[PI-3-4] 視覚障害児支援における作業療法士の役割について
作業療法士へのインタビュー調査より
【はじめに】筆者は,作業療法士として視覚障害の子とその保護者に介入する中で,作業療法の強みは,人と環境,そして作業遂行を考えられ総合的なアプローチができることと考えている.しかし,作業療法の分野においては肢体不自由児・知的障害児への作業療法介入の意義や有効性は過去に報告がされている一方で,視覚障害児に対する作業療法の報告は少なく,明確にされていない.そこで,視覚障害児の子育て支援における作業療法士の介入の役割や内容を探ることで,作業療法士の職域を広げる方策を提示することができると考える.
【目的】視覚障害児の子育て支援における作業療法士の役割・内容について明らかにする.
【方法】対象者は,日本国内の視覚特別支援学校において,作業療法士の資格を有して関与している者を対象とし,スノーボールサンプリングにより抽出された3名とした.データ収集は,個別のインタビュー調査により行い,インタビューガイドに基づき半構成的インタビューを実施した.調査項目は,視覚障害乳幼児の子育て支援における作業療法士の介入の現状と役割について,視覚特別支援学校にて作業療法の視点を有して関与した経験と関与内容,作業療法士の関与に対する教員の反応,作業療法士が関与することでの効果,作業療法士が関与する意義,作業療法士の役割についてである.データ分析は,インタビューから得られたデータを逐語録とし,テキストマイニングを行い,単語頻度解析,係り受け頻度分析,ことばネットワークを行った.尚,実施にあたり聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号19096-01).
【結果】3名中1名は作業療法士として視覚特別支援学校に関与し,他2名は,作業療法士の資格を持つ教員の立場であり視覚特別支援学校への勤務経験を有している者である.作業療法士が関与することでの効果・意義・役割について,「作業療法士」についての係り受け頻度分析の結果,係り受け関係として,「作業療法士—関与」,「作業療法士—知る」が頻度3で抽出された.原文分析では,“作業療法士が持っている知識”や“作業療法士の認知度”に関する記述や,作業療法士が関与することの“効果”や“関与のきっかけ”について述べられていた.ことばネットワークでは,「作業療法士」,「お子さん」をそれぞれ中心とした2つのクラスタが抽出され,クラスタ間の結びつきもみられた.原文分析では,作業療法士が幅広い視点を有していること,教員は教育を実現するための対応を求めており作業療法士は作業療法の視点を生かして教員が実現したい教育の添え木になることができること,作業療法士は言語化が得意であり思考プロセスを共有することで効果が生まれる,対象児への関与や連携を通じて作業療法士への理解を広げていくことで作業療法士の関与の可能性が広がる,などが得られた.
【考察】視覚障害児の中には,視覚単一障害だけでなく肢体不自由や知的障害との重複障害児が多数おり,教員は対応に苦慮している.そのため,教員からの相談内容および作業療法士の関与内容は,粗大運動,巧緻動作,日常生活動作,感覚に関すること,環境調整など多岐に渡る.作業療法士の作業に焦点を当てた介入や思考プロセスは,従来の医療や療育の現場で行われている作業療法の視点と共通しており,視覚障害児に対しても役立つことが示唆された.作業療法士の職域や特徴を周知し,安定した人材確保と継続性,依頼先を明確にすることなどの取り組みが今後も望まれる.
【目的】視覚障害児の子育て支援における作業療法士の役割・内容について明らかにする.
【方法】対象者は,日本国内の視覚特別支援学校において,作業療法士の資格を有して関与している者を対象とし,スノーボールサンプリングにより抽出された3名とした.データ収集は,個別のインタビュー調査により行い,インタビューガイドに基づき半構成的インタビューを実施した.調査項目は,視覚障害乳幼児の子育て支援における作業療法士の介入の現状と役割について,視覚特別支援学校にて作業療法の視点を有して関与した経験と関与内容,作業療法士の関与に対する教員の反応,作業療法士が関与することでの効果,作業療法士が関与する意義,作業療法士の役割についてである.データ分析は,インタビューから得られたデータを逐語録とし,テキストマイニングを行い,単語頻度解析,係り受け頻度分析,ことばネットワークを行った.尚,実施にあたり聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号19096-01).
【結果】3名中1名は作業療法士として視覚特別支援学校に関与し,他2名は,作業療法士の資格を持つ教員の立場であり視覚特別支援学校への勤務経験を有している者である.作業療法士が関与することでの効果・意義・役割について,「作業療法士」についての係り受け頻度分析の結果,係り受け関係として,「作業療法士—関与」,「作業療法士—知る」が頻度3で抽出された.原文分析では,“作業療法士が持っている知識”や“作業療法士の認知度”に関する記述や,作業療法士が関与することの“効果”や“関与のきっかけ”について述べられていた.ことばネットワークでは,「作業療法士」,「お子さん」をそれぞれ中心とした2つのクラスタが抽出され,クラスタ間の結びつきもみられた.原文分析では,作業療法士が幅広い視点を有していること,教員は教育を実現するための対応を求めており作業療法士は作業療法の視点を生かして教員が実現したい教育の添え木になることができること,作業療法士は言語化が得意であり思考プロセスを共有することで効果が生まれる,対象児への関与や連携を通じて作業療法士への理解を広げていくことで作業療法士の関与の可能性が広がる,などが得られた.
【考察】視覚障害児の中には,視覚単一障害だけでなく肢体不自由や知的障害との重複障害児が多数おり,教員は対応に苦慮している.そのため,教員からの相談内容および作業療法士の関与内容は,粗大運動,巧緻動作,日常生活動作,感覚に関すること,環境調整など多岐に渡る.作業療法士の作業に焦点を当てた介入や思考プロセスは,従来の医療や療育の現場で行われている作業療法の視点と共通しており,視覚障害児に対しても役立つことが示唆された.作業療法士の職域や特徴を周知し,安定した人材確保と継続性,依頼先を明確にすることなどの取り組みが今後も望まれる.