[PI-7-6] 山形におけるセラピストから見た発達支援サービスの難しさ
【はじめに】児童発達支援事業は,日本の児童福祉法に基づくサービスの一つである.このサービスは,発達の遅れが気になる子どもに対して,早期に必要な指導支援を行い,将来的に子ども自身の負担を軽減する目的で,診断の有無に関わらず,幅広く利用が可能である.著者らは,専門性の高い理学療法,作業療法を用いた特定プログラムの児童発達支援事業を2019年6月から上山市に,2022年4月から山形市に展開している.その中で,保護者への支援が不十分なために,対象児への直接支援が良好であっても,課題解決に至らないケースが散見される.具体的には,保護者が子どもの障害特性を認めようとしないために,対象児がストレスフルな環境下に置かれる例や保護者自身が障害を抱えており,理解が困難な例などである.そこで,この報告は,療法士の視点で発達支援サービスの利用者に関わる課題を明らかにすることである.
【アプローチ】2019年6月から2023年10月末までに本事業を利用した215名の記録を調査した.調査項目は,サービスを利用する子どもに対するセラピストの認識と,サービスを利用する子どもの親に対するセラピストの認識であり,重複するものは個別分類した.
【結果】抽出されたサービスを利用した子どもたちの課題は,①「本人の特性に由来する対人関係上の課題があり,人間関係がうまくいっていない.」②「落ち着きがない,かんしゃくが強い.」③「本人が家族以外の外部の他者と関わることに快さを見出すことができていない.」④「自傷他害行為が顕著で,本人もしくは周りの人たちの安全を常に確保するのが難しい.」⑤「その他.」であった.セラピストが,自分たちのサービスを利用する子どもの親に対して抱く印象は,①「勤勉」②「否定的」③「無関心」の順であった.サービスを利用する子どもの親に対するセラピストの課題は,①「対象児の保護者が子どもの障害特性を認めようとしない.」②「保護者自身が障害を抱えており,理解が困難である.」③「生活保護世帯で兄弟姉妹が利用児の世話をしている.」④「高齢者介護によって,子どもの世話が行き届かない.」⑤「要対協の対象児で家庭環境への支援が不足している.」⑥「子どもが引きこもりで通所事業所に通うことができない.」であった.
【結論】セラピストの立場からは,これらの困難を克服し,将来の子どもへの負担を軽減することが必要である.そのため,筆者らは所属している事業所において新たなアプローチを試行中である.このアプローチの一つとして,一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnet 事業委員会が作成した「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)実践ガイドブック」を基にして,対象児の保護者を集めてペアトレ・保護者懇親会を開催している.このペアトレの目的は,保護者の養育におけるストレス軽減とスキルの向上,子どもの適応行動の獲得と問題解決力の向上であり,この取り組みの成果についても,この先に報告する.
【倫理手続】本研究は,株式会社リニエR倫理委員会(承認番号2087)での承認を得て後ろ向き事例集積研究を実施した.
【アプローチ】2019年6月から2023年10月末までに本事業を利用した215名の記録を調査した.調査項目は,サービスを利用する子どもに対するセラピストの認識と,サービスを利用する子どもの親に対するセラピストの認識であり,重複するものは個別分類した.
【結果】抽出されたサービスを利用した子どもたちの課題は,①「本人の特性に由来する対人関係上の課題があり,人間関係がうまくいっていない.」②「落ち着きがない,かんしゃくが強い.」③「本人が家族以外の外部の他者と関わることに快さを見出すことができていない.」④「自傷他害行為が顕著で,本人もしくは周りの人たちの安全を常に確保するのが難しい.」⑤「その他.」であった.セラピストが,自分たちのサービスを利用する子どもの親に対して抱く印象は,①「勤勉」②「否定的」③「無関心」の順であった.サービスを利用する子どもの親に対するセラピストの課題は,①「対象児の保護者が子どもの障害特性を認めようとしない.」②「保護者自身が障害を抱えており,理解が困難である.」③「生活保護世帯で兄弟姉妹が利用児の世話をしている.」④「高齢者介護によって,子どもの世話が行き届かない.」⑤「要対協の対象児で家庭環境への支援が不足している.」⑥「子どもが引きこもりで通所事業所に通うことができない.」であった.
【結論】セラピストの立場からは,これらの困難を克服し,将来の子どもへの負担を軽減することが必要である.そのため,筆者らは所属している事業所において新たなアプローチを試行中である.このアプローチの一つとして,一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnet 事業委員会が作成した「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)実践ガイドブック」を基にして,対象児の保護者を集めてペアトレ・保護者懇親会を開催している.このペアトレの目的は,保護者の養育におけるストレス軽減とスキルの向上,子どもの適応行動の獲得と問題解決力の向上であり,この取り組みの成果についても,この先に報告する.
【倫理手続】本研究は,株式会社リニエR倫理委員会(承認番号2087)での承認を得て後ろ向き事例集積研究を実施した.