[PJ-3-7] 慢性期病棟に入院した患者に対する院内デイケア実施前後の変化
【目的】
医療療養病床(以下,療養病床)や障害者病棟等の慢性期病床は,主として長期療養を必要とする患者を入院させる病床であり,入院患者の生活の場としての機能が求められている(厚生労働省,2023).療養病床入院患者の経時的変化として,Activities of Daily Living (以下,ADL)と精神機能の大幅な低下を防ぐ可能性が報告されている(石橋,2008)が,自研例では,認知機能が維持されるにも関わらず,行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;以下,BPSD)が増悪する傾向がみられた.その原因として,当院の療養病床の環境は他者交流が少なく,主体的な生活が阻害されている可能性が推測された. BPSDは介護負担を増加させる(安武,2011)だけでなく,医療費の増加因子であるとされ(Michal, 2002),療養病床においてBPSDの対策は重要である.BPSDへの介入として高齢者に対して,高齢者施設において集団を用いたリハビリテーションを実施したところ,BPSDと生活の質(Quality Of Life ;以下QOL)の改善(坂本,2017),認知症重症度の改善(山上,2015)がみられたと報告されている.そこで本研究では慢性期病床に入院する高齢患者を対象に院内デイケアを2週間実施し,認知機能,BPSD,作業機能,作業参加の経時的変化を調査した.
【方法】
対象者は2023年10月から2023年11月に療養病棟と障害者病棟に入院中の患者19名とした.除外基準は高度な意識障害があり意思疎通が不能な者,60分程度車椅子乗車ができない者とした.院内デイケアで実施したプログラムは「風船バレー」「玉入れ」「ボーリング」「季節の飾り付けの作成」である.病棟ごとに2集団で1週間に2回の合計4回実施した.評価項目は,Mini-Mental State Examination(以下,MMSE),認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Disturbance Scale;以下DBD13),人間作業モデルスクリーニングツール(Model of Human Occupation Screening Tool ;以下MOHOST),活動に対する取り組み尺度(Assessment Scale for Engagement in Activities ;以下ASEA)とした.これらを院内デイケアの開始7日以内に初期評価を実施し,2週間後の院内デイケア終了から7日以内に再評価を行った.統計学的解析は,EZRver1.55を用いた.なお,危険率は5%とした.初期評価と再評価の比較をWilcoxon符号付順位検定で解析した.本研究の参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】
対象者は年齢84±6.2歳の男性7人,女性12名の計19名で,内部疾患患者17名,中枢神経疾患患者1名,整形外科疾患患者1名であった.初期評価と再評価を比べ有意に増加したものは,MMSE,MOHOST,ASEAであった.MOHOSTの下位項目で有意に増加したものは,作業のパターン,コミュニケーションと交流技能,運動技能,環境であった.
【考察】
院内デイケアを実施することで,認知機能,作業従事.活動への参加が改善する可能性が考えられた.MOHOSTにおいては下位項目の作業のパターン,コミュニケーションと交流技能,参加が改善しており,作業の中で役割行動や他者との交流が促進された可能性が考えられた.運動機能は,離床時間が延長したことが寄与した可能性が考えられる.また,ASEAが有意に改善したことから作業を楽しみに待つ患者や作業への主体的な参加が増えたことが推察される.一方,BPSDに有意な改善がみられなかった.要因として本研究では,実施回数と期間が先行研究(旭ら,2022)(葉室ら,2011)と比較して少なかったことが考えられた.
医療療養病床(以下,療養病床)や障害者病棟等の慢性期病床は,主として長期療養を必要とする患者を入院させる病床であり,入院患者の生活の場としての機能が求められている(厚生労働省,2023).療養病床入院患者の経時的変化として,Activities of Daily Living (以下,ADL)と精神機能の大幅な低下を防ぐ可能性が報告されている(石橋,2008)が,自研例では,認知機能が維持されるにも関わらず,行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;以下,BPSD)が増悪する傾向がみられた.その原因として,当院の療養病床の環境は他者交流が少なく,主体的な生活が阻害されている可能性が推測された. BPSDは介護負担を増加させる(安武,2011)だけでなく,医療費の増加因子であるとされ(Michal, 2002),療養病床においてBPSDの対策は重要である.BPSDへの介入として高齢者に対して,高齢者施設において集団を用いたリハビリテーションを実施したところ,BPSDと生活の質(Quality Of Life ;以下QOL)の改善(坂本,2017),認知症重症度の改善(山上,2015)がみられたと報告されている.そこで本研究では慢性期病床に入院する高齢患者を対象に院内デイケアを2週間実施し,認知機能,BPSD,作業機能,作業参加の経時的変化を調査した.
【方法】
対象者は2023年10月から2023年11月に療養病棟と障害者病棟に入院中の患者19名とした.除外基準は高度な意識障害があり意思疎通が不能な者,60分程度車椅子乗車ができない者とした.院内デイケアで実施したプログラムは「風船バレー」「玉入れ」「ボーリング」「季節の飾り付けの作成」である.病棟ごとに2集団で1週間に2回の合計4回実施した.評価項目は,Mini-Mental State Examination(以下,MMSE),認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Disturbance Scale;以下DBD13),人間作業モデルスクリーニングツール(Model of Human Occupation Screening Tool ;以下MOHOST),活動に対する取り組み尺度(Assessment Scale for Engagement in Activities ;以下ASEA)とした.これらを院内デイケアの開始7日以内に初期評価を実施し,2週間後の院内デイケア終了から7日以内に再評価を行った.統計学的解析は,EZRver1.55を用いた.なお,危険率は5%とした.初期評価と再評価の比較をWilcoxon符号付順位検定で解析した.本研究の参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】
対象者は年齢84±6.2歳の男性7人,女性12名の計19名で,内部疾患患者17名,中枢神経疾患患者1名,整形外科疾患患者1名であった.初期評価と再評価を比べ有意に増加したものは,MMSE,MOHOST,ASEAであった.MOHOSTの下位項目で有意に増加したものは,作業のパターン,コミュニケーションと交流技能,運動技能,環境であった.
【考察】
院内デイケアを実施することで,認知機能,作業従事.活動への参加が改善する可能性が考えられた.MOHOSTにおいては下位項目の作業のパターン,コミュニケーションと交流技能,参加が改善しており,作業の中で役割行動や他者との交流が促進された可能性が考えられた.運動機能は,離床時間が延長したことが寄与した可能性が考えられる.また,ASEAが有意に改善したことから作業を楽しみに待つ患者や作業への主体的な参加が増えたことが推察される.一方,BPSDに有意な改善がみられなかった.要因として本研究では,実施回数と期間が先行研究(旭ら,2022)(葉室ら,2011)と比較して少なかったことが考えられた.