[PI-2-8] 健常成人における3軸圧センサーを用いた消しゴム操作の特性解析
【はじめに】不器用さを呈する発達障害児は,描画・書字活動において困難を示すことが多く,要因の解明や介入方法に関して多くの研究が進められている.しかし,描画・書字活動に関連した消しゴム操作に対する研究は未だ報告されていない.実際の臨床場面では,不器用な発達障害児の場合,用紙をくしゃくしゃにして破いてしまうなどの訴えがある.このように消しゴム操作には,紙に対する消しゴムの力の調整が関連していると考えられる.これまで力の調整能を評価する研究は多くの分野で行われているが,現在用いられている圧センサーは,センサーに対して垂直にかかる力のみを測定したものが多い.消しゴム操作に関する力の調整能を詳細に評価するためには,消しゴムを紙に押し付ける力と,紙をこする力を測定することが必要になる.本研究では,健常成人3名を対象に3軸が測定可能な圧センサーを用いて,消しゴム操作時に机上面にかかる垂直な力の大きさと,水平な力の大きさの割合を測定し,3軸の圧の特性から解析する方法の提案と健常成人の特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象者は20代で右利きの健常成人3名(A氏,B氏,C氏)とした.課題内容は,消しゴムで課題目標を消す動作を日常的な操作方法で実施し,1回の練習の後,3試行行った.課題目標は,A5用紙の中心に縦18㎜×横4㎜の大きさをHBの鉛筆で黒く塗りつぶしたものとした.机上面に圧センサー(NISSHA株式会社)を敷き,その上に課題用紙を置き,毎回同じ位置に固定した.対象者には「自分が綺麗に消せたと思うまで,最後まで消しきってください.」「3回とも同じ持ち方・消し方で消してください.」と教示した.圧センサーは机上面に対してX(水平横),Y(水平縦),Z(垂直)の3方向の圧が測定可能であり,測定周期は30Hzとした.センサーの大きさは,縦91㎜,横69㎜であり,その内側である縦72㎜,横48㎜が感圧範囲となっている.センサー内部は11×11のマス状になっており,1マスが縦6mm,横4mmのセンサーとなり,課題目標はそのうちの縦3マス分を対象とした.分析方法は,対象者ごとに,測定データを圧力値[N]へ変換した後,課題目標の中心である1マス分の座標のX,Y,Z軸の平均値を算出し,さらに3試行分の平均値を算出した.その後,X/Z×100,Y/Z×100として垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合を算出した.なお本研究は,筆頭著者の所属先における倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】3試行の平均値(X[N],Y[N],Z[N])は,A氏が(0.03,0.09,0.44),B氏が(0.03,0.07,0.50),C氏が(0.04,0.10,0.46)であった.また,垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合(X/Z×100[%],Y/Z×100[%])は,A氏が(7.13,19.67),B氏が(6.17,13.71),C氏が(9.58,21.47)であった.
【考察】本研究は,消しゴム操作時の力の調整能を,3軸圧センサーを用いて客観的に示した初めての試みである.今回の健常成人3名では,X軸の水平な力の割合は約6%~10%,Y軸の水平な力の割合は約13%~22%と一定の傾向を示す結果となった.このことは,今回の研究で用いた「垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合」が,消しゴムにおける力の調整能を分析する上で有用な指標となる可能性を示していると考えている.また,発達障害児では,垂直にかかる力であるZ軸の力の大きさが小さくなる,水平にかかる力であるX軸,Y軸の力の大きさが大きくなるといった垂直軸に対する水平軸の力の割合が不均衡となっている可能性が推定され,上手に消せるか否かといった消しゴム操作の結果と力の調整能との関連について分析を進めていく.
【方法】対象者は20代で右利きの健常成人3名(A氏,B氏,C氏)とした.課題内容は,消しゴムで課題目標を消す動作を日常的な操作方法で実施し,1回の練習の後,3試行行った.課題目標は,A5用紙の中心に縦18㎜×横4㎜の大きさをHBの鉛筆で黒く塗りつぶしたものとした.机上面に圧センサー(NISSHA株式会社)を敷き,その上に課題用紙を置き,毎回同じ位置に固定した.対象者には「自分が綺麗に消せたと思うまで,最後まで消しきってください.」「3回とも同じ持ち方・消し方で消してください.」と教示した.圧センサーは机上面に対してX(水平横),Y(水平縦),Z(垂直)の3方向の圧が測定可能であり,測定周期は30Hzとした.センサーの大きさは,縦91㎜,横69㎜であり,その内側である縦72㎜,横48㎜が感圧範囲となっている.センサー内部は11×11のマス状になっており,1マスが縦6mm,横4mmのセンサーとなり,課題目標はそのうちの縦3マス分を対象とした.分析方法は,対象者ごとに,測定データを圧力値[N]へ変換した後,課題目標の中心である1マス分の座標のX,Y,Z軸の平均値を算出し,さらに3試行分の平均値を算出した.その後,X/Z×100,Y/Z×100として垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合を算出した.なお本研究は,筆頭著者の所属先における倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】3試行の平均値(X[N],Y[N],Z[N])は,A氏が(0.03,0.09,0.44),B氏が(0.03,0.07,0.50),C氏が(0.04,0.10,0.46)であった.また,垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合(X/Z×100[%],Y/Z×100[%])は,A氏が(7.13,19.67),B氏が(6.17,13.71),C氏が(9.58,21.47)であった.
【考察】本研究は,消しゴム操作時の力の調整能を,3軸圧センサーを用いて客観的に示した初めての試みである.今回の健常成人3名では,X軸の水平な力の割合は約6%~10%,Y軸の水平な力の割合は約13%~22%と一定の傾向を示す結果となった.このことは,今回の研究で用いた「垂直な方向に対する水平な方向にかかる力の割合」が,消しゴムにおける力の調整能を分析する上で有用な指標となる可能性を示していると考えている.また,発達障害児では,垂直にかかる力であるZ軸の力の大きさが小さくなる,水平にかかる力であるX軸,Y軸の力の大きさが大きくなるといった垂直軸に対する水平軸の力の割合が不均衡となっている可能性が推定され,上手に消せるか否かといった消しゴム操作の結果と力の調整能との関連について分析を進めていく.