[PJ-1-1] 作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いたリハビリ拒否への取り組み
【はじめに】リハビリ拒否する患者の理由やその対処についての報告は散見されるが,関わり方や職員の対応力に依存する報告が多くツールを用いた報告は少ない.今回,リハビリ拒否が続いた患者へ作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を継続して導入した.結果,意味や価値を感じる作業に支援することができ,参加意欲・行動変容が見られた.拒否に対して,治療選択の一助として可能性を示したため報告する.尚,報告に際し,対象者には書面で説明して同意を得た.
【事例紹介】80歳代男性.同敷地内に住む息子家族や友人の協力を得ながら,独居で生活をされていた.現病歴:体動困難になり,2日後に息子の発見により緊急搬送し,T6〜L4レベルで脊髄梗塞と診断.96病日より回復期リハビリテーションを開始した.
【入院時評価】Frankel:C1,ASIA:運動機能(上肢50点/下肢24点),感覚機能(触覚112点/痛覚112点),FIM:47点(運動20点/認知27点),MMSE:25点,本人hope:死にたい,ADOC:実施困難.
【介入方法と経過】
第一期:行動変容の準備期(96病日〜126病日)
ADOC実施.「死にたい」「意味がない」という発言が多く,行動戦略や目標の過程への助言に対しては,無視や暴言の反応であり実施困難.リハビリやADLへの促しは拒否傾向ではあるが,傾聴と共感することで自発話あるため,行動観察を続けた.徐々に「起きる時に足を動かすのが疲れる」「オムツ交換の時に横向くのが疲れる」と具体的な発言が出現した.126病日:FIM:47点(運動20点/認知27点).ADOC実施.「死にたい」に対して,「なぜ」の部分の共有を図ると「楽になりたい」と訴えた.合意目標として「ベッド上で楽に生活したい」を共有した.
第二期:行動変容の実行期(127〜170病日)
リモコン操作や私物を取りやすいようにベッド周囲の環境調整,自助具の導入,車椅子調整を行った.活動達成毎にADOCを実施し,ベッド〜車椅子間の動作戦略,車椅子主体でのADL戦略,院内範囲での参加拡大を図った.合意目標として「院内にある売店へ行き,買い物がしたい」を共有した.「楽で自由にできること」を前提とした動作戦略にて支援を行った.機能訓練や歩行は拒否傾向であったが,ADOC内容への拒否は見られなかった.170病日:FIM:96点(運動64点/認知32点).ADOC:起き上がり・立ち上がり(4/5),移乗(4/5),屋内の移動(3/5),排泄(3/5),買い物(3/5).入浴以外のADL含め,院内車椅子自立となった.
第三期:最期の希望に向けた実行期(171病日〜238病日)
ADOC実施.家族との交流,外食,買い物,屋内の移動,余暇時間の項目を挙げられた.「孫の結婚式に行きたい」を合意目標とし,「初孫で特に可愛がっていたんだ」「最期の希望だよ」と自発的な参加意欲もみられた.車の乗降訓練や家族との交流を背景に外食や屋外での移動といった目標へと移行した.車椅子での外出や外食を想定した家族指導を行い,239病日に施設退院となった.
【結果】Frankel:D1,ASIA:運動機能(上肢50点/下肢32点),感覚機能(触覚112点/痛覚112点),FIM:98点(運動66点/認知32点),MMSE:29点,本人hope:孫の結婚式に行きたい,ADOC:家族との交流(3/5),外食(2/5),買い物(4/5),屋内の移動(4/5),余暇時間(4/5).
【考察】ADOCは障害特性や心理状態に合わせて活用することが望ましいとされている.本症例は入院時,漠然とした発言がみられていたが,徐々に心理状態を具体的に表現することが可能になった.ADOCを活用することで意味や価値を感じる作業に焦点化して協働することができ,本人の主体的な行動を引き出せた可能性がある.
【事例紹介】80歳代男性.同敷地内に住む息子家族や友人の協力を得ながら,独居で生活をされていた.現病歴:体動困難になり,2日後に息子の発見により緊急搬送し,T6〜L4レベルで脊髄梗塞と診断.96病日より回復期リハビリテーションを開始した.
【入院時評価】Frankel:C1,ASIA:運動機能(上肢50点/下肢24点),感覚機能(触覚112点/痛覚112点),FIM:47点(運動20点/認知27点),MMSE:25点,本人hope:死にたい,ADOC:実施困難.
【介入方法と経過】
第一期:行動変容の準備期(96病日〜126病日)
ADOC実施.「死にたい」「意味がない」という発言が多く,行動戦略や目標の過程への助言に対しては,無視や暴言の反応であり実施困難.リハビリやADLへの促しは拒否傾向ではあるが,傾聴と共感することで自発話あるため,行動観察を続けた.徐々に「起きる時に足を動かすのが疲れる」「オムツ交換の時に横向くのが疲れる」と具体的な発言が出現した.126病日:FIM:47点(運動20点/認知27点).ADOC実施.「死にたい」に対して,「なぜ」の部分の共有を図ると「楽になりたい」と訴えた.合意目標として「ベッド上で楽に生活したい」を共有した.
第二期:行動変容の実行期(127〜170病日)
リモコン操作や私物を取りやすいようにベッド周囲の環境調整,自助具の導入,車椅子調整を行った.活動達成毎にADOCを実施し,ベッド〜車椅子間の動作戦略,車椅子主体でのADL戦略,院内範囲での参加拡大を図った.合意目標として「院内にある売店へ行き,買い物がしたい」を共有した.「楽で自由にできること」を前提とした動作戦略にて支援を行った.機能訓練や歩行は拒否傾向であったが,ADOC内容への拒否は見られなかった.170病日:FIM:96点(運動64点/認知32点).ADOC:起き上がり・立ち上がり(4/5),移乗(4/5),屋内の移動(3/5),排泄(3/5),買い物(3/5).入浴以外のADL含め,院内車椅子自立となった.
第三期:最期の希望に向けた実行期(171病日〜238病日)
ADOC実施.家族との交流,外食,買い物,屋内の移動,余暇時間の項目を挙げられた.「孫の結婚式に行きたい」を合意目標とし,「初孫で特に可愛がっていたんだ」「最期の希望だよ」と自発的な参加意欲もみられた.車の乗降訓練や家族との交流を背景に外食や屋外での移動といった目標へと移行した.車椅子での外出や外食を想定した家族指導を行い,239病日に施設退院となった.
【結果】Frankel:D1,ASIA:運動機能(上肢50点/下肢32点),感覚機能(触覚112点/痛覚112点),FIM:98点(運動66点/認知32点),MMSE:29点,本人hope:孫の結婚式に行きたい,ADOC:家族との交流(3/5),外食(2/5),買い物(4/5),屋内の移動(4/5),余暇時間(4/5).
【考察】ADOCは障害特性や心理状態に合わせて活用することが望ましいとされている.本症例は入院時,漠然とした発言がみられていたが,徐々に心理状態を具体的に表現することが可能になった.ADOCを活用することで意味や価値を感じる作業に焦点化して協働することができ,本人の主体的な行動を引き出せた可能性がある.