第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-5] ポスター:発達障害 5

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-5-1] 当センターにおける両上肢集中治療(Hand-arm bimanual intensive therapy: HABIT)の報告

豊田 悦史1, 宍戸 快1, 松下 慎司1, 香取 さやか2 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション課, 2.北海道立子ども総合医療・療育センター リハビリテーション小児)

【はじめに】
小児CI(Constraint-induced)療法や両上肢集中治療(Hand-arm bimanual intensive therapy:以下HABIT)はエビデンスに基づいた活動ベースの治療介入であり,脳性麻痺児の上肢機能改善のために推奨されている.しかし,日本でのHABIT症例はまだ少ないのが実情である.今回は,当院におけるHABITの紹介と症例を報告する.症例は当センター倫理委員会の規定に従い保護者の同意を得ている.
【HABITの紹介】
「小児片麻痺のための上肢集中リハビリテーションプログラムマニュアル」を用いて実施している.
1期間・量:2~4週間の入院で行い,加えて可能な範囲でホームプログラムを継続してもらう.
リハビリテーション10時間以上,病棟・家でのトレーニング10時間以上,計20時間以上の両手活動を行う.生活時間,個別リハビリテーション時間を記録する.
2評価:入退院時には以下のものを使用.Children’s Hand-use Experience Questionnaire(以下CHEQ),COPM(カナダ作業遂行測定),Quality of Upper Extremity Skills Test(以下QUEST),ABILHAND-Kids(日本語版),Box and Block test(以下BBT).
3活動内容:児が両手を自然に使える活動で,導入時に親とセラピスト(可能であれば本人も)が話し合い,意欲的に行うことができて目標を達成できる日常生活動作やアクテビティを選択する.
4セラピー方法:(1)可能な限り自然な促通を促す(2)両手を使ったタスク練習を十分に繰り返す (3)段階付けを用いた難易度調整を行う(shaping技術)(4)声かけやモデリング,写真や動画によって,外部から与える様々な刺激による運動の促通(prompt技術)
【事例紹介】
1症例:11歳 女児 脳出血後遺症(左痙性片麻痺) 
2経過:言葉の遅れがあり特別支援学級に所属していた.9歳10カ月時意識障害で緊急搬送,脳CTで脳出血後遺症と診断されている.当センター本入院にて回復期のリハビリテーションを実施した.その後,長期休みに集中HABIT入院を実施している.
【評価】
GMFCSⅡ,MACSⅢ,上肢の他動的な可動域制限なし,WISC-ⅣではIQ60,独歩可能,左上肢の挙上は可能だが(屈曲180°可能),同時に手関節の掌屈もみられている.左手指の動きは手関節の掌背屈を利用しての指の動きはみられるが,手指の分離運動はわずかにみられている.両親は更衣動作で上衣の袖を入れる事をCOPMの目標にあげている.
【結果】
HABITの総合実施時間は合計27時間45分であった,QUESTでは左右の体重支持の値が増加し四つ這い保持が可能となった.CHEQ,ABILIHAND-Kidsでも臨床的に優位なスコア向上がみられた.また,更衣動作での袖入れが可能となりCOPMも向上した.
【考察】
リハビリテーション時や病棟,または家でのHABITを実施する事により,CHEQ,ABILHAND-Kids,COPMでは日常生活での上肢使用の変化を示す結果が見られた.またQUESTでは両上肢の支持も向上した.また,両上肢への意識が高まり,更衣動作の向上にもつながっていったと考える.今後は症例数を増やしていくことで,年齢や重症度による効果の違いや,手指分離にも焦点を当てた課題も検討していきたい.