[PJ-1-2] CO-OPを用いてクライエントと協働したことにより目標の作業遂行を明確化することができた事例
【はじめに】
Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)は,作業遂行の問題解決に向けて,Global StrategyのGoal-Plan-Do-Check(以下,GPDCサイクル)の過程で,対象者自身が戦略を立てるように作業療法士と協働して取り組む,作業療法の介入方法である.
今回,回復期病院にて頚髄損傷を患った方に対してCO-OPを用いた介入を実施した.CO-OPの中にあるGPDCサイクルにより,クライエントと協働した作業療法介入になり,本人が思い描く作業遂行を明確化することができたため報告する.本発表について本人に書面にて同意を得た.
【事例紹介】
A氏,80歳代女性.頚髄損傷により左上肢MMT1-2レベル.長谷川式簡易知能評価スケール29点.入院初期は,「左手が良くなるなら何でもいいわ」とリハビリに対して受動的で,左上肢機能練習の希望が聞かれたため,身体機能中心の介入を実施.入院から2ヶ月経過した時点で,左上肢機能の著明な向上は認められなかった.再度目標共有を行い,家族が期待する更衣に対しての希望が聞かれた.作業遂行の質を高めるために,CO-OPを用いた作業療法介入を実施した.
【作業療法評価と介入】
GPDCサイクルに従って,初期にA氏と立てた目標は「一人で上下パジャマに着替えることができる」であった.観察評価を行うと,上下衣とも更衣を完了することができなかった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)は遂行度2,満足度2だった.観察上の遂行の質を評定するPerformance Quality Rating Scale(以下,PQRS)は1だった.A氏と相談し「一人で被り着を着ることができる」「一人でズボンを履くことができる」をサブ目標とした.両作業ともにGPDCサイクルを回し,COPM遂行度(被り着6,ズボン7),満足度(被り着7,ズボン8)PQRSは被り着8,ズボン8へ向上した.その後,目標を「一人で上下パジャマに着替えることができる」に再度設定し実施.COPMは遂行度3,満足度3で,PQRS7と本人とセラピストで遂行の質に乖離が生じた.本人から上手くできなかった所や満足できなかった理由について聴取すると,「時間がかかりすぎている」「着替え方が混乱する」と語られた.混乱を避けるため着替え方を紙面にまとめる戦略を立案し,「一人で紙面を見ながら混乱なく10分以内でパジャマを着替えることができる」と具体的に目標を再設定し練習を実施した.
【結果】
CO-OPを用いた介入を開始してから不定期に9回の介入を実施し,COPMは遂行度7,満足度8で,PQRS8と乖離がなくなり,入院生活でも一人でパジャマに着替えることが可能となった.また,介入経過の中で,遂行の振り返りに使用していた動画を自ら見返したいという発言や次なる介入目標を立てる際に,「ポータブルトイレでの排泄が一人でできる」など,作業を基盤とした介入に対して能動的に取り組む様子がみられた.ポータブルトイレでの排泄時に,下衣更衣と同様のやり方でズボンを下ろすことができ,別の作業にも転移がみられた.
【考察】
今回,回復期病院にて頚髄損傷を患った方に対してCO-OPを用いた介入を実施した.GPDCサイクルにより,A氏が作業遂行の振り返りを行い戦略を立てることで,作業療法士に決定を促すような受け身の状態から,協働した作業療法介入になったと考えられる.その関係がポータブルトイレでの排泄の目標につながったように,別の作業へと発展し,対象者の自立度が改善していく可能性がある.対象者が望む生活に向けてCO-OPを活用することが望まれる.
Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)は,作業遂行の問題解決に向けて,Global StrategyのGoal-Plan-Do-Check(以下,GPDCサイクル)の過程で,対象者自身が戦略を立てるように作業療法士と協働して取り組む,作業療法の介入方法である.
今回,回復期病院にて頚髄損傷を患った方に対してCO-OPを用いた介入を実施した.CO-OPの中にあるGPDCサイクルにより,クライエントと協働した作業療法介入になり,本人が思い描く作業遂行を明確化することができたため報告する.本発表について本人に書面にて同意を得た.
【事例紹介】
A氏,80歳代女性.頚髄損傷により左上肢MMT1-2レベル.長谷川式簡易知能評価スケール29点.入院初期は,「左手が良くなるなら何でもいいわ」とリハビリに対して受動的で,左上肢機能練習の希望が聞かれたため,身体機能中心の介入を実施.入院から2ヶ月経過した時点で,左上肢機能の著明な向上は認められなかった.再度目標共有を行い,家族が期待する更衣に対しての希望が聞かれた.作業遂行の質を高めるために,CO-OPを用いた作業療法介入を実施した.
【作業療法評価と介入】
GPDCサイクルに従って,初期にA氏と立てた目標は「一人で上下パジャマに着替えることができる」であった.観察評価を行うと,上下衣とも更衣を完了することができなかった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)は遂行度2,満足度2だった.観察上の遂行の質を評定するPerformance Quality Rating Scale(以下,PQRS)は1だった.A氏と相談し「一人で被り着を着ることができる」「一人でズボンを履くことができる」をサブ目標とした.両作業ともにGPDCサイクルを回し,COPM遂行度(被り着6,ズボン7),満足度(被り着7,ズボン8)PQRSは被り着8,ズボン8へ向上した.その後,目標を「一人で上下パジャマに着替えることができる」に再度設定し実施.COPMは遂行度3,満足度3で,PQRS7と本人とセラピストで遂行の質に乖離が生じた.本人から上手くできなかった所や満足できなかった理由について聴取すると,「時間がかかりすぎている」「着替え方が混乱する」と語られた.混乱を避けるため着替え方を紙面にまとめる戦略を立案し,「一人で紙面を見ながら混乱なく10分以内でパジャマを着替えることができる」と具体的に目標を再設定し練習を実施した.
【結果】
CO-OPを用いた介入を開始してから不定期に9回の介入を実施し,COPMは遂行度7,満足度8で,PQRS8と乖離がなくなり,入院生活でも一人でパジャマに着替えることが可能となった.また,介入経過の中で,遂行の振り返りに使用していた動画を自ら見返したいという発言や次なる介入目標を立てる際に,「ポータブルトイレでの排泄が一人でできる」など,作業を基盤とした介入に対して能動的に取り組む様子がみられた.ポータブルトイレでの排泄時に,下衣更衣と同様のやり方でズボンを下ろすことができ,別の作業にも転移がみられた.
【考察】
今回,回復期病院にて頚髄損傷を患った方に対してCO-OPを用いた介入を実施した.GPDCサイクルにより,A氏が作業遂行の振り返りを行い戦略を立てることで,作業療法士に決定を促すような受け身の状態から,協働した作業療法介入になったと考えられる.その関係がポータブルトイレでの排泄の目標につながったように,別の作業へと発展し,対象者の自立度が改善していく可能性がある.対象者が望む生活に向けてCO-OPを活用することが望まれる.