[PI-8-2] 長崎県作業療法士会における学童保育への相談支援の取組みについて
KHcoderによる計量テキスト分析を用いて
【はじめに】長崎県内では,学童保育の指導員が,学童保育を利用する発達障害児もしくは発達障害の疑いのある児の対応に悩み,学童保育の現場に作業療法士の支援を求める声があがっている.長崎県作業療法士会では,令和元年度から令和3年度までは特設委員会子どもの地域生活支援委員会として,令和4年度からは事業局他団体対策部子どもの地域生活支援班として,長崎県学童保育連絡協議会と連携を取りながら,学童保育への相談支援を実施している.今回,長崎県作業療法士会における学童保育への相談支援の取組みについて,相談内容を振り返り,分析と今後の展望について報告する.なお,今回の報告について,長崎県作業療法士会理事会の承認を得ている.【方法】学童保育への相談支援が始まった令和元年度から令和5年度までに実施した9施設への全25件の相談記録のうち,「指導員の相談事」「作業療法士の見立て」「作業療法士からの助言内容」「指導員の反応」「所感」を後方視的に振り返った.「所感」の自由記述内容について,KHcoderによる計量テキスト分析を用いて想起ネットワークを作成し,語の結びつきから構造を検討した.【結果】9施設25件への相談対応のうち,4施設10件の相談はコロナ禍でありオンラインを使用して相談支援を実施した.相談対応した作業療法士は実13名延46名であった.指導員の相談事で多かったのは「癇癪など,自分の気持ちを言葉で伝えることが苦手な児への対応(8件)」「勝ち負けにこだわりがある児への対応(5件)」「集団に入れない児への対応(5件)」であった.作業療法士の見立てや助言内容では,感覚統合や応用行動分析を参考として,例えば注目を引くような児の行動の背景や思いを一緒に考える支援,行動の解釈や声の掛け方の参考例を提示する支援,構造化や視覚支援の例の提示のように即効性がある環境設定への支援が半数以上であった.オンラインでの相談では感覚統合や応用行動分析を参考とした支援を用いた助言を行い,加えて現場への訪問支援の際は,構造化や視覚支援のような環境設定への具体的な助言を行うことが多かった.指導員の反応としては「大変参考になった」「指導員がこれまで取り組んできたことが間違いでなくてよかった」という反応が多かった.所感の自由記載内容について,想起ネットワークからは「ゲームのルールや勝ち負け」「友達との関わり」「気持ちを伝えること」「切り替えの難しさ」などの構造が明らかになった.【考察】相談記録の振り返りやKH Coderを用いた想起ネットワークの構築をとおして,相談内容については,感情や行動のコントロールの苦手さ,対人面の苦手さに対し,指導員が苦慮している様子が伺えた.訪問支援を行う際は,児の行動を環境設定含めて実際に確認して行動を分析することができたり,環境設定について具体的な助言が行えるのはとても有効ではないかと感じた.今後は,相談支援が行える人材育成を含めた支援体制の充実が必要であり,例えば,訪問やオンラインでの相談へのオブザーバーを増やし,On the Job Trainingでのノウハウの継承を充実させることも大切になってくる.また,離島や半島を含めた遠隔地への対応充実も求められており,訪問での相談支援とオンラインでの相談支援を併用したり,研修会での講師や指導員含めた地域での事例検討会での助言者を作業療法士が対応したりするなど,地域ネットワーク作りの一助となるような関わりも必要である.引き続き,子ども等が安全に安心して身近な地域で過ごせるよう,地域の支援体制整備の充実を図って参りたい.