[PI-4-3] 自閉スペクトラム症のある人とその家族そして作業療法士への「短い質問」調査
【序論】自閉スペクトラム症がある人(以下, 当事者)はその特性と家族のニーズが時間経過に伴い段階的に変化し, 文化・地域的多様性の影響に対する支援戦略が合わせて求められる(Lord et al., 2021). 一方当事者団体は自閉スペクトラム症の臨床研究や将来に対し, 当事者のより密接な研究への関与を求めている(European Council of Autistic People et al., 2022).
【目的】当事者参加型調査, Brief online survey (Autism CRC, 2022)を参考に, 当事者と家族そして作業療法士が, どのように作業療法で協働しているのか探索的に調査することを目的とした. 本研究は当事者と家族が, 作業療法士と協働する過程で生ずる課題を明らかにする意義がある.
【方法】 1)研究対象者 当事者は年齢を問わず医療診断あるいは精神障害者保健福祉手帳を所持した者とした. 2種以上の神経発達症の併存と療育手帳を所持した者は含め, 身体障害者手帳を所持する者は除外した. 家族は当事者と同居する者とした. 一般社団法人日本作業療法士協会が定める手続きに則り会員登録情報の障害種別(主)を「発達障害」とした作業療法士より, 養成機関に所属する者は除き2,399名の作業療法士を対象とした. 2)研究の手順 都道府県の総人口に占めるこどもの割合(総務省統計局,2023)を用いて層別サンプリングを行い, 取得した名簿から1,000名の作業療法士を無作為抽出し, 研究協力依頼書と匿名回答の「短い質問」調査(作業療法士用/当事者と家族用)を郵送した.(1)作業療法士は担当する当事者を1名選択し, その方をイメージした回答と, 当事者と家族用の研究協力依頼書及び「短い質問」調査の配布までを依頼した.(2)作業療法士, 成人で自記にて回答が可能な当事者は, 自身で「短い質問」調査を回答し, 当事者が未成年の場合は家族が代わって回答するよう依頼した. 回答の返信あるいはオンライン回答をもって研究参加の同意のオプトアウトとした. (3)調査の項目は, 当事者の年齢, 作業療法で一番好きなことと一番嫌いなこと, 作業療法で当事者のなにが変わったのかを短文の自由記述で尋ねた. 3)分析方法 計量テキスト分析を行った. 解析ソフトはKH Coder 3, データ収集期間は2023年11 月1日から2024年1月15日であった. 本研究は研究者が所属する研究倫理委員会の審査を受け実施した. 開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】作業療法士より72件, 当事者と家族より25件(当事者本人は4件)の回答を得た. 当事者は成人も含まれたが, 作業療法士が想起した当事者の年齢の中央値は6歳, また当事者は7歳であった. 作業療法による当事者の変化は, 双方とも運動機能や集中力など機能面と, 人への興味など社会性の改善が挙げられた. 次いで作業療法士は情緒の安定, 当事者と家族は笑顔の増加を挙げた. 好きな作業療法は 共にトランポリンなど感覚・運動を伴う「遊び」が主で, 作業療法士は機能改善を目的とした視運動課題, 更衣などADLそして描画や書字を求める机上課題を当事者が嫌いな作業療法として挙げたが, 当事者と家族の1/3は嫌いな作業療法が「特になし」であった. また当事者の回答を代筆した家族は, 本人の表情や振る舞いから好きか嫌いか理解できると述べていたが, 作業療法士は家族の捉えに加えて, 当事者を評価した結果からその思いを解釈していた.
【考察】結果より, 実際に行われる作業療法と作業療法による当事者の変化は, 作業療法の観点のない当事者と家族にとっては後方視的に振り返ることにより理解できる変化であろう. 作業療法士が当事者と家族と協働するには,開始時の作業療法のガイドと明瞭な説明責任を果たす必要があろう.
【目的】当事者参加型調査, Brief online survey (Autism CRC, 2022)を参考に, 当事者と家族そして作業療法士が, どのように作業療法で協働しているのか探索的に調査することを目的とした. 本研究は当事者と家族が, 作業療法士と協働する過程で生ずる課題を明らかにする意義がある.
【方法】 1)研究対象者 当事者は年齢を問わず医療診断あるいは精神障害者保健福祉手帳を所持した者とした. 2種以上の神経発達症の併存と療育手帳を所持した者は含め, 身体障害者手帳を所持する者は除外した. 家族は当事者と同居する者とした. 一般社団法人日本作業療法士協会が定める手続きに則り会員登録情報の障害種別(主)を「発達障害」とした作業療法士より, 養成機関に所属する者は除き2,399名の作業療法士を対象とした. 2)研究の手順 都道府県の総人口に占めるこどもの割合(総務省統計局,2023)を用いて層別サンプリングを行い, 取得した名簿から1,000名の作業療法士を無作為抽出し, 研究協力依頼書と匿名回答の「短い質問」調査(作業療法士用/当事者と家族用)を郵送した.(1)作業療法士は担当する当事者を1名選択し, その方をイメージした回答と, 当事者と家族用の研究協力依頼書及び「短い質問」調査の配布までを依頼した.(2)作業療法士, 成人で自記にて回答が可能な当事者は, 自身で「短い質問」調査を回答し, 当事者が未成年の場合は家族が代わって回答するよう依頼した. 回答の返信あるいはオンライン回答をもって研究参加の同意のオプトアウトとした. (3)調査の項目は, 当事者の年齢, 作業療法で一番好きなことと一番嫌いなこと, 作業療法で当事者のなにが変わったのかを短文の自由記述で尋ねた. 3)分析方法 計量テキスト分析を行った. 解析ソフトはKH Coder 3, データ収集期間は2023年11 月1日から2024年1月15日であった. 本研究は研究者が所属する研究倫理委員会の審査を受け実施した. 開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】作業療法士より72件, 当事者と家族より25件(当事者本人は4件)の回答を得た. 当事者は成人も含まれたが, 作業療法士が想起した当事者の年齢の中央値は6歳, また当事者は7歳であった. 作業療法による当事者の変化は, 双方とも運動機能や集中力など機能面と, 人への興味など社会性の改善が挙げられた. 次いで作業療法士は情緒の安定, 当事者と家族は笑顔の増加を挙げた. 好きな作業療法は 共にトランポリンなど感覚・運動を伴う「遊び」が主で, 作業療法士は機能改善を目的とした視運動課題, 更衣などADLそして描画や書字を求める机上課題を当事者が嫌いな作業療法として挙げたが, 当事者と家族の1/3は嫌いな作業療法が「特になし」であった. また当事者の回答を代筆した家族は, 本人の表情や振る舞いから好きか嫌いか理解できると述べていたが, 作業療法士は家族の捉えに加えて, 当事者を評価した結果からその思いを解釈していた.
【考察】結果より, 実際に行われる作業療法と作業療法による当事者の変化は, 作業療法の観点のない当事者と家族にとっては後方視的に振り返ることにより理解できる変化であろう. 作業療法士が当事者と家族と協働するには,開始時の作業療法のガイドと明瞭な説明責任を果たす必要があろう.