[PJ-2-5] 栄養マネジメントにより胃瘻造設から完全経口摂取に至り,したい作業が叶った一例
【はじめに】当施設は入所者の約20%が胃瘻造設をされており,そのうち約80%は何らかの形で経口摂取ができている.「食べる」ことは,生きるため・エネルギーや抵抗力をつけるため・コミュニケーションの場をつくる意味があり,その中で作業療法士(以下OT)は再び食べることでその人らしく生きる支援を行う.今回,胃瘻造設後の当施設入所者にOTが栄養マネジメントすることで,再び「食べる」ことからその人らしい生活を取り戻せた事例を紹介する.
【事例紹介】70歳代女性,157cm,37.9kg.現病歴:感染性内膜炎とそれに伴う多発性脳梗塞により入院.僧帽弁置換術後,四肢麻痺と嚥下障害残存,ADLは全介助.4か月後別病院に転院,7か月後胃瘻造設.9か月後当施設に入所.身体機能面は,左半身に強い四肢麻痺,起立性低血圧ありリクライニング車いす使用,ADLは胃瘻からの注入食,尿便意曖昧でBarthel Index=0点.認知機能はMMSE=28/30点,高次脳機能障害の問題はなかった.栄養評価は,BMI=15.4,Mini Nutritional Assessment Short-Formが2点で,Global Leadership Initiative on Malnutrition基準にて重症の低栄養と診断.要介護5,夫と2人暮らし.性格は社交的,リハビリに対して意欲的.趣味は友人と外食や買い物に行くこと,料理,手作業.デマンドは食べられるようになりたい,自分でトイレに行きたい,家に帰りたい.
【介入・経過】目標は3ヶ月後,座位耐久性1時間,胃婁と併用した経口摂取,必要栄養量の増加から体重増加(2kg増加),6ヶ月後,日中座位時保持可能,経口摂取量増加,体重4㎏増加,食事動作自立,トイレ1人介助,在宅復帰とした.OTでは四肢ROM,作業課題を用いで座位耐性訓練,食事・排泄動作訓練,調理訓練を実施した.また栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;NST)で食事摂取状況や提供量,提供内容等検討しながら進め,毎食事に栄養補助食品や食事時間以外に栄養補助飲料を追加した.
【結果】介入3か月で座位時間は普通型車いす3時間,食事動作は右手スプーンで完全経口摂取に至った.排泄コントロールも改善したがトイレは2人介助必要.体重は1.7㎏増加し,BMIは16.1となった.6ヵ月で体重はほぼ変わりなかったが,座位時間は日常生活上で問題なくなり,トイレは1人介助で可能となった.また簡単な調理や手作業も可能となった.その後在宅復帰し,通所リハビリテーションやショートスティを利用しながらリハビリテーションを継続.15ヵ月で家族と外食するに至った.また45ヵ月で,BMI:17.9,BI=55/100点,ベッド周囲動作自立,トイレは見守りで可能となった.
【考察】事例は機能低下や嚥下障害,低栄養が胃瘻造設に至った原因であった.胃瘻と経口摂取を併用しながら,少量の経口摂取でも効率的にカロリー摂取ができる工夫をした.また,座位耐久性訓練,低負荷での筋力増強,日常動作練習や作業活動を栄養状態,摂取状況に合わせて取り組んだことが改善につながったと思われる.さらに本人・家族の思いを組み込んだ多職種との目標・情報共有が,早期に完全経口摂取に至り,本人のしたい作業につながった要因だと考える.
【まとめ】胃瘻は栄養補給のひとつで,あくまでも自分の力で食べられるようになるまでのサポートが目的である.今回,長期的に「経口摂取をあきらめない」介入から,その人らしい生活の支援に取り組むことができた.経口摂取の取り組みやその人らしい生活を送るためにOTが栄養マネジメント評価・介入・継続支援をトライし続けることが重要である.
【事例紹介】70歳代女性,157cm,37.9kg.現病歴:感染性内膜炎とそれに伴う多発性脳梗塞により入院.僧帽弁置換術後,四肢麻痺と嚥下障害残存,ADLは全介助.4か月後別病院に転院,7か月後胃瘻造設.9か月後当施設に入所.身体機能面は,左半身に強い四肢麻痺,起立性低血圧ありリクライニング車いす使用,ADLは胃瘻からの注入食,尿便意曖昧でBarthel Index=0点.認知機能はMMSE=28/30点,高次脳機能障害の問題はなかった.栄養評価は,BMI=15.4,Mini Nutritional Assessment Short-Formが2点で,Global Leadership Initiative on Malnutrition基準にて重症の低栄養と診断.要介護5,夫と2人暮らし.性格は社交的,リハビリに対して意欲的.趣味は友人と外食や買い物に行くこと,料理,手作業.デマンドは食べられるようになりたい,自分でトイレに行きたい,家に帰りたい.
【介入・経過】目標は3ヶ月後,座位耐久性1時間,胃婁と併用した経口摂取,必要栄養量の増加から体重増加(2kg増加),6ヶ月後,日中座位時保持可能,経口摂取量増加,体重4㎏増加,食事動作自立,トイレ1人介助,在宅復帰とした.OTでは四肢ROM,作業課題を用いで座位耐性訓練,食事・排泄動作訓練,調理訓練を実施した.また栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;NST)で食事摂取状況や提供量,提供内容等検討しながら進め,毎食事に栄養補助食品や食事時間以外に栄養補助飲料を追加した.
【結果】介入3か月で座位時間は普通型車いす3時間,食事動作は右手スプーンで完全経口摂取に至った.排泄コントロールも改善したがトイレは2人介助必要.体重は1.7㎏増加し,BMIは16.1となった.6ヵ月で体重はほぼ変わりなかったが,座位時間は日常生活上で問題なくなり,トイレは1人介助で可能となった.また簡単な調理や手作業も可能となった.その後在宅復帰し,通所リハビリテーションやショートスティを利用しながらリハビリテーションを継続.15ヵ月で家族と外食するに至った.また45ヵ月で,BMI:17.9,BI=55/100点,ベッド周囲動作自立,トイレは見守りで可能となった.
【考察】事例は機能低下や嚥下障害,低栄養が胃瘻造設に至った原因であった.胃瘻と経口摂取を併用しながら,少量の経口摂取でも効率的にカロリー摂取ができる工夫をした.また,座位耐久性訓練,低負荷での筋力増強,日常動作練習や作業活動を栄養状態,摂取状況に合わせて取り組んだことが改善につながったと思われる.さらに本人・家族の思いを組み込んだ多職種との目標・情報共有が,早期に完全経口摂取に至り,本人のしたい作業につながった要因だと考える.
【まとめ】胃瘻は栄養補給のひとつで,あくまでも自分の力で食べられるようになるまでのサポートが目的である.今回,長期的に「経口摂取をあきらめない」介入から,その人らしい生活の支援に取り組むことができた.経口摂取の取り組みやその人らしい生活を送るためにOTが栄養マネジメント評価・介入・継続支援をトライし続けることが重要である.