[PI-8-7] 動機付けに着目した49,XXXXY症候群の一例
【はじめに】
核型 49,XXXXY(以下XXXXY) は染色体異常症の最も重篤な形態の 1 つであり,臨床的には発達遅延と重度の言語障害が特徴とされる(MonicaBら).しかし,XXXXYに対する作業療法の報告は少なく,臨床的にあまり検討されていない.症例は,前述の疾患特性に加え受傷部の疼痛を訴え,環境変化による不安や恐怖心からリハビリやADLに対しての意欲が著明に低下していた.作業療法では,介入を実施するうえで動機付けが重要であるとされる.今回,動機付けに着目したためここに報告する.なお,今回の症例報告を行うにあたり保護者の同意を得た.
【症例紹介】
40歳代男性,XXXXYを有し発達遅滞を伴い発達年齢は4歳程度.グループホームへ入所しセルフケアは自立.週末は自宅で両親と過ごしていた.受傷前は1週間,1日単位で決まったスケジュールで生活していた.現病歴は,X年Y月Z日の散歩中に転倒し救急搬送.左鎖骨遠位端骨折,右脛骨外側プラトー骨折の診断で入院.Z+2日に観血的整復術施行.Z+9日に当院へ転院.作業療法はZ+10日に開始した.
【OT評価】
言語機能面は,首振りでのYes/Noや決まった単語での表出が多く,理解はその場で完結する短文レベル.ADLは拒否や荷重制限から全介助.評価は症例の理解が得られないことから,家族からの情報収集や観察評価を中心に実施.家族より,興味関心の強いものは恐竜.こだわりが強く環境変化に慣れるまで時間を要す等の情報が得られた.ADL場面では,周囲の音に敏感で人の多い環境では表情が曇り,食事の際にお盆ごとひっくり返す,入浴は大声で物を投げて拒否する様子が観察された.リハビリでは,疼痛から可動域練習や離床には拒否が見られた.自室では何もせずベッド上で過ごし,時折大声を上げるなどの防衛機制が見受けられた.
【経過】
介入初期は病棟の生活環境やスタッフに慣れることを目標とし,多職種で連携し環境整備を行った.食事や入浴は個別対応とし,スタッフの見守りや介助のもと行った.リハビリは時間やセラピストを固定し,セラピスト間で反応の良い活動や声かけの仕方,こだわりを共有した.OT介入は,関心の高い恐竜を作業活動に取り入れ,塗り絵やパズル等の作業理解が容易であるものを自室で行うことから開始した.徐々に離床を促す目的でリハビリ室に行くと恐竜のプリントがもらえるといった動機付けを行った.介入中期より移乗練習や立位練習,ADL練習を開始したが,下肢荷重時に疼痛を訴えしばしば拒否が見られた.症例の意欲は,母親や親しいスタッフに称賛を得ることでも向上する様子が観察されたため,消極的な介入の際は多職種で連携し動機付けを行った.介入後期では,ADL場面での介入を増やし,ADLへの主体的な参加を促した.
【結果】
リハビリ時間を把握し準備をして待つようになり,自室では塗り絵をして過ごす時間が増え臥床時間が減少した.声出しは継続して見られたが,内容は「塗り絵がしたい」「リハビリはまだ?」等の自ら活動を求める内容となった.ADLについても運動FIM13点から43点へと改善し,グループホームへの退院が可能となった.
【考察】
今回症例にとって関心の高い恐竜を介入の軸とし,多職種で連携して動機付けを行ったことにより離床意欲の向上やADLの改善をもたらした.症例のように目標共有や意欲を引き出すことが難しい対象者において,動機付けの視点で介入を展開していくことは,自発性を高め活動性を向上させる上でも効果的であると考える.
核型 49,XXXXY(以下XXXXY) は染色体異常症の最も重篤な形態の 1 つであり,臨床的には発達遅延と重度の言語障害が特徴とされる(MonicaBら).しかし,XXXXYに対する作業療法の報告は少なく,臨床的にあまり検討されていない.症例は,前述の疾患特性に加え受傷部の疼痛を訴え,環境変化による不安や恐怖心からリハビリやADLに対しての意欲が著明に低下していた.作業療法では,介入を実施するうえで動機付けが重要であるとされる.今回,動機付けに着目したためここに報告する.なお,今回の症例報告を行うにあたり保護者の同意を得た.
【症例紹介】
40歳代男性,XXXXYを有し発達遅滞を伴い発達年齢は4歳程度.グループホームへ入所しセルフケアは自立.週末は自宅で両親と過ごしていた.受傷前は1週間,1日単位で決まったスケジュールで生活していた.現病歴は,X年Y月Z日の散歩中に転倒し救急搬送.左鎖骨遠位端骨折,右脛骨外側プラトー骨折の診断で入院.Z+2日に観血的整復術施行.Z+9日に当院へ転院.作業療法はZ+10日に開始した.
【OT評価】
言語機能面は,首振りでのYes/Noや決まった単語での表出が多く,理解はその場で完結する短文レベル.ADLは拒否や荷重制限から全介助.評価は症例の理解が得られないことから,家族からの情報収集や観察評価を中心に実施.家族より,興味関心の強いものは恐竜.こだわりが強く環境変化に慣れるまで時間を要す等の情報が得られた.ADL場面では,周囲の音に敏感で人の多い環境では表情が曇り,食事の際にお盆ごとひっくり返す,入浴は大声で物を投げて拒否する様子が観察された.リハビリでは,疼痛から可動域練習や離床には拒否が見られた.自室では何もせずベッド上で過ごし,時折大声を上げるなどの防衛機制が見受けられた.
【経過】
介入初期は病棟の生活環境やスタッフに慣れることを目標とし,多職種で連携し環境整備を行った.食事や入浴は個別対応とし,スタッフの見守りや介助のもと行った.リハビリは時間やセラピストを固定し,セラピスト間で反応の良い活動や声かけの仕方,こだわりを共有した.OT介入は,関心の高い恐竜を作業活動に取り入れ,塗り絵やパズル等の作業理解が容易であるものを自室で行うことから開始した.徐々に離床を促す目的でリハビリ室に行くと恐竜のプリントがもらえるといった動機付けを行った.介入中期より移乗練習や立位練習,ADL練習を開始したが,下肢荷重時に疼痛を訴えしばしば拒否が見られた.症例の意欲は,母親や親しいスタッフに称賛を得ることでも向上する様子が観察されたため,消極的な介入の際は多職種で連携し動機付けを行った.介入後期では,ADL場面での介入を増やし,ADLへの主体的な参加を促した.
【結果】
リハビリ時間を把握し準備をして待つようになり,自室では塗り絵をして過ごす時間が増え臥床時間が減少した.声出しは継続して見られたが,内容は「塗り絵がしたい」「リハビリはまだ?」等の自ら活動を求める内容となった.ADLについても運動FIM13点から43点へと改善し,グループホームへの退院が可能となった.
【考察】
今回症例にとって関心の高い恐竜を介入の軸とし,多職種で連携して動機付けを行ったことにより離床意欲の向上やADLの改善をもたらした.症例のように目標共有や意欲を引き出すことが難しい対象者において,動機付けの視点で介入を展開していくことは,自発性を高め活動性を向上させる上でも効果的であると考える.