.また,対象への注視や指さしの理解に未熟さがあり,課題の意図が伝わらないことがある.本人や保護者の願いを踏まえた長期的な目標として,支援機器を使用したコミュニケーション手段の獲得を見据えているため,短期目標としてタイミングよくスイッチを押す,対象に注視できることを教員と共通の目標とした.
【経過】R4年より月3回の個別作業療法と教員による指導時間を中心に関わりを続けた.目標,支援の方向性の共有は,個別の指導計画を用いて学期ごとに行う会議と,放課後等の日常的な場面で実施した.スイッチはセンサー型のタッチスイッチを使用し,課題は絵合わせとした.視線入力装置はTobiiEyeTracker5,ソフトは「EyeMoT 2D」を使用し,注視を促す課題を行った.実施場所の環境設定や課題,スイッチのフィッティング,提示方法等を変えて達成度や視線の動きを比較した.実施の際は,その場で児童とOTと教員とで振り返りを行った.放課後に教員やPT等と検証し仮説を立て,実施と評価を繰り返した.また,外部機関と取り組みや関りを共有する機会を適宜設け,課題が共通していることもわかってきた.
【結果】教員や多職種と協働したことで,評価に基づく具体的な支援方法が見つかった.さらに校内での協働を外部機関と共有することができ,支援の方向性を確認したことで各々の場所での関りに生かせた.視覚と聴覚でのフィードバックを用いること,視覚刺激を制限する環境が児童に適していることがわかり,学習場面に取り入れた.それにより,授業場面にてパソコンをスイッチと視線入力装置で操作し,自己紹介の発表ができた.絵合わせでは指差しの理解とタイミングを合わせた操作の向上がみられ,視線入力装置での注視課題では全ての対象を見ることができた.
【考察】教員や多職種と日常的な情報交換や実際場面の共有,外部機関と課題を一緒に検討できたことから,細かな評価が可能となり,児童に適した環境設定や課題の段階付けができたと考える.今回の事例を通し,学校におけるOTの役割を医療職としての心身機能の評価とそれに基づく支援や助言,外部機関を含めた多職種との連携や機会を調整すること等が示唆された.児童生徒のより良い支援のためには,お互いの専門性を尊重する視点を持ち,学校という教育の場でのニーズに合わせた提案ができる技術を磨いていくことも必要と考える.今後も学校での役割を検討していきながら,教員との協働をどのように校内外への支援に生かせるか考えていきたい.