[PI-6-3] 発達障害を伴う盲幼児に対する食事介入への試み
【はじめに】発達障害を伴う盲幼児に対し,他職種と連携して食事動作・摂食への介入を試みたことで変化がみられたので報告する.なお,本発表において研究の趣旨を説明し,家族に書面で同意を得られている.
【対象】6歳女児.診断名:中隔視神経形成異常症,脳梁低形成,視覚障害(全盲),発達遅滞,発達障害.当センターに2歳9ヵ月で入所し,OT・PT・STを開始した.発育暦はつかまり立ち2歳4ヵ月,独歩3歳11ヵ月.入所当時は低緊張で臥位姿勢が多く,手掌面の過敏性から足底での探索が主で日常的に衣服を脱衣し毛布にくるまり過ごしていた.感情を自傷他害行為で表現することが多く,OTでは触られる事に慣れ,身支度を整えるところから介入した.全体的な発達の向上や活動範囲の広がりを認めたが,食事には強い拒否があった.
【方法】OT・PT・STが協力し,比較的拒否の少ないおやつ時間にスプーン操作と水分摂取の練習,摂食・嚥下練習を4歳8ヶ月頃から現在まで,週3〜4回程度実施した.
【経過及び結果】介入初期では,手の探索は手背が多く感覚遊びが主で,物を把持した目的的操作には拒否が強かった.食事はスプーンで全介助.固形物の咀嚼・食塊形成が困難で嘔吐反射が出現することがあり,全粥・ミンチ食.おやつはペースト状で,食べないことも多かった.水分もスプーン介助で摂取していた.OTは,環境調整を行い後方からスプーン把持と操作誘導をして,空間での上肢の動きを伝えた.STと摂食評価し,一口量のおやつをスプーンにすくって食器に置くと,症例自身でスプーンを把持し口に運ぶことが出来始めた.コップでの水分摂取は拒否が強いため,コップ内の水分量を指で確認しながら一口ずつ飲む練習を繰り返すことで可能となった.同時に全身運動を通して,感覚遊びや手掌面の脱感作,探索活動,ビー玉やコイン入れ等の目的的活動をPTと協力して行った.介入中期では,病棟スタッフにもスプーン操作を依頼.次にストロー練習も取り入れた所,ストローを咥えての口唇閉鎖が難しく,飲みこぼしが多かった.机上での上肢活動は課題を遂行する時間が増え,手掌での探索も以前より拒否は減ったが,うまく出来ないとすぐに怒って机を叩いたり,教具を机から払い落としたりしていた.介入後期では,おやつ以外の食事時でも,スプーンに食物をすくっておくと口まで運ぶことができ,飲む事は口唇閉鎖してストローで吸えるようになった.遊びや認知課題で失敗しても自傷他害行為が少なくなり,試行錯誤しながら取り組めるようになった.口まで食物を運ぶ動作は安定してきたので,咀嚼・嚥下能力の向上を目指しガーゼに包んだ固形物を咀嚼し,小さくなったお菓子を口腔内に留めて嚥下する練習を実施している.
【考察】今回,食事への拒否が強かった症例に,スプーンを把持して口に運ぶ動作やコップやストローで飲む等の食事動作能力に向上を認めた.OT・PT・STが目標を共有し,それぞれの専門性を活かして関わり,段階に応じた環境調整を行えた.また,遊びや運動の中での感覚入力により手が探索・認知を行える目としての役割を果たせるようになったのも大きな要因と考える.物を触る事や上肢操作誘導への拒否が軽減し,能動的な探索動作やこちらの教示に応じられ,課題で失敗しても感情をコントロールして離席せずに試行錯誤する姿勢がみられ,精神的な成長も得られた.
今後の課題として,食べることが症例にとって苦痛でなく楽しみへと変化するには,咀嚼・嚥下機能の向上が必要であると考え,今後も他職種と継続した支援を進めたい.
【対象】6歳女児.診断名:中隔視神経形成異常症,脳梁低形成,視覚障害(全盲),発達遅滞,発達障害.当センターに2歳9ヵ月で入所し,OT・PT・STを開始した.発育暦はつかまり立ち2歳4ヵ月,独歩3歳11ヵ月.入所当時は低緊張で臥位姿勢が多く,手掌面の過敏性から足底での探索が主で日常的に衣服を脱衣し毛布にくるまり過ごしていた.感情を自傷他害行為で表現することが多く,OTでは触られる事に慣れ,身支度を整えるところから介入した.全体的な発達の向上や活動範囲の広がりを認めたが,食事には強い拒否があった.
【方法】OT・PT・STが協力し,比較的拒否の少ないおやつ時間にスプーン操作と水分摂取の練習,摂食・嚥下練習を4歳8ヶ月頃から現在まで,週3〜4回程度実施した.
【経過及び結果】介入初期では,手の探索は手背が多く感覚遊びが主で,物を把持した目的的操作には拒否が強かった.食事はスプーンで全介助.固形物の咀嚼・食塊形成が困難で嘔吐反射が出現することがあり,全粥・ミンチ食.おやつはペースト状で,食べないことも多かった.水分もスプーン介助で摂取していた.OTは,環境調整を行い後方からスプーン把持と操作誘導をして,空間での上肢の動きを伝えた.STと摂食評価し,一口量のおやつをスプーンにすくって食器に置くと,症例自身でスプーンを把持し口に運ぶことが出来始めた.コップでの水分摂取は拒否が強いため,コップ内の水分量を指で確認しながら一口ずつ飲む練習を繰り返すことで可能となった.同時に全身運動を通して,感覚遊びや手掌面の脱感作,探索活動,ビー玉やコイン入れ等の目的的活動をPTと協力して行った.介入中期では,病棟スタッフにもスプーン操作を依頼.次にストロー練習も取り入れた所,ストローを咥えての口唇閉鎖が難しく,飲みこぼしが多かった.机上での上肢活動は課題を遂行する時間が増え,手掌での探索も以前より拒否は減ったが,うまく出来ないとすぐに怒って机を叩いたり,教具を机から払い落としたりしていた.介入後期では,おやつ以外の食事時でも,スプーンに食物をすくっておくと口まで運ぶことができ,飲む事は口唇閉鎖してストローで吸えるようになった.遊びや認知課題で失敗しても自傷他害行為が少なくなり,試行錯誤しながら取り組めるようになった.口まで食物を運ぶ動作は安定してきたので,咀嚼・嚥下能力の向上を目指しガーゼに包んだ固形物を咀嚼し,小さくなったお菓子を口腔内に留めて嚥下する練習を実施している.
【考察】今回,食事への拒否が強かった症例に,スプーンを把持して口に運ぶ動作やコップやストローで飲む等の食事動作能力に向上を認めた.OT・PT・STが目標を共有し,それぞれの専門性を活かして関わり,段階に応じた環境調整を行えた.また,遊びや運動の中での感覚入力により手が探索・認知を行える目としての役割を果たせるようになったのも大きな要因と考える.物を触る事や上肢操作誘導への拒否が軽減し,能動的な探索動作やこちらの教示に応じられ,課題で失敗しても感情をコントロールして離席せずに試行錯誤する姿勢がみられ,精神的な成長も得られた.
今後の課題として,食べることが症例にとって苦痛でなく楽しみへと変化するには,咀嚼・嚥下機能の向上が必要であると考え,今後も他職種と継続した支援を進めたい.