[PJ-2-2] 妹とつながりを持つ大切な調理を行ったことで健忘していた排泄習慣を再獲得し独居生活が再開できた事例
【はじめに】要介護高齢者が,入院するということは一時的であれ,それまでの人間関係から離れ,役割を喪失し,受動的な生活になることがある.対して,役割を感じる意味のある作業の導入とその成功体験は,受動的な生活から能動的な生活習慣へと変化させると言われている.今回,受傷によって排泄の管理方法を忘れ,セルフケア全般に促しが必要だったが,大切な調理を導入することで,自発的に排泄管理が可能となり,独居生活に戻ることができた事例を担当した.回復期病棟ではADLの改善が望まれているが,意味ある作業を行うことがADLの改善につながる可能性があるため報告する.報告に当たり本人に同意は得ている.
【事例紹介】A氏,80歳代女性.独居で尿道カテーテルとストーマの排泄管理を含めた日常生活活動は自立していた.要支援2であり,洗濯や買い物で訪問介護を利用し,毎晩自宅を訪れる妹に簡単な料理を振舞っていた.今回,腎盂腎炎を発症し,廃用症候群で回復期病棟に入院した.FIMの運動項目は46点,認知項目は23点であり,HDS-Rは14点,MMSEは19点であった.易疲労性でリハビリ以外は臥床し,食事の時間や定時の排泄管理と手技を忘れていた.入院から1ヶ月間,耐久性向上と日課や時間管理の向上,排泄習慣の再獲得に向けて介入した.耐久性は向上したが,排泄手技や定時の排泄管理には声掛けが必要だった.その間A氏からは,毎晩訪ねてくる妹に料理を振舞い夕飯を共にしていたエピソードが何度も語られた.また,OTが妹に電話した際に,調理は妹からも期待されている作業であると分かった.調理は独居生活に必須であり,A氏と妹を繋ぐ意味のある作業であったため,耐久性の向上により立位での作業が可能となった頃に,調理練習を導入した.
【介入】初めにA氏が何を作るか決めることは困難であったため,OTが味噌汁の具材2種類を提案し実施した.調理手順の迷いは無く夢中で休憩なしで行っていた.A氏は作れたことに感激し,翌日以降も調理練習の介入は想起できた.その後も調理練習を重ね,具材や品数,買い物を含む計画を行うなど段階的に難易度を調整し練習と評価を進めた.調理練習の際は,集合場所と時間を指定すると待ち合わせが可能となり,他のリハビリ時間でも待ち合わせが可能となった.調理練習と平行して,排泄手技の練習や定時での排泄管理の促しも継続した.
【結果】1ヶ月後,ノートに一日の記録を残すようになり時間の意識付けがなされ,排泄手技や定時の排泄管理に声掛けが必要なくなった.リハビリ以外の時間の離床も増え,食事を含めたセルフケア全般での自発性が増え促しが不要となった.調理の難易度や遂行能力は家族指導にて妹に伝達し,退院後は配食サービスに加えて一品を調理できるよう家族指導や担当者会議で伝達した.FIMの運動項目は91点,認知項目は26点,HDS-Rは22点,MMSEは25点であった.
【考察】今回,本人と家族間で共有できている意味のある作業の成功体験によって,課題であった排泄習慣の再獲得が間接的に可能となった.調理はA氏にとって役割を感じる意味のある作業であり,その成功経験が快感情として記憶され,日課,習慣としての確立をもたらし,結果として排泄を自己管理できるようになったと考える.排泄と意味ある作業の関係については報告が少なく,今後事例を重ねることでOTが排尿自立支援に貢献できる可能性がある.
【事例紹介】A氏,80歳代女性.独居で尿道カテーテルとストーマの排泄管理を含めた日常生活活動は自立していた.要支援2であり,洗濯や買い物で訪問介護を利用し,毎晩自宅を訪れる妹に簡単な料理を振舞っていた.今回,腎盂腎炎を発症し,廃用症候群で回復期病棟に入院した.FIMの運動項目は46点,認知項目は23点であり,HDS-Rは14点,MMSEは19点であった.易疲労性でリハビリ以外は臥床し,食事の時間や定時の排泄管理と手技を忘れていた.入院から1ヶ月間,耐久性向上と日課や時間管理の向上,排泄習慣の再獲得に向けて介入した.耐久性は向上したが,排泄手技や定時の排泄管理には声掛けが必要だった.その間A氏からは,毎晩訪ねてくる妹に料理を振舞い夕飯を共にしていたエピソードが何度も語られた.また,OTが妹に電話した際に,調理は妹からも期待されている作業であると分かった.調理は独居生活に必須であり,A氏と妹を繋ぐ意味のある作業であったため,耐久性の向上により立位での作業が可能となった頃に,調理練習を導入した.
【介入】初めにA氏が何を作るか決めることは困難であったため,OTが味噌汁の具材2種類を提案し実施した.調理手順の迷いは無く夢中で休憩なしで行っていた.A氏は作れたことに感激し,翌日以降も調理練習の介入は想起できた.その後も調理練習を重ね,具材や品数,買い物を含む計画を行うなど段階的に難易度を調整し練習と評価を進めた.調理練習の際は,集合場所と時間を指定すると待ち合わせが可能となり,他のリハビリ時間でも待ち合わせが可能となった.調理練習と平行して,排泄手技の練習や定時での排泄管理の促しも継続した.
【結果】1ヶ月後,ノートに一日の記録を残すようになり時間の意識付けがなされ,排泄手技や定時の排泄管理に声掛けが必要なくなった.リハビリ以外の時間の離床も増え,食事を含めたセルフケア全般での自発性が増え促しが不要となった.調理の難易度や遂行能力は家族指導にて妹に伝達し,退院後は配食サービスに加えて一品を調理できるよう家族指導や担当者会議で伝達した.FIMの運動項目は91点,認知項目は26点,HDS-Rは22点,MMSEは25点であった.
【考察】今回,本人と家族間で共有できている意味のある作業の成功体験によって,課題であった排泄習慣の再獲得が間接的に可能となった.調理はA氏にとって役割を感じる意味のある作業であり,その成功経験が快感情として記憶され,日課,習慣としての確立をもたらし,結果として排泄を自己管理できるようになったと考える.排泄と意味ある作業の関係については報告が少なく,今後事例を重ねることでOTが排尿自立支援に貢献できる可能性がある.