[PI-9-7] 役割を活用した子どもに対する作業療法
スキルの定着や関係性の構築のきっかけとして
【序 論】役割は社会的なつながりや自己認識の延長上にあり,行為のやり方と内容に影響を及ぼすと言われている.子どもにおいては,発達の過程で様々な役割を取り入れて能力の成長に繋げているとされる(Taylor,2019).今回放課後等デイサービス(以下,放デイ)を利用している子ども2名に対して,異なる目的で役割を活用した作業療法を実施した.その目的は,役割行動の変化から作業遂行を改善することと関係性を構築することである.
【目 的】子ども2名に対する役割を用いた実践から,スキルの定着や関係性を構築するきっかけとしての役割の活用方法と意義を検討することを目的とする.
【方 法】
対象:小学校2年生の男子(A君)と小学校5年生の男子(B君)である.A君は,手先を使う動作に苦手意識があり上着のチャック閉めや車のシートベルトを着けることが上手くできずに悩んでいた.上手くできないとパニックになる様子がみられ,母親と放デイスタッフの悩みでもあった.B君は,他者との関係性を築くことが苦手で暴言や暴力がみられることについて放デイスタッフが悩んでいた.孤立が進み,友達との関わりもほとんどみられなくなっていた.なお,本報告に際して,保護者に対し書面を用いて同意を得た.
実践の概要:A君には,個別作業療法の中で習得したスキルをOTRに教えるという役割を通して認知戦略(Toglia,2012)を言葉にして行動を導くことを行った.具体的にはスキルの振り返り(言語化)や再現をすることでスキルの定着や般化に繋げていった.評価は,Goal Attainment Scale(GAS)を用いた.B君には,OTRにサッカーを教えるという役割を通して関係性を築くことを行った.まずはOTRとの関係性を構築し,他の友達を交えた遊びやポジティブ行動支援(PBS)の枠組み(Anderson,2000)を取り入れたアプローチへと展開した.なお評価は,GAS,Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を用いた.
【結 果】A君は,転がるボールを両手それぞれに持った棒で挟んでキャッチするという遊びを進める中で,キャッチが上手くできるようになった段階でOTRがあえて失敗する様子を見せながら「今どうやったか教えて?」と尋ねた.その結果,A君は「手と手を合わせると上手くいくよ!」と教えてくれた.A君は,「手と手を合わせて」とつぶやくことで上着のチャック閉めや車のシートベルトを着けることの習得に繋がった.
B君が好きであったサッカーを一緒に行う中で,OTRは「その蹴り方かっこいい!教えてください!」とお願いした.B君は丁寧にOTRに対して蹴り方を教えてくれ,OTRが上手くなるにつれ「その感じ!いいじゃん!」「試合もやろうか!」とポジティブな言動が増えていった.その後,他の友達も交えて遊べるようになった段階でPBSの枠組みを取り入れ,放デイのスタッフと協働してB君が好きなことに集中できていることや相手への配慮などのポジティブな行動に焦点を当てた関わりを行った.その結果,約2カ月後には暴言・暴力がほとんどみられなくなった.なお,評価結果の詳細も含めて発表を行う.
【考 察】A君とB君共に「大人から教えられる」という役割から「大人に教える」という役割への転換を通して,行為のやり方や内容に変化がみられた.その結果,A君は作業遂行の改善,B君は関係性の構築に繋がった.子どもの役割の変化はOTRによる自己の治療的利用をきっかけとした子どもの内的なリソースと状況(環境)との相互作用の結果であり,このことは作業遂行の改善や関係性の構築の糸口となり得ると考える.
【目 的】子ども2名に対する役割を用いた実践から,スキルの定着や関係性を構築するきっかけとしての役割の活用方法と意義を検討することを目的とする.
【方 法】
対象:小学校2年生の男子(A君)と小学校5年生の男子(B君)である.A君は,手先を使う動作に苦手意識があり上着のチャック閉めや車のシートベルトを着けることが上手くできずに悩んでいた.上手くできないとパニックになる様子がみられ,母親と放デイスタッフの悩みでもあった.B君は,他者との関係性を築くことが苦手で暴言や暴力がみられることについて放デイスタッフが悩んでいた.孤立が進み,友達との関わりもほとんどみられなくなっていた.なお,本報告に際して,保護者に対し書面を用いて同意を得た.
実践の概要:A君には,個別作業療法の中で習得したスキルをOTRに教えるという役割を通して認知戦略(Toglia,2012)を言葉にして行動を導くことを行った.具体的にはスキルの振り返り(言語化)や再現をすることでスキルの定着や般化に繋げていった.評価は,Goal Attainment Scale(GAS)を用いた.B君には,OTRにサッカーを教えるという役割を通して関係性を築くことを行った.まずはOTRとの関係性を構築し,他の友達を交えた遊びやポジティブ行動支援(PBS)の枠組み(Anderson,2000)を取り入れたアプローチへと展開した.なお評価は,GAS,Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を用いた.
【結 果】A君は,転がるボールを両手それぞれに持った棒で挟んでキャッチするという遊びを進める中で,キャッチが上手くできるようになった段階でOTRがあえて失敗する様子を見せながら「今どうやったか教えて?」と尋ねた.その結果,A君は「手と手を合わせると上手くいくよ!」と教えてくれた.A君は,「手と手を合わせて」とつぶやくことで上着のチャック閉めや車のシートベルトを着けることの習得に繋がった.
B君が好きであったサッカーを一緒に行う中で,OTRは「その蹴り方かっこいい!教えてください!」とお願いした.B君は丁寧にOTRに対して蹴り方を教えてくれ,OTRが上手くなるにつれ「その感じ!いいじゃん!」「試合もやろうか!」とポジティブな言動が増えていった.その後,他の友達も交えて遊べるようになった段階でPBSの枠組みを取り入れ,放デイのスタッフと協働してB君が好きなことに集中できていることや相手への配慮などのポジティブな行動に焦点を当てた関わりを行った.その結果,約2カ月後には暴言・暴力がほとんどみられなくなった.なお,評価結果の詳細も含めて発表を行う.
【考 察】A君とB君共に「大人から教えられる」という役割から「大人に教える」という役割への転換を通して,行為のやり方や内容に変化がみられた.その結果,A君は作業遂行の改善,B君は関係性の構築に繋がった.子どもの役割の変化はOTRによる自己の治療的利用をきっかけとした子どもの内的なリソースと状況(環境)との相互作用の結果であり,このことは作業遂行の改善や関係性の構築の糸口となり得ると考える.