第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-2] ポスター:高齢期 2 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PJ-2-7] 回復期リハビリテーション病棟における軽度認知症合併患者のADL自立度変化確認

奈良 浩之, 和泉 優子, 吉川 陽子, 加地 亜紀, 安信 祐治 (一般社団法人 三次地区医師会 三次地区医療センター)

【はじめに】回復期リハビリテーション病棟患者の高齢化および認知症合併も多くみられる.実績指数計算上においても,毎月の入院患者の30%を越えない範囲において,80歳以上・機能的自立度評価表(以下,FIM)認知項目が25点未満の患者等を除外出来る.当院の回復期リハビリテーション病棟(42床,入院料3)入院患者の年齢層も高く,脳血管疾患群の平均年齢79.41±9.76標準偏差(全国平均73.7歳,回復期リハビリテーション病棟協会調査報告書2023年2月),運動器疾患群の平均年齢84.35±10.64(全国平均80.4歳)である.当院の回復期リハビリテーション病棟入院患者の認知症高齢者日常生活自立度(以下,認知症自立度)の入院時評価では,62%が何らかの認知症を有している(全国調査59.5%).認知症は,リハビリテーション医療・ケアにおける阻害因子としての報告も多い.一方で,軽度認知症患者におけるADLやIADLの介入効果も報告され,認知症対策も重要視されている.
【目的】回復期リハビリテーション病棟に入院する軽度認知症合併患者のADL自立度変化から,介助量軽減が得られやすい動作を確認することを目的とした.
【方法】2022年4月1日から2023年10月31日に当院の回復期リハビリテーション病棟を退院した263名の内,死亡退院2名,疾患急性増悪等での転棟や転院した18名,データ不備24名を除く219名(脳血管疾患119名,運動器疾患100名)の資料を使用.各個人が特定されない範囲で,性別・年齢・疾患分類・認知症自立度・障害高齢者の日常生活自立度(以下,障害自立度)・FIM各項目得点等のデータを使用.認知症自立度の正常を認知症合併なし,認知症自立度Ⅰを軽度認知症合併患者,認知症自立度Ⅱ以上を中等度以上認知症合併患者と定義した.入院時の認知症自立度Ⅰと疾患別,年齢,障害自立度との組み合わせを確認した.軽度認知症合併患者群と中等度以上認知症合併患者群でのFIM各項目の入院時と退院時の得点変化(以下,得点変化)比較をMann-Whitney U検定で行った.有意差のあったFIM該当項目の入院時と退院時の各得点割合も確認した.軽度認知症合併患者群と中等度以上認知症合併患者群それぞれのFIM運動項目得点変化合計点と障害自立度,年齢の影響を重回帰分析で確認した.
【倫理的配慮】三次地区医療センターの倫理審査承認(2023年12月)を受けた.
【結果】軽度認知症合併患者は30名.脳血管疾患17名(男性8名・女性9名)平均年齢81歳,運動器疾患13名(男性3名・女性10名)平均年齢85.6歳.認知症自立度Ⅰと障害自立度との組み合わせは,ⅠとランクJが1名,ⅠとランクAが5名,ⅠとランクBが22名,ⅠとランクCが2名.FIM各項目得点変化の比較は,食事,整容,更衣上半身,更衣下半身,排尿管理,移動,階段,問題解決,記憶に有意差(p<0.05)を認めた.
 軽度認知症合併患者群のFIM運動項目得点変化合計点に障害自立度や年齢の有意な影響は認められなかった.
【考察】軽度認知症合併患者群の退院時FIM6点以上の自立割合は,食事・整容動作で80~90%,更衣(上・下半身)動作で90%,排尿管理で70%,障害自立度の影響は大きくないことから,理解や記憶,危険認識・自己管理が十分で,多くの患者が職員の促し・見守りや介助なしで動作遂行が可能と考える.移乗やトイレ・洗体動作等は有意差がなく,介助量の軽減が得られにくく,職員の見守りも外しにくいと考える.軽度認知症合併患者の回復期リハビリテーション病棟でのADL関与として,食事・整容・更衣動作や排尿管理の介助量軽減に向けた関与が有効であると確認出来た.