第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-4] ポスター:高齢期 4

2024年11月9日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (大ホール)

[PJ-4-2] 回復期リハビリテーション病院退院後在宅高齢者の作業機能障害と栄養問題との関連性

山根 真希子1,2, 狩長 弘親3 (1.吉備国際大学大学院 (通信制)保健科学研究科作業療法専攻, 2.一般財団法人神戸在宅医療・介護推進財団 神戸リハビリテーション病院 リハビリテーション部, 3.吉備国際大学 保健医療福祉学部作業療法学科)

【はじめに】高齢者の栄養障害は疾病の発症や要介護状態に移行するリスク因子であり,高齢者の栄養問題は重要である.栄養の問題は日常生活に密着しており,生活行為と高齢者の栄養問題は切り離して考えることはできない.作業療法では,生活行為を適切にやり遂げることができない状態を作業機能障害(以下;OD)という.回復期リハビリテーション病院(以下;回リハ病院)退院後在宅高齢者は,何らかの機能低下を抱えた状態で在宅生活に戻ることが多いため,生活行為に変化が生じ,ODを引き起こす可能性が考えられる.近年,地域在住高齢者において,フレイルとODの関連性が報告されているが,ODと高齢者の栄養問題との関連は明らかにされていない.
【目的】本研究の目的は,回リハ病院退院後在宅高齢者のODと栄養問題との関連を明らかにすることである.本研究では高齢者の栄養問題をNutrition Screening Initiative(以下;NSI)で捉え,OD群は非OD群よりもNSIの総合得点が高く低栄養リスクが高いという仮説を検証した.
【方法】本研究は横断研究を用いた.対象は,脳卒中または大腿骨骨折の患者で,回リハ病院退院後2年以内の在宅高齢者とした.退院時経口摂取していない者,改訂長谷川式簡易知能評価スケール20点以下の者,質問紙への回答が困難な者は除外した.方法は,基本情報(年齢,性別,疾患名,嚥下障害の有無)をカルテから後方視的に調査し,郵送法にて質問紙調査を行った.質問紙調査は,フェイスシート,作業機能障害の種類と評価(以下;CAOD),NSIを使用した.データ分析は,記述的統計量の算出,有意差検定を行った.有意差検定は,CAODのカットオフ値でOD群と非OD群に群分けし,従属変数を,カルテ情報,フェイスシート各項目,NSI総合得点とリスク分類,NSI各項目の回答頻度とした.また,交絡因子となり得る疾患や性別毎に分類し,サブグループ解析を行った.統計解析は,正規性の確認はKolmogorov-Sminov検定,間隔・比率尺度のうち両群共に正規性ありはWelchのt検定,正規性なし及び順序尺度はBrunner-Munzel検定,名義尺度はχ検定,NSI各項目の回答頻度はFisherの正確確立検定を行った.統計ソフトはHAD18.0を使用し有意水準は5%未満とした.本研究は,吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号22-44).
【結果】272名に質問紙を郵送し分析対象者は139名であった(有効回答率51.1%).結果,NSI総合得点に有意差を認めなかった.サブグループ解析では,大腿骨骨折のみ非OD群に比べOD群でNSI総合得点が有意に高かった.NSI各項目では,非OD群に比べOD群で,口腔の問題で食べられない者の割合が有意に高かった.サブグループ解析では大腿骨骨折と女性で全体と同様の結果であった.
【考察】本研究の結果,仮説は支持されなかった.理由として,NSI総合得点にばらつきが少なかったことが考えられる.サブグループ解析で大腿骨骨折のみ有意な差を認めたことから,ODと栄養問題との関連は疾患の影響を受けることが考えられた.
ODと口腔機能との関連は,フレイルに対するODを検討した先行研究で報告されている.サブグループ解析の結果,大腿骨骨折と女性で有意な差を認めたことから,ODと口腔機能との関連は,交絡因子としてフレイルの影響が考えられた.口腔機能の問題は社会参加が減少する要因となることから,他の栄養問題に比べて,ODと関連しやすかったと考えられる.以上より,在宅高齢者の栄養問題を捉える際には,ODの視点から捉えることで多職種とは異なる介入や提案を行うことができ,作業療法士が退院後の心身機能低下を防ぐ予防的な働きかけが可能となる可能性が考えられる.