[PJ-4-1] 高齢者の歩行時の視線特性の解析
【はじめに】厚生労働省によると,65歳以上高齢者,高齢者の「転倒・転落・墜落」による死亡者数は「交通事故」の約4倍であるとされ高齢者の転倒予防は喫緊の課題であり,作業療法においても高齢者の転倒防止につながるような取り組みを実践する必要があるといえる.高齢者の転倒の原因として,歩行機能や立位バランスの低下が挙げられているが,認知機能の低下もその要因として挙げられている.転倒につながる認知機能としては,注意機能の低下や,全般的な認知機能の低下など様々な報告がされており一定の見解が得られていない.本研究では,歩行時の視線の特性から,高齢者がより安全に歩行できる生活環境を構築することを目的として,高齢者の歩行時の視線特性について健常高齢者を対象にパイロット的に解析を行った.
【方法】<倫理的配慮>筆頭演者の所属先の倫理委員会の承認および共同研究者の所属先の倫理審査の承認を得て研究を行った.<対象>本研究に同意の得られた65歳以上の高齢者うち,調査時点で歩行に影響する疾患・障害のない者とした.<歩行課題>歩行課題はTimed-Up&Goテスト(以下TUG)と通常歩行,障害物歩行の3つを行った.TUGは,座位の状態から合図ともに立ち上がり3m前方の目標物を回って再度着座するまでの時間を測定する検査である.通常歩行および障害物歩行では7mの距離を通常の歩行速度で歩行をし,障害物歩行では途中4m地点に高さ19mm,幅89mmの障害物を設置し,障害物をまたぐように歩行をしてもらった.<視線計測>本研究での視線計測にはPupil labs社製のneonを用いた.本機種は眼鏡タイプの視線計測装置であり,キャリブレーションフリーでの視線計測が可能な装置である.眼鏡の中央部分にある視野カメラで視野の映像を記録し,眼鏡の鼻あて部分にあるセンサーで視線の計測を行い,視野カメラと視線情報を統合して視野カメラ内における視線の位置情報を計測する.視線計測はサンプリング速度200Hzで行った.<歩行動画記録>対象者の右側方から歩行の様子を120フレーム/秒で動画撮影した.<解析>計測にあたり,対象者には前方に設置した照明が点灯することで動作を開始するよう伝えた.この照明を視線計測装置,および側方からの動画撮影でに映りこませることで動作開始時点の同期をとれるようにした.照明の点灯後からのデータを解析の対象とした
【結果】本演題登録時点で解析ができた健常高齢者1事例について報告する.TUGでは,立ち上がってから歩行開始後すぐに目標物を注視し,その後目標物の1m手前を過ぎるあたりからは視線をそらし,方向転換後は椅子を視線を注視し,椅子の座面前で方向転転換をする際に視線をそらしていた.通常歩行では,対象者は前方3mほどを常に注視して歩行をしていた.障害物歩行では歩行開始当初に障害物を注視し,障害物1m手前では視線を障害物から外していた.
【考察】通常歩行では常に前方3mほどを注視していたのに比べ,TUGや障害物歩行では目標物となるものを注視し動作を行っており,また,いずれも歩行転換やまたぐといった動作を行っちえる際には視線が目標物からは外れていた.これは,目的とする動作を行う際に必要となる視覚的な情報について,動作のを行う時点ではすでに取り込み終わったうえで,動作を遂行しており,健常者においてはこの過程が問題なく行えることで,転倒などがないものと考えられる.今後,健常高齢者だけでなく認知機能が低下した高齢者も対象としデータの収集を行い,高齢者の歩行時の視線特性について検討をする予定である.
【方法】<倫理的配慮>筆頭演者の所属先の倫理委員会の承認および共同研究者の所属先の倫理審査の承認を得て研究を行った.<対象>本研究に同意の得られた65歳以上の高齢者うち,調査時点で歩行に影響する疾患・障害のない者とした.<歩行課題>歩行課題はTimed-Up&Goテスト(以下TUG)と通常歩行,障害物歩行の3つを行った.TUGは,座位の状態から合図ともに立ち上がり3m前方の目標物を回って再度着座するまでの時間を測定する検査である.通常歩行および障害物歩行では7mの距離を通常の歩行速度で歩行をし,障害物歩行では途中4m地点に高さ19mm,幅89mmの障害物を設置し,障害物をまたぐように歩行をしてもらった.<視線計測>本研究での視線計測にはPupil labs社製のneonを用いた.本機種は眼鏡タイプの視線計測装置であり,キャリブレーションフリーでの視線計測が可能な装置である.眼鏡の中央部分にある視野カメラで視野の映像を記録し,眼鏡の鼻あて部分にあるセンサーで視線の計測を行い,視野カメラと視線情報を統合して視野カメラ内における視線の位置情報を計測する.視線計測はサンプリング速度200Hzで行った.<歩行動画記録>対象者の右側方から歩行の様子を120フレーム/秒で動画撮影した.<解析>計測にあたり,対象者には前方に設置した照明が点灯することで動作を開始するよう伝えた.この照明を視線計測装置,および側方からの動画撮影でに映りこませることで動作開始時点の同期をとれるようにした.照明の点灯後からのデータを解析の対象とした
【結果】本演題登録時点で解析ができた健常高齢者1事例について報告する.TUGでは,立ち上がってから歩行開始後すぐに目標物を注視し,その後目標物の1m手前を過ぎるあたりからは視線をそらし,方向転換後は椅子を視線を注視し,椅子の座面前で方向転転換をする際に視線をそらしていた.通常歩行では,対象者は前方3mほどを常に注視して歩行をしていた.障害物歩行では歩行開始当初に障害物を注視し,障害物1m手前では視線を障害物から外していた.
【考察】通常歩行では常に前方3mほどを注視していたのに比べ,TUGや障害物歩行では目標物となるものを注視し動作を行っており,また,いずれも歩行転換やまたぐといった動作を行っちえる際には視線が目標物からは外れていた.これは,目的とする動作を行う際に必要となる視覚的な情報について,動作のを行う時点ではすでに取り込み終わったうえで,動作を遂行しており,健常者においてはこの過程が問題なく行えることで,転倒などがないものと考えられる.今後,健常高齢者だけでなく認知機能が低下した高齢者も対象としデータの収集を行い,高齢者の歩行時の視線特性について検討をする予定である.