[PI-9-3] 卒業を目前にした17歳への放課後等デイサービスでの取り組み
COPMを用いて引き出せた気持ち
【はじめに】
当放課後等デイサービス(以下,放デイ)では重症心身障害児を中心としたサービスを提供している.特別支援学校高等部肢体不自由部門に所属する男子へのCOPMを用いた取り組みを報告する.
【事例紹介】
Aくん,17歳.当放デイを週1回利用.診断名は大脳皮質形成異常,てんかん.頻回なてんかん発作のために常に見守りや介助が必要.四肢に運動障害あり,SLB装着,車椅子使用.右側の麻痺が強く,右手の不使用あるが,興味の強い活動では補助的な使用がある.発語は不明瞭.逆唱や計算に困難がある.保護者から卒後の生活を見据え「援助要求が出せるように」要望あり.学校は「右手を使って欲しい,使おうとしない」,放デイでは右手を使うよう声かけするが「苦手な事をはぐらかす」と認識していた.児童発達支援管理責任者・保育士・看護師・OTらで,個別支援計画目標を「本人の好きな事を通して自分で計画し実行する経験を積む」「麻痺がある側の身体を使う事ができる」とした.症例から「事業所の小さい子に歌や読み聞かせをしたい」と希望があり,保育士的な体験を月1回行い,自分自身のこと及び保育という仕事の現実検討ができるように関わってきた.一方で本人の本当にやりたいことは何なのか,症例自身も職員も把握が難しかった.
【作業療法介入と経過】
COPMを使って評価し目標と取り組みを話し合った.作業遂行の問題として,①小さい子とのやりとり,②手話の練習をして両手が使えるようになりたい,③初めての人と間接的にやりとりする,と対人苦手意識や両手の使用に課題が挙がった.目標を「両手がもっと使えるようになる為に放デイ職員に手話を教える」とし,3ヵ月で月2回,職員向けに簡単な手話を教えることにした.主体的に取り組めるよう症例と支援者の役割・介入内容を決定.自宅で練習と動画を撮影し支援記録共有アプリで発信する事を決めた.内容は生活行為向上プラン演習シートを応用してシート化し,症例と保護者,職員で共有した.2ヵ月経過し,アプリでは受け手側の反応を感じにくいと意欲の低下があり,集団活動で行う方法に変更し継続.同時期,喉の不調を機に1ヵ月以上話さない状況が続いた.
【結果】
3ヵ月後,再評価を実施.声が出ない為タブレットを使用した.①の遂行度は低下,手話が代替手段となり②の遂行度は上昇.満足度は全て低下だが「いいと思って用意したことが相手にはまらなかった」「うまくいかなかったから次はどうしたらいいかな」等気付きが引き出せた.職員からは「本人の思いを知れた」「何を取り組むかが分かりやすい」「他の場面でも右手の参加が増えた」「右手の使用を促す声かけが減った」等の意見が聞かれた.
【考察】
発作や運動障害があり受身的な症例に対して,COPMを用いる事で,症例と一緒に問題点を整理し,目標を具体化する事が出来た.やりとりの苦手な症例から引き出される「好きな事」を介した支援は,多職種で支援する放デイでは職員個々の解釈がされやすい.今回の介入は,到達可能で具体的な目標設定や支援内容を客観的に把握する事が出来る情報共有手段となり,職員の捉え方や関わり方の見直しをする機会となった.また,症例が自分自身にとって何が大切か等考える思考プロセスが提供できた.OT自身も放デイでの役割として直接介入以外にも,ニーズの把握や課題の整理に対してその専門性を活かせるという気づきとなった.症例が話せなくなった事は心理面のナイーブさへの配慮や心理的支援の重要性を改めて感じる機会となった.今後は,作業遂行において感覚運動機能を始めとするその他の評価を併せて,本人らしさの理解につながる支援を行なっていきたい.
当放課後等デイサービス(以下,放デイ)では重症心身障害児を中心としたサービスを提供している.特別支援学校高等部肢体不自由部門に所属する男子へのCOPMを用いた取り組みを報告する.
【事例紹介】
Aくん,17歳.当放デイを週1回利用.診断名は大脳皮質形成異常,てんかん.頻回なてんかん発作のために常に見守りや介助が必要.四肢に運動障害あり,SLB装着,車椅子使用.右側の麻痺が強く,右手の不使用あるが,興味の強い活動では補助的な使用がある.発語は不明瞭.逆唱や計算に困難がある.保護者から卒後の生活を見据え「援助要求が出せるように」要望あり.学校は「右手を使って欲しい,使おうとしない」,放デイでは右手を使うよう声かけするが「苦手な事をはぐらかす」と認識していた.児童発達支援管理責任者・保育士・看護師・OTらで,個別支援計画目標を「本人の好きな事を通して自分で計画し実行する経験を積む」「麻痺がある側の身体を使う事ができる」とした.症例から「事業所の小さい子に歌や読み聞かせをしたい」と希望があり,保育士的な体験を月1回行い,自分自身のこと及び保育という仕事の現実検討ができるように関わってきた.一方で本人の本当にやりたいことは何なのか,症例自身も職員も把握が難しかった.
【作業療法介入と経過】
COPMを使って評価し目標と取り組みを話し合った.作業遂行の問題として,①小さい子とのやりとり,②手話の練習をして両手が使えるようになりたい,③初めての人と間接的にやりとりする,と対人苦手意識や両手の使用に課題が挙がった.目標を「両手がもっと使えるようになる為に放デイ職員に手話を教える」とし,3ヵ月で月2回,職員向けに簡単な手話を教えることにした.主体的に取り組めるよう症例と支援者の役割・介入内容を決定.自宅で練習と動画を撮影し支援記録共有アプリで発信する事を決めた.内容は生活行為向上プラン演習シートを応用してシート化し,症例と保護者,職員で共有した.2ヵ月経過し,アプリでは受け手側の反応を感じにくいと意欲の低下があり,集団活動で行う方法に変更し継続.同時期,喉の不調を機に1ヵ月以上話さない状況が続いた.
【結果】
3ヵ月後,再評価を実施.声が出ない為タブレットを使用した.①の遂行度は低下,手話が代替手段となり②の遂行度は上昇.満足度は全て低下だが「いいと思って用意したことが相手にはまらなかった」「うまくいかなかったから次はどうしたらいいかな」等気付きが引き出せた.職員からは「本人の思いを知れた」「何を取り組むかが分かりやすい」「他の場面でも右手の参加が増えた」「右手の使用を促す声かけが減った」等の意見が聞かれた.
【考察】
発作や運動障害があり受身的な症例に対して,COPMを用いる事で,症例と一緒に問題点を整理し,目標を具体化する事が出来た.やりとりの苦手な症例から引き出される「好きな事」を介した支援は,多職種で支援する放デイでは職員個々の解釈がされやすい.今回の介入は,到達可能で具体的な目標設定や支援内容を客観的に把握する事が出来る情報共有手段となり,職員の捉え方や関わり方の見直しをする機会となった.また,症例が自分自身にとって何が大切か等考える思考プロセスが提供できた.OT自身も放デイでの役割として直接介入以外にも,ニーズの把握や課題の整理に対してその専門性を活かせるという気づきとなった.症例が話せなくなった事は心理面のナイーブさへの配慮や心理的支援の重要性を改めて感じる機会となった.今後は,作業遂行において感覚運動機能を始めとするその他の評価を併せて,本人らしさの理解につながる支援を行なっていきたい.