[PJ-5-1] 慢性期病棟入院中の内部疾患患者における食事動作自立に関連するN式老年者用精神状態尺度の下位項目とカットオフ値の検討
【序論】食事は高齢者にとって「楽しみ」という意味を持ち(宮前,2001),幸福感(大西,2004)や自己効力感(西,2022)に寄与するとされている.食事への作業療法は,食事遂行の質や満足度に変化を与えると報告されている(塩津,2014).慢性期病棟は医療必要度の高い患者が長期入院する病棟とされ(厚生労働省,2016),食事への作業療法介入は不可欠である.食事動作にはBox and Block Testが関連するとされているが(宮内,2023),慢性期病棟の内部疾患患者における因子は不明である.上肢機能と認知機能には関連があり(Song CS,2015),認知機能の観察尺度によって食事自立の可否を予測できれば有益であると考えられる.観察尺度のN式老年者用精神状態尺度(New Clinical Scale for Rating of Mental States of Elderly;以下,NM scale)は5項目について7段階で評定する尺度であり,信頼性と妥当性が確認されている(小林,1988).本研究では慢性期病棟に入院した内部疾患患者における食事自立に関連するNM scaleの下位項目の検討とcut-off値を算出することを目的とした.
【方法】対象は2022年1月から2023年10月に当院医療療養病棟と障害者病棟に入院しリハビリテーションが処方された内部疾患患者220人とした.評価項目は,年齢,性別,要介護度,診断名,チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index;以下,CCI),障害高齢者の日常生活自立度,体格指数(Body Mass Index;以下,BMI),右足下腿周径,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;以下,FIM),NM scale,改訂長谷川式簡易知能スケール(以下,HDS-R),Cognitive Test for Severe Dementia(以下,CTSD),認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Disturbance scale13;以下,DBD13)とし,入棟後1週間以内に評価した.FIM食事項目が6点以上を食事自立群,5点以下を非自立群とした.統計解析は,食事自立群と非自立群の比較をMann Whitney検定とχ2検定にて行った.食事自立の可否を従属変数,NM scale下位項目を独立変数としたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を実施し,選択された独立変数についてReceiver Operating Characteristic curve(以下,ROC)曲線からArea Under the Curve(以下,AUC)と感度,特異度を算出した.また,多変量ROC曲線を描出し,AUCと感度,特異度を算出した.統計解析はフリー統計ソフトEZR ver1.55を用い,有意水準は5%とした.本研究は越谷誠和病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号08).参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】対象者(年齢84.1±8.1歳,男性102人,女性118人)のうち食事自立群は50人,非自立群は170人であった.食事自立群と非自立群の比較では,年齢と性別,DBD13に有意差はないが,食事自立群は有意に障害高齢者の日常生活自立度とBMI,下腿周径,NM scale,HDS-R,CTSDが高く,要介護度が低かった.ロジスティック回帰分析の結果,「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」が選択された.ROC曲線の結果,「家事・身辺整理」はcut-off値が3.0点(AUC:0.86,感度86%,特異度76%),「記銘・記憶」はcut-off値が7.0点(AUC:0.87,感度66%,特異度90%)であった.「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」の多変量ROC曲線の結果,AUCは0.90,感度92%,特異度75%であった.
【考察】慢性期病棟入院中の内部疾患患者において食事動作に影響を与える因子として,言語機能と意欲,見当識が与える影響が少ないことが推測された.認知尺度よりも観察尺度であるNM scaleを用いて食事動作自立の可否を予測することが有効であると考えられた.
【方法】対象は2022年1月から2023年10月に当院医療療養病棟と障害者病棟に入院しリハビリテーションが処方された内部疾患患者220人とした.評価項目は,年齢,性別,要介護度,診断名,チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index;以下,CCI),障害高齢者の日常生活自立度,体格指数(Body Mass Index;以下,BMI),右足下腿周径,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;以下,FIM),NM scale,改訂長谷川式簡易知能スケール(以下,HDS-R),Cognitive Test for Severe Dementia(以下,CTSD),認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Disturbance scale13;以下,DBD13)とし,入棟後1週間以内に評価した.FIM食事項目が6点以上を食事自立群,5点以下を非自立群とした.統計解析は,食事自立群と非自立群の比較をMann Whitney検定とχ2検定にて行った.食事自立の可否を従属変数,NM scale下位項目を独立変数としたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を実施し,選択された独立変数についてReceiver Operating Characteristic curve(以下,ROC)曲線からArea Under the Curve(以下,AUC)と感度,特異度を算出した.また,多変量ROC曲線を描出し,AUCと感度,特異度を算出した.統計解析はフリー統計ソフトEZR ver1.55を用い,有意水準は5%とした.本研究は越谷誠和病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号08).参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】対象者(年齢84.1±8.1歳,男性102人,女性118人)のうち食事自立群は50人,非自立群は170人であった.食事自立群と非自立群の比較では,年齢と性別,DBD13に有意差はないが,食事自立群は有意に障害高齢者の日常生活自立度とBMI,下腿周径,NM scale,HDS-R,CTSDが高く,要介護度が低かった.ロジスティック回帰分析の結果,「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」が選択された.ROC曲線の結果,「家事・身辺整理」はcut-off値が3.0点(AUC:0.86,感度86%,特異度76%),「記銘・記憶」はcut-off値が7.0点(AUC:0.87,感度66%,特異度90%)であった.「家事・身辺整理」と「記銘・記憶」の多変量ROC曲線の結果,AUCは0.90,感度92%,特異度75%であった.
【考察】慢性期病棟入院中の内部疾患患者において食事動作に影響を与える因子として,言語機能と意欲,見当識が与える影響が少ないことが推測された.認知尺度よりも観察尺度であるNM scaleを用いて食事動作自立の可否を予測することが有効であると考えられた.