第58回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-2] ポスター:高齢期 2 

Sat. Nov 9, 2024 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PJ-2-4] 仙骨骨折患者に対する当院回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーションと口腔・栄養の取り組み

広瀬 慶子, 鈴木 あゆみ, 濱田 基敬, 朴 容成 (医療法人甲風会有馬温泉病院 総合リハビリテーション室)

【はじめに】医療・介護において,リハビリテーション(以下,リハ),口腔,栄養の一体的な取り組みが求められている.今回,低栄養リスクの高い独居高齢の骨折患者に,3つの側面から重点的に取り組んだ.当法人の倫理規定に準じ,また発表に際し,本人・家族に同意を得た.
【ケース紹介】自宅で転倒されA病院受診,仙骨骨折と診断.自宅療養から5日後,当院回復期リハ病棟に入院.入院前,料理は栄養バランスを意識して作り自立,散歩・ラジオ体操など健康への関心が高かった.入院時,身長150㎝,体重45.4㎏,一日提供量1500kcal.「喉がつまる」と訴え,管理栄養士と共同し主食は全粥,副食は粗刻み.「食べるのに疲れる,食欲がない」と,1400kcalに変更.入院から2週間,体重が1.6㎏減少した(体重減少率:3.5%).
【評価】FIM:56点(起居:修正自立,排泄:おむつ).下腿周径(右/左,cm):24.2/26.1,握力(右/左,㎏):2.5/5.5,粗大筋力:上肢4/下肢3+/体幹3.円背姿勢で立位バランス低下.臀部NRS:運動時10/安静時2.聞き取り:「夫氏他界から独居.10年間で10㎏減少.朝夕2食と間食,時折喉がつまる.身長は8cm縮んだ.4か月前転居,外出頻度が減少した」入院2週間後,体重:43.8㎏,BMI:17.5㎏/㎡(158cmとして算出),MNA-SF:5点,GLIM基準:重度低栄養,総エネルギー消費量:1411kcal.RSST:2回.食事:主食2~10割/副食3~10割とばらつき.お粥におかずを混ぜる.送り込みに時間を要し,複数回嚥下,時折咳嗽を認める.
【計画】活動量,口腔機能,摂取量・食形態を検討する.多職種間で体重増加の目標を共有し,受傷前の栄養と活動・社会参加を振り返る.
【経過】ADL練習や食事時のシーティング,疼痛を考慮して理学療法士と連携した運動量調整,言語療法士と立案した唾液腺マッサージや口腔体操を実施しながら,離床や活動量増加のタイミングに留意した.また喫食量を確認し提供量1500kcalを目指した.介入1か月,歩行器自立,45.7㎏.介入2か月,シルバーカー自立,料理等のIADL練習を導入.軟飯・普通菜,おかずを混ぜなくなり「ごはんの味がわかるようになった」.
【結果】FIM:115点.体重:46.5㎏,BMI:18.6㎏/㎡.下腿周径:29.5/31.0,握力:9.0/13.1.NRS:0.MNA-SF:9点,GLIM基準:除外.総エネルギー消費量:1486kcal.RSST:5回.食事10割・間食,咳嗽なし.退院後,宅配食と料理の併用,買い物自立を目標に取り組んだ情報を訪問リハに提供した.
【考察】伊藤らは,独居高齢者は非独居高齢者に比べ栄養素摂取量の少なさや欠食が多いと報告し,本ケースも栄養バランスを考慮していたが総摂取量は少なく,欠食も多かった.また転居を機に運動機会が減少するなど,低栄養リスク群に該当した.そこで,GLIM基準を取り入れ,多職種と連携し体重の増加を目標とした.作業療法では,間接的嚥下練習・料理練習によって,ご飯を作り・食べ・楽しむ土台作りができた.また介護サービスとの連携により,退院後,独居生活における低栄養リスクの軽減を図ることができた.久保田らは,骨折後のリハ目標は早期の関節運動と筋力強化により運動機能を受傷前の状態に復することと報告しているが,今回その前段階として,作業療法士がコーディネーターとなって栄養評価や受傷前生活を聞き取ることで,低栄養リスク軽減・栄養状態改善につながり,受傷前よりも高い運動機能で退院が可能となった.
【おわりに】2024年診療報酬改定では,回復期リハ病棟入院料にGLIM基準を含み,リハ,口腔,栄養の一体的な取り組みが求められている.その中で作業療法士に求められる役割はますます拡大するのではないか.