[PI-6-6] 自分で好きな物を選ぶ力を育てるために
長期入所児への買い物活動からみられた変化と課題
【序論】
当院は長期入所が多い医療型障害児入所施設であり,18歳で退所するまで,家庭生活を経験しない児童もいる.生活は基本的に決められたスケジュールがあり,食事は献立表通りに提供され,衣服は院内にある物もしくはご家族から提供されていることが多い.このように,生活全般において児童自身が自己決定する機会が少ないのが現状である.作業療法場面では課題には取り組むが,自由活動の中では自己決定ができない児童が一定数いる.そこで,作業療法の中で,買い物に行き,好きな物を選び購入するといった自己決定する機会を提供した.2023年度の活動で見られた児童の変化及び課題について報告する.
【目的】
生活環境により自己決定する機会が少ない児童に対して,「買い物」という活動を通し自己決定を促す目的のもとに集団プログラムを実施した.今回は児童の変化,そこから得られた課題と援助を考察する.
【対象と方法】
対象:将来グループホームや一人暮らしなどへ移行する可能性のある小学部1年生から高等部1年生までの肢体不自由児8名.言語でのコミュニケーションが可能.移動方法は歩行,車椅子自走,バギー移送と様々である.方法:月1回2~4名のグループで,近隣の店舗にて300円以内の食べ物を一つ購入する.基本的に買いたい物を児童が選び,選択が難しい児童には,商品の説明,選択肢を提示するなどの援助を行った.購入した物は帰院後すぐに食べる事とした.スタッフは児童の購入品,買い物途中の様子,児童の言動,課題と次回の援助方法などを記録用紙に記載した.発表は施設長の許可を得ている.
【結果】
行動面では,4月は店内を探索出来ない,商品を次々とカゴに入れていくなど,自己決定が難しい状況であった.2月にはどの児童も店内を探索出来るようになった.選択した物を探すことが可能な児童もいるが,店内を何周も探索するが自己決定出来ず援助が必要な児童もみられた.
商品選択では,4月は提示された選択肢の中から選ぶ,買う物を決めているが他の商品を見て回らないなどがあった.2月には過去の購入品と比較する,他児の購入品を選ぶ,院内で食べたことがある物を選ぶ様子が見られた.しかし,毎回同じものを買う,自己決定が出来ず選択肢の提示が必要な児童もみられた.
【考察】
自己決定には,情報,価値観,目標,感情などの要素が影響する.価値観は,幼児期に衣服や食べ物などを選択する経験や,学童期に趣味や興味を発見するなど発達の過程において徐々に形成される物である.しかし,長期入所する児童は,発達過程の中でこのような経験を行う機会は少なく,自己決定へと繋がる価値観の形成に影響を与えると考えられる.今回「食べ物を買い,すぐに食べる」という活動は選んだ結果が,好む,好まないに限らず味や内容量など分かりやすい感覚として経験され,自己決定するための価値観の形成へとつながったと考えられる.毎回同じ物を買う,選択肢が必要な児童は,前回食べた物を覚えていない,パッケージからどのような食べ物かイメージしづらい,新しい物へ挑戦することが難しい,他児の模倣を普段からあまり行わないなど自己決定に至るまでの情報不足がみられた.その為,その場で食べ比べできるような活動の提供が必要だと考えられる.また,食べることに興味が無い,疾患の影響により選択肢が狭い児童もおり,このような児童には食べ物以外の選択肢の提供が必要となる.児童は退所後日常生活や進路選択など様々な場面で自己決定を求められる.その際に自分で必要な事を考え,自己選択し,伝えられるよう,幼少期からの自己決定が行える活動の提供が必要だと考える.
当院は長期入所が多い医療型障害児入所施設であり,18歳で退所するまで,家庭生活を経験しない児童もいる.生活は基本的に決められたスケジュールがあり,食事は献立表通りに提供され,衣服は院内にある物もしくはご家族から提供されていることが多い.このように,生活全般において児童自身が自己決定する機会が少ないのが現状である.作業療法場面では課題には取り組むが,自由活動の中では自己決定ができない児童が一定数いる.そこで,作業療法の中で,買い物に行き,好きな物を選び購入するといった自己決定する機会を提供した.2023年度の活動で見られた児童の変化及び課題について報告する.
【目的】
生活環境により自己決定する機会が少ない児童に対して,「買い物」という活動を通し自己決定を促す目的のもとに集団プログラムを実施した.今回は児童の変化,そこから得られた課題と援助を考察する.
【対象と方法】
対象:将来グループホームや一人暮らしなどへ移行する可能性のある小学部1年生から高等部1年生までの肢体不自由児8名.言語でのコミュニケーションが可能.移動方法は歩行,車椅子自走,バギー移送と様々である.方法:月1回2~4名のグループで,近隣の店舗にて300円以内の食べ物を一つ購入する.基本的に買いたい物を児童が選び,選択が難しい児童には,商品の説明,選択肢を提示するなどの援助を行った.購入した物は帰院後すぐに食べる事とした.スタッフは児童の購入品,買い物途中の様子,児童の言動,課題と次回の援助方法などを記録用紙に記載した.発表は施設長の許可を得ている.
【結果】
行動面では,4月は店内を探索出来ない,商品を次々とカゴに入れていくなど,自己決定が難しい状況であった.2月にはどの児童も店内を探索出来るようになった.選択した物を探すことが可能な児童もいるが,店内を何周も探索するが自己決定出来ず援助が必要な児童もみられた.
商品選択では,4月は提示された選択肢の中から選ぶ,買う物を決めているが他の商品を見て回らないなどがあった.2月には過去の購入品と比較する,他児の購入品を選ぶ,院内で食べたことがある物を選ぶ様子が見られた.しかし,毎回同じものを買う,自己決定が出来ず選択肢の提示が必要な児童もみられた.
【考察】
自己決定には,情報,価値観,目標,感情などの要素が影響する.価値観は,幼児期に衣服や食べ物などを選択する経験や,学童期に趣味や興味を発見するなど発達の過程において徐々に形成される物である.しかし,長期入所する児童は,発達過程の中でこのような経験を行う機会は少なく,自己決定へと繋がる価値観の形成に影響を与えると考えられる.今回「食べ物を買い,すぐに食べる」という活動は選んだ結果が,好む,好まないに限らず味や内容量など分かりやすい感覚として経験され,自己決定するための価値観の形成へとつながったと考えられる.毎回同じ物を買う,選択肢が必要な児童は,前回食べた物を覚えていない,パッケージからどのような食べ物かイメージしづらい,新しい物へ挑戦することが難しい,他児の模倣を普段からあまり行わないなど自己決定に至るまでの情報不足がみられた.その為,その場で食べ比べできるような活動の提供が必要だと考えられる.また,食べることに興味が無い,疾患の影響により選択肢が狭い児童もおり,このような児童には食べ物以外の選択肢の提供が必要となる.児童は退所後日常生活や進路選択など様々な場面で自己決定を求められる.その際に自分で必要な事を考え,自己選択し,伝えられるよう,幼少期からの自己決定が行える活動の提供が必要だと考える.