[PJ-2-1] 脳梗塞による利き手の重度麻痺と認知機能低下を呈した症例に対して退院後の身だしなみ支援の習慣化に向けた実践
【はじめに】作業療法の化粧支援では,対象者が外出や対人交流といった化粧と関連する作業に参加できる支援を行う重要性があり,認知症患者への化粧支援を行うことは,生活の質の向上や社会参加に繋がる重要な課題である(石橋仁美/2014).今回,認知機能低下を呈した患者へ化粧支援導入の際に,環境設定や家族支援の工夫を行なった.その結果,退院後も家族による身だしなみ支援の習慣化が図れた為報告する.今回の報告に関して家族と本人に書面での同意を得ている.
【事例紹介】左被殻梗塞により右重度片麻痺を呈した80歳代女性である.病前より年齢相応の物忘れがあったが,今回の受傷でさらに注意機能や記憶などの低下を認めた.病前の化粧習慣はなかったが,若い頃化粧品販売の仕事をしており,現在も定期的なヘアカラーやスカーフを巻くなど身なりへの関心が高かった.
【初期評価】Br-stage右上肢Ⅲ-右手指Ⅱ.日常会話の理解・表出は比較的良好も抽象的な指示理解が得られず時折脈絡のない発言が聞かれた.MMSE-Jは19点で中等度認知症であった.FIMは39点であった.観察や会話の中で,おしゃれや身なりに興味を示す反応があった.具体的には,整容動作訓練時に化粧品を見せると自身の化粧への関心や歴史について話始め,非利き手であるにも関わらず自発的に化粧を始めることや他者の身なりを褒める様子が伺えた.症例からは,これを機に再開したいとの希望が聞かれた.認知機能が低下した人の活動への取り組みを簡便に測れるASEAは12点であった.本人聴取の下,今回はスキンケア,アイブロウ,口紅を行うこととした.今回は退院後も行えるように,環境設定や家族への協力を依頼することで習慣化を図った.その際,簡単な化粧技術ポイントを獲得して自ら化粧を行うことを支援する,Supporting Social Participation through a Cosmetic program (以下,SSPC)の視点を一部利用し,本人の理解を得られやすいよう手順書を作成し支援を行う方針とした.
【介入と経過】症例への介入は,非利き手のアイブロウはペンシルタイプでは左右差が出ること,スキンケア用品やアイブロウパレットなどの容器の開閉に難渋した.その為,代償手段ではアイブロウはパウダータイプで長柄の筆に変更,容器開閉では滑り止めマットを提案した.その上で,眉を描く手順はSSPCの化粧技術を用いて支援を行った.さらに手順書では,①スキンケア(拭き取り化粧水・化粧水・乳液)②アイブロウ③口紅の動作順序と特にアイブロウのポイントを簡略的に提示した.その結果,物品を準備することで8割以上が自己にて可能となった.退院時には介助が必要な部分を手順書とともに家族へ伝達することで,退院後の毎朝の習慣として実施していただくようにした.その際に,症例が化粧だけでなく「身なりを整える」ことを重要視しており,スカーフを巻くことや髪型を整えることの重要性を伝えた.
【最終評価】MMSE-Jは19点と変化はないが,化粧行為のエラーが減少した.また,ASEAにおいて介入後は19点に向上を認めた.退院後の電話調査では,化粧はデイケアなどの特性上難しいが,家族が症例の想いを汲み取り洋服を選ぶことや髪型を整える協力をしつつ身だしなみ支援を継続的に行っていた.
【考察】認知機能が低下している症例に対し,症例にとって重要な作業である化粧への支援で環境を整えることは,活動への取り組み改善や動作の定着に繋がることが考えられた.さらに,家族指導を行うことは,症例の「身だしなみへの想い」を家族に共有でき,化粧支援が難しい状況でも家族の工夫によって身だしなみ支援を行うことに繋がることが考えられた.
【事例紹介】左被殻梗塞により右重度片麻痺を呈した80歳代女性である.病前より年齢相応の物忘れがあったが,今回の受傷でさらに注意機能や記憶などの低下を認めた.病前の化粧習慣はなかったが,若い頃化粧品販売の仕事をしており,現在も定期的なヘアカラーやスカーフを巻くなど身なりへの関心が高かった.
【初期評価】Br-stage右上肢Ⅲ-右手指Ⅱ.日常会話の理解・表出は比較的良好も抽象的な指示理解が得られず時折脈絡のない発言が聞かれた.MMSE-Jは19点で中等度認知症であった.FIMは39点であった.観察や会話の中で,おしゃれや身なりに興味を示す反応があった.具体的には,整容動作訓練時に化粧品を見せると自身の化粧への関心や歴史について話始め,非利き手であるにも関わらず自発的に化粧を始めることや他者の身なりを褒める様子が伺えた.症例からは,これを機に再開したいとの希望が聞かれた.認知機能が低下した人の活動への取り組みを簡便に測れるASEAは12点であった.本人聴取の下,今回はスキンケア,アイブロウ,口紅を行うこととした.今回は退院後も行えるように,環境設定や家族への協力を依頼することで習慣化を図った.その際,簡単な化粧技術ポイントを獲得して自ら化粧を行うことを支援する,Supporting Social Participation through a Cosmetic program (以下,SSPC)の視点を一部利用し,本人の理解を得られやすいよう手順書を作成し支援を行う方針とした.
【介入と経過】症例への介入は,非利き手のアイブロウはペンシルタイプでは左右差が出ること,スキンケア用品やアイブロウパレットなどの容器の開閉に難渋した.その為,代償手段ではアイブロウはパウダータイプで長柄の筆に変更,容器開閉では滑り止めマットを提案した.その上で,眉を描く手順はSSPCの化粧技術を用いて支援を行った.さらに手順書では,①スキンケア(拭き取り化粧水・化粧水・乳液)②アイブロウ③口紅の動作順序と特にアイブロウのポイントを簡略的に提示した.その結果,物品を準備することで8割以上が自己にて可能となった.退院時には介助が必要な部分を手順書とともに家族へ伝達することで,退院後の毎朝の習慣として実施していただくようにした.その際に,症例が化粧だけでなく「身なりを整える」ことを重要視しており,スカーフを巻くことや髪型を整えることの重要性を伝えた.
【最終評価】MMSE-Jは19点と変化はないが,化粧行為のエラーが減少した.また,ASEAにおいて介入後は19点に向上を認めた.退院後の電話調査では,化粧はデイケアなどの特性上難しいが,家族が症例の想いを汲み取り洋服を選ぶことや髪型を整える協力をしつつ身だしなみ支援を継続的に行っていた.
【考察】認知機能が低下している症例に対し,症例にとって重要な作業である化粧への支援で環境を整えることは,活動への取り組み改善や動作の定着に繋がることが考えられた.さらに,家族指導を行うことは,症例の「身だしなみへの想い」を家族に共有でき,化粧支援が難しい状況でも家族の工夫によって身だしなみ支援を行うことに繋がることが考えられた.