第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-6] ポスター:発達障害 6

2024年11月9日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-6-1] 児童発達支援事業所における応用行動分析的アプローチの実践

保護者支援を含めた行動コンサルテーション

檀 拓真 (医療法人 泌尿器科皮膚科 上野医院 子ども未来サポートルームEL)

【序論】
 応用行動分析学(以下,ABA)とは,人間の行動を個人と環境との相互作用の枠組みを用いて分析し,実社会における適応行動の獲得や行動問題の解決を図る科学的な学問体系である(松見,2017).事業所において職員及び家族にコンサルテーションを行い,週10時間未満の範囲で実施した.本実践では,保護者を含めた週10時間未満の介入効果を検討することを目的とした.半年間における介入により20種類以上の行動が獲得された.本報告は,児童発達支援事業所におけるABA的介入の有効性を示唆する.
【症例紹介】
4歳3か月,男児.診断及び療育手帳なし.両親と弟の4人暮らし.近隣に祖父母あり.幼稚園の年少クラスに入園後,2か月で退所.第一印象は,急に走り出す.床に寝転がる.椅子に座ることが難しい.目が合いにくい.発語はほとんどみられず,時折大きな声を出す.家族の要望として,「椅子に座れるように」「コミュニケーションがとれるように」などが挙げられた.
【方法】
 当施設の利用は,週3~4回である.ABAは1回30分,動画で撮影したABA実践法を家族に提供し,自宅において1日30分程度実施.本実践では「つみきプログラム初級・中級編」(藤坂,2012)に基づいて,学習基礎スキル,ことばとコミュニケーションの順に獲得を目指した.不連続施行法(Discrete Trial Teaching;以下,DTT)により1施行毎に強化子を与えるという手順で実施した.また,問題行動を機能分析(ABC分析)することで,問題行動の強化子を探る作業を行った.コンサルテーションを行ったOTは,Together社の認定ABAセラピストを保有しており,ABAに関して一定の知識を有している.
【結果】
行動が獲得できたか否かの判定について,無作為に実施した施行の成功率が8割以上の場合に,獲得したと判断した.1カ月目で獲得したスキルは7項目であったが,最終的に獲得したスキルは28項目へと増加した.また,椅子に座って待つことや30分間の机上課題中も離席がほとんどみられず,語彙数も増えた.家族からは,「数か月前とは見違えるようになった」「やり取りが増えた」「座る時間が長くなった」との報告があった.
【考察】
 Lovaas法と呼ばれるDTTによる集中的介入は,週25~30時間程度のプロトコルが多い(Anderson & Romanczyk,1999).しかし,人的・環境や制度上の問題から現実的とは言えない.本実践では,家族を中心としたDTTは週3~4時間であり,事業所でのセラピーを合わせても週10時間に満たなかった.しかしながら,動作模倣や音声模倣などのスキルは獲得することができた.対象児がスキルを獲得できた背景として,家族へのコンサルテーションが挙げられる.動画を使用したことにより家族の理解度が増し,家庭でも同様に練習を行うことで継続的な支援を行えたためであると推測する.
【結論】
 週10時間未満の介入においても,保護者にコンサルテーションを行うことで行動が獲得され,実生活での般化がみられる可能性が示唆された.
【倫理的配慮・説明と同意】
 保護者に対して,説明を行い,同意書を得ている.