第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-7] ポスター:発達障害 7

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-7-8] 個別の教育支援計画につながる保育所等訪問支援事業を目指す取り組み

小幡 一美1, 加藤 彩香1, 伊藤 玲子2, 安藤 喬1 (1.合同会社祐愛 りはくる, 2.中部大学生命健康科学部 作業療法学科)

【はじめに】平成24年に児童福祉法が一部改正され,「保育所等訪問支援事業」が創設された.今回,A市B小学校の特別支援コーディネーターと保育所等訪問支援事業について話し合う機会があった.この話し合いでは,担任が保育所等訪問支援事業をクラス運営に活かしきれていない現状を共有し,2つの課題が挙げられた.1点目は,担任は個別の事案に向き合いながらも学級担任として集団指導についてもバランスよく考えなければならず,個別の事案に意識が向きやすい時期と向きにくい時期があるということ,2点目は「個別の教育支援計画」に訪問支援員の助言をどう反映させるとよいのか分かりにくく,結果的に別々で考えてしまっていることであった.今回,この2点の課題についてB小学校 と連携し,解決策を検討しながら個別の教育支援計画につながる保育所等訪問支援事業を実施したため,報告する.なお,本報告についてB小学校の校長と対象児の保護者に承諾を受けている.
【当事業所のB小学校における保育所等訪問支援事業の概要】
当事業所は,平成27年5月よりB小学校に関わっている.令和5年4月1日時点で,当事業所の保育所等訪問支援事業を利用しているB小学校に通う児童は24名だった.当事業所の管理者兼児童発達支援管理責任者1名(作業療法士)と訪問支援員4名(作業療法士3名,言語聴覚士1名)が協力して担当している.訪問日は当事業所と学校の特別支援コーディネーターで協議し決定していた.訪問内容は,行動観察や必要に応じて直接介入を行い,学校への訪問記録(書面)による報告や話し合う場を設けている.話し合いは,後日行われる場合も多い.
【方法と結果】今回,B小学校と話し合いで確認された課題を解決する方法を検討した時,学校全体の流れや学校で使用している「個別の教育支援計画」の様式を変えることは現場レベルでの判断では困難であることが示された.そのため,保育所等訪問支援事業の訪問時期や訪問記録の様式を,担任が作成する「個別の教育支援計画」と照らし合わせやすいよう工夫することとなった.具体的には,訪問時期について,1学期は担任が「個別の教育支援計画」を完成させる7月中旬より前に2回,2学期は「個別の教育支援計画」について学校と保護者が話し合う11月の懇談前と懇談後,3学期は2月の懇談前と懇談後に訪問することとした(ただし,追加で訪問が必要な場合受給者証の範囲内で個々に協議し,訪問を追加する).これにより,訪問の結果を保護者と学校の話し合いにも活用しやすく,さらに,懇談内容を訪問支援員にも共有しやすくなった.次に訪問記録の様式について,訪問記録の項目を「個別の教育支援計画」で使用されている項目の用語と統一し,それに沿って訪問記録を作成することとした.これにより,担任が「個別の教育支援計画」作成に活用しやすくなったと考えている.
【考察】今回,B小学校と保育所等訪問支援事業と学校の連携について話し合いする場を設けることができ,その課題と解決策を検討することができた.今回の取り組みから考えられたこととして,福祉に携わる支援者が教育と連携するためには学校のルールや時間的な流れを支援者側がもっと知る必要があること,お互いの考えや常識を押しつけるだけでは子どもに有益な支援にはならないこと,教育と医療・福祉では言葉が違いそこからコミュニケーションのずれが起きる可能性があるということがある.今後も,今回の取り組みから考えられたことに配慮しながら関係機関と良好な関係を築き,地域における家庭と教育と福祉の連携に貢献していきたい.