[PJ-3-2] ケア・トランポリンの跳躍動作における筋電図研究
【はじめに】ケア・トランポリンは,介護予防プログラムとして用いられている.【目的】本研究では,ケア・トランポリンの跳躍動作における筋電図を計測し,筋の活動状態を分析することを目的とした.【方法】ケア・トランポリン(日本ケア・トランポリン協会)は,全高1,110mm,マットの直径530mm,フレームの直径96mm,マットの高さ270mm,マットにはバネがついており,手すりを両手でつかんで跳躍ができる様式である.対象は,健常男子8名(年齢:21.0±0.0歳,身長:171.9±5.5cm,体重:63.4±11.5kg)であった.筋電計測の対象となる運動の種類は,①床上スクワット(以下,運動Ⅰ),②爪先がマットに触れた状態での上下運動(以下,運動Ⅱ),③足底がマットから離れた状態での上下運動(以下,運動Ⅲ)の3種類とした.運動時に作用する内側広筋,大腿二頭筋,腓腹筋(内側),前脛骨筋といった拮抗作用を持つ筋の筋電図を全て右下肢にて計測した.使用した機器は,表面筋電図 Ultium EMG (NORAXON社製)を用い,サンプリング周波数2,000Hzにて計測した.計測方法は,運動Ⅰ,運動Ⅱおよび運動Ⅲを100beatのリズムで上下運動を実施する際の筋電図を計測した.計測時間は,各運動1分間として,その間の伸展と屈曲を3回繰り返し行った際の筋電図データを使用した.データは整流し,伸展と屈曲に切り替わる地点にマーカーを挿入し,時間の正規化による平均活動量として解析を行った.筋電図の振幅(μV)の平均値とピーク値において,対象者のデータの中央値を算出した.【倫理的配慮】本研究を実施するにあたり,日本医療科学大学の研究倫理委員会からの承認を得た.【結果】各筋の振幅 (μV) を伸展時と屈曲時の平均値(左)とピーク値(右)として示した.運動Ⅰでは,大腿二頭筋 [(伸展時; 21.4, 84.0),(屈曲時:31.6, 60.07)],内側広筋 [(伸展時; 94.8, 154.8),(屈曲時:54.1, 106.5)],腓腹筋 [(伸展時; 25.9 , 43.5),(屈曲時:9.9, 18.6)],前脛骨筋 [(伸展時; 39.5, 151.6),(屈曲時:8.3, 31.5)]であった.運動Ⅱでは,大腿二頭筋 [(伸展時; 39.9, 83.4),(屈曲時:24.9, 75.7)],内側広筋 [(伸展時; 78.4, 208.0),(屈曲時:56.8, 207.8)],腓腹筋 [(伸展時; 78.2 , 320.5),(屈曲時:189.5, 742.2)],前脛骨筋 [(伸展時; 36.2, 67.6),(屈曲時:50.0, 112.7)]であった.運動Ⅲでは,大腿二頭筋 [(伸展時; 39.6, 199.3),(屈曲時:40.1, 125.7)],内側広筋 [(伸展時; 92.2, 409.0),(屈曲時:138.2, 305.9)],腓腹筋 [(伸展時; 122.8, 526.6),(屈曲時:100.7, 242.9)],前脛骨筋 [(伸展時; 114.9, 280.8),(屈曲時:75.3, 186.8)]であり,振幅(μV)の数値が大きいほど筋が活動していると解釈される.【考察】運動Ⅲでは,運動Ⅰおよび運動Ⅱよりも大きな振幅となった.運動Ⅱでは,つま先がマットに着地した状態での背屈運動が行われるため,腓腹筋の遠心性収縮が特徴的であると考えられた.高齢者の運動プログラムとして,運動時間の調節や跳躍方法の工夫をすることで,有効なプログラムとなる可能性があると考えられる.