第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-8-4] リコーダー練習における指腹への触覚刺激の入力の有効性

小川 友美1, 大場 なつみ1, 今田 美奈子1, 菖蒲 絵美2, 今野 圭祐3 (1.合同会社リハサポート アーチ, 2.合同会社リハサポート アーチ天童, 3.合同会社リハサポート アーチ鈴川)

1はじめに
当法人は山形市,天童市にて,児童発達支援,放課後等デイサービス,保育所等訪問支援,居宅訪問型児童発達支援の4つのサービスを3事業所にて運営している.小学生を対象とした放課後等デイサービスの中で,作業療法士による個別練習を実施している.放課後等デイサービスでは学習支援を含めた支援をしている.3年生から音楽で行うリコーダーは,発達性協調運動障害のある児童や聴覚過敏のある自閉スペクトラム症の児童にとって,大きな課題となっている.当法人では,小学2年生からリコーダーの練習を開始しているが,その際に手指に触覚入力をすることで指穴の塞ぎが良くなる事例を経験している.今回,触覚刺激を入力することで,リコーダー操作が向上するか検証したため,報告する.なお,発表にあたり,紙面にて対象者の保護者より承諾を得ている.
2方法
 当法人の放課後等デイサービスを利用している小学2年生の児童9名に対して,週1回の個別練習の中で約10分程度,リコーダーの練習を実施することとした.手指に触覚過敏が無い児童を対象とした.最初の5回は触覚刺激を入力せずに実施し,6回目より触覚刺激を入力してからリコーダーの練習を実施した.触覚入力の方法として,スピログラフ定規の円の内側を児童自身が触るようにした.左右の指,合わせて10本に触覚刺激の入力を10秒ずつ実施した.毎回,音階練習と,可能な場合はシラソの音が中心の「メリーさんの羊」の曲を練習し,動画撮影をした.撮影後の動画を使用して,指穴の正しい指押さえ(以下,運指数とする)と正しい音が出ている回数(以下,清音数とする)とシラソを吹く時間を測定した.なお,複数の動画を撮影した場合は,平均を算出して使用した.統計処理は,対応のあるt検定を使用した.
3結果
 9回以上動画撮影ができた男児4名,女児1名の計5名について,分析した.いずれも触覚刺激入力前と比べ,触覚刺激入力後の方が,運指数,清音数,シラソを吹く時間が向上していた.対応のあるt検定の結果,触覚入力前5回と触覚入力後の5回の平均運指数は,音階練習がt=0.046,曲練習がt=0.047で,触覚入力後の方が,有意に正確に運指ができていた.平均清音数は,音階練習がt=0.01,曲練習がt=0.028で,有意に触覚入力後の方が良好であった.また,シラソを吹く平均時間はt=0.05で有意に触覚入力後の方が良好であった.なお,最初の2回を除き,触覚入力前3回(3~5回目),触覚入力後3回(6~8回目)についても比較し検証したところ,平均清音数は,音階練習がt=0.29,曲練習がt=0.0995,シラソを吹く平均時間はt=0.1511で,特に曲練習の平均清音数で有意な傾向がみられた.
4考察
 触覚刺激の入力により,正確な運指や清音を出すことや,運指の切り替え時間で向上がみられた.しかし,運動学習の最初はどの児童も難しく,慣れてくると上手になっていたことから,最初の2回を除いた場合の検証も実施したところ,5名のみの検証であったことから,有意差はみられなかったが有意な傾向はみられた.触覚刺激を入力することで順応が起こり,指穴の探索がしやすくなるためと考えられる.このことから,リコーダー練習を行う前に,指腹に触覚刺激を入れることが有効である可能性が高いと推察される.