[PI-8-5] 当事業所における日本版感覚プロファイルの縦断的研究
【はじめに】
当事業所では,利用児童のアセスメントツールの一つとして日本版感覚プロファイル(Sensory Profile:以下,SP)を初回利用時,以後一年毎に実施している.SPデータの結果から療育前と療育後を比較検討し,当事業所の治療効果について報告する.保護者には,SPデータの効果検証のための利用について口頭および文書にて説明し同意を得た.
【対象と方法】
対象は5~10歳の男児48名,女児7名の計55名で,縦断的データを用いた研究のためSPを3~5回実施した児童とした.疾患数は自閉スペクトラム症(以下,ASD)12名,注意欠如・多動症1名,発達性協調運動症7名,知的発達症1名,未診断20名,複数診断14名であった.SPデータの調査方法は,初回を療育前に実施し,その後は一年毎にデータを収集した.分析方法は,児童毎に象限・セクション・因子スコアをグラフ化し,縦断的な変化パターンを検出した.
【結果】
実施回数毎の人数は,3回:17名,4回:17名,5回:21名であった.本研究では,まず4象限のうち2象限以上該当する項目を検出パターンの定義として抽出し,その上でセクション・因子スコアの分析を行った.検出パターンとして「右下がり(療育前はスコアが高いが,療育後にスコアが低くなる)」・「逆U字(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後に更にスコアが高くなるが,最終的にはスコアが低くなる)」・「右上がり(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後に更にスコアが高くなる)」・「U字(療育前はスコアが高く,療育後に一度スコアは低くなるが,再びスコアが高くなる)・「凸凹(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後にスコアの起伏がみられる)」・横這い(療育前から療育後までスコアの変化なし)」の6パターンが得られた.尚,スコアが平均範囲の児や,ばらつきが大きな横這い及び凸凹パターンのデータは除外した.結果,パターン毎の人数は55名中,右下がり16名(29%),逆U字5名(9%),右上がり4名(7%),U字3名(5%),除外27名(49%)であった.次に,パターン毎にセクション・因子スコアの半数以上が該当した項目を分析した結果,右下がりは「複合感覚」・「耐久性・筋緊張に関する感覚処理」・「反応の閾を示す項目」・「感覚探求(因子)」・「耐久の低さ・筋緊張」,逆U字は「口腔感覚」・「身体の位置や動きに関する調整機能」,右上がりは「前庭覚」・「寡動」,U字は「視覚」・「複合感覚」・「感覚処理による行動のあらわれ」であった.パターン毎の疾患別特徴としては,パターン毎における母数の関係で右下がりのみ検出し,それぞれ「複合感覚」はASD児,「耐久性・筋緊張に関する感覚処理」は未診断児とASD児,「反応の閾を示す項目」は未診断児とASD児と複数診断児,「感覚探求(因子)」はASD児と未診断児,「耐久の低さ・筋緊張」は未診断児とASD児が多い傾向であった.
【考察】
本研究における右下がりや逆U字パターンを示した児は治療効果が高いと考えられ,全体の38%であった.その中ではASD児の割合が高い傾向であった.一方で治療効果が低い児は12%であった.樫川ら(2016)は,療育を受けたことがあるASD児は,幼児期に見られやすい触覚,固有受容覚刺激の探求に関する行動が,学齢期には見られにくくなると述べているが,当事業所の感覚統合理論を基盤とした治療的介入では上記に加え,ASD児の注意機能や筋緊張,持久力に有効であることが示唆された.また,本研究では除外児童数が多かったことから,感覚処理機能の特性は児童の置かれている環境や保護者の主観の変化など,SP実施時の状況によってスコアが大きく変化しやすいことが示唆された.
当事業所では,利用児童のアセスメントツールの一つとして日本版感覚プロファイル(Sensory Profile:以下,SP)を初回利用時,以後一年毎に実施している.SPデータの結果から療育前と療育後を比較検討し,当事業所の治療効果について報告する.保護者には,SPデータの効果検証のための利用について口頭および文書にて説明し同意を得た.
【対象と方法】
対象は5~10歳の男児48名,女児7名の計55名で,縦断的データを用いた研究のためSPを3~5回実施した児童とした.疾患数は自閉スペクトラム症(以下,ASD)12名,注意欠如・多動症1名,発達性協調運動症7名,知的発達症1名,未診断20名,複数診断14名であった.SPデータの調査方法は,初回を療育前に実施し,その後は一年毎にデータを収集した.分析方法は,児童毎に象限・セクション・因子スコアをグラフ化し,縦断的な変化パターンを検出した.
【結果】
実施回数毎の人数は,3回:17名,4回:17名,5回:21名であった.本研究では,まず4象限のうち2象限以上該当する項目を検出パターンの定義として抽出し,その上でセクション・因子スコアの分析を行った.検出パターンとして「右下がり(療育前はスコアが高いが,療育後にスコアが低くなる)」・「逆U字(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後に更にスコアが高くなるが,最終的にはスコアが低くなる)」・「右上がり(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後に更にスコアが高くなる)」・「U字(療育前はスコアが高く,療育後に一度スコアは低くなるが,再びスコアが高くなる)・「凸凹(療育前はスコアが平均的もしくは高く,療育後にスコアの起伏がみられる)」・横這い(療育前から療育後までスコアの変化なし)」の6パターンが得られた.尚,スコアが平均範囲の児や,ばらつきが大きな横這い及び凸凹パターンのデータは除外した.結果,パターン毎の人数は55名中,右下がり16名(29%),逆U字5名(9%),右上がり4名(7%),U字3名(5%),除外27名(49%)であった.次に,パターン毎にセクション・因子スコアの半数以上が該当した項目を分析した結果,右下がりは「複合感覚」・「耐久性・筋緊張に関する感覚処理」・「反応の閾を示す項目」・「感覚探求(因子)」・「耐久の低さ・筋緊張」,逆U字は「口腔感覚」・「身体の位置や動きに関する調整機能」,右上がりは「前庭覚」・「寡動」,U字は「視覚」・「複合感覚」・「感覚処理による行動のあらわれ」であった.パターン毎の疾患別特徴としては,パターン毎における母数の関係で右下がりのみ検出し,それぞれ「複合感覚」はASD児,「耐久性・筋緊張に関する感覚処理」は未診断児とASD児,「反応の閾を示す項目」は未診断児とASD児と複数診断児,「感覚探求(因子)」はASD児と未診断児,「耐久の低さ・筋緊張」は未診断児とASD児が多い傾向であった.
【考察】
本研究における右下がりや逆U字パターンを示した児は治療効果が高いと考えられ,全体の38%であった.その中ではASD児の割合が高い傾向であった.一方で治療効果が低い児は12%であった.樫川ら(2016)は,療育を受けたことがあるASD児は,幼児期に見られやすい触覚,固有受容覚刺激の探求に関する行動が,学齢期には見られにくくなると述べているが,当事業所の感覚統合理論を基盤とした治療的介入では上記に加え,ASD児の注意機能や筋緊張,持久力に有効であることが示唆された.また,本研究では除外児童数が多かったことから,感覚処理機能の特性は児童の置かれている環境や保護者の主観の変化など,SP実施時の状況によってスコアが大きく変化しやすいことが示唆された.