[PJ-5-2] 介護老人保健施設で利用者間のコミュニティを作ることの意義
能動的な生活習慣を構築するには
【序論と目的】介護老人保健施設(以下,老健)は在宅復帰を目指す施設として位置づけされているが,利用者の平均在所日数は309.7日(厚生労働省,2023)と,長期にわたり施設で生活を送っている.そのため,作業療法士は,老健の生活の中で,利用者同士の繋がりやその人らしい生活習慣を再構築し,生活機能を維持,向上することが必要と考える.そこで本研究では,長期入所の事例を通じて,利用者同士の繋がりに着目し,能動的な生活習慣を構築,継続することができた理由を検討する.なお,本人とその家族,施設長に報告の同意を得ている.
【事例情報】Aさんは90歳代の男性である.要介護度は2,アルツハイマー型認知症の診断がある.趣味はなく,農家を営んでいたため,仕事中心の生活だった.娘夫婦の支援を受けながら独居生活を送っていたが,X−3年に身体機能と認知機能の低下を認め,X年に老健へ入所した.そして,X+1年に作業療法が開始された.家族は農業が忙しいことや,自宅で転倒を繰り返していたことから在宅復帰は困難で,入所の継続を希望した.
【作業療法評価と計画】初期評価(X+1年)は,Mini-Mental State Examinaton(以下,MMSE)は27/30点であった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は104/126点で,排泄時に汚染の有無を確認する必要があった.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は67/96点で,作業への動機づけとパターンに問題があった.入所前は,農業中心の生活で,老健ではやりたいと思える作業や役割がなく,臥床中心の生活を過ごしていた.Aさんからは「話し相手が欲しい」,「自分の健康は自分で管理するべきであることは理解している」と語りがあった.そこで作業療法では,短期目標(3ヶ月)を集団体操に参加して他者交流の機会を増やすこと,中期目標(6ヵ月)を週に1回,約40分間の集団体操に継続して参加すること,長期目標(12ヶ月)を活動的な生活習慣を構築することとし,週2回の頻度で約20分間の屋外歩行や園芸活動を実施しながら,他者交流と集団体操への参加を促進した.
【経過と結果】第Ⅰ期:集団体操に継続して参加したことで,他者交流の機会が増えた.それに伴い,他の利用者と一緒に散歩に行きたいと希望するようになったり,作業療法の時間以外にも他者交流を図るようになった.介入6ヶ月後のMOHOSTは71/96点で,作業への動機づけとパターン,コミュ二ケーションと交流技能(以下,C&I)が改善した.第Ⅱ期:Aさんから「一日のなかでもっと運動する機会がほしい」との語りがあったため,自主トレーニング(以下,自主トレ)を提案した.その際,集団体操に意欲的に参加している他の利用者らにも自主トレの参加を呼びかけ,利用者間で「自主トレコミュニティ」を作った.Aさんと他の利用者らは,互いに声を掛け合い,自主トレチェック表で毎日の達成度を確認しながら,継続的に取り組んだ.介入12ヶ月後のMOHOSTは81/96点で,作業への動機づけとパターン,C&Iがさらに改善し,環境の作業要求も改善した.MMSEは23/30点と認知機能の低下を認めたが,FIMは104/126点と維持することができた.自主トレコミュニティへの参加がきっかけとなり,作業療法士が直接に関わらない時間においても能動的な生活習慣を構築し,継続することができた.
【考察】老健で能動的な生活習慣を構築するためには,クライアント(以下,CL)が利用者間のコミュニティに属することや,CLの興味や価値に基づいた新しいコミュニティを作ることが有益である.さらに作業に従事し続けられる環境づくり(例:自主トレチェック表)が生活習慣を維持することにつながっていくと考える.
【事例情報】Aさんは90歳代の男性である.要介護度は2,アルツハイマー型認知症の診断がある.趣味はなく,農家を営んでいたため,仕事中心の生活だった.娘夫婦の支援を受けながら独居生活を送っていたが,X−3年に身体機能と認知機能の低下を認め,X年に老健へ入所した.そして,X+1年に作業療法が開始された.家族は農業が忙しいことや,自宅で転倒を繰り返していたことから在宅復帰は困難で,入所の継続を希望した.
【作業療法評価と計画】初期評価(X+1年)は,Mini-Mental State Examinaton(以下,MMSE)は27/30点であった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は104/126点で,排泄時に汚染の有無を確認する必要があった.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は67/96点で,作業への動機づけとパターンに問題があった.入所前は,農業中心の生活で,老健ではやりたいと思える作業や役割がなく,臥床中心の生活を過ごしていた.Aさんからは「話し相手が欲しい」,「自分の健康は自分で管理するべきであることは理解している」と語りがあった.そこで作業療法では,短期目標(3ヶ月)を集団体操に参加して他者交流の機会を増やすこと,中期目標(6ヵ月)を週に1回,約40分間の集団体操に継続して参加すること,長期目標(12ヶ月)を活動的な生活習慣を構築することとし,週2回の頻度で約20分間の屋外歩行や園芸活動を実施しながら,他者交流と集団体操への参加を促進した.
【経過と結果】第Ⅰ期:集団体操に継続して参加したことで,他者交流の機会が増えた.それに伴い,他の利用者と一緒に散歩に行きたいと希望するようになったり,作業療法の時間以外にも他者交流を図るようになった.介入6ヶ月後のMOHOSTは71/96点で,作業への動機づけとパターン,コミュ二ケーションと交流技能(以下,C&I)が改善した.第Ⅱ期:Aさんから「一日のなかでもっと運動する機会がほしい」との語りがあったため,自主トレーニング(以下,自主トレ)を提案した.その際,集団体操に意欲的に参加している他の利用者らにも自主トレの参加を呼びかけ,利用者間で「自主トレコミュニティ」を作った.Aさんと他の利用者らは,互いに声を掛け合い,自主トレチェック表で毎日の達成度を確認しながら,継続的に取り組んだ.介入12ヶ月後のMOHOSTは81/96点で,作業への動機づけとパターン,C&Iがさらに改善し,環境の作業要求も改善した.MMSEは23/30点と認知機能の低下を認めたが,FIMは104/126点と維持することができた.自主トレコミュニティへの参加がきっかけとなり,作業療法士が直接に関わらない時間においても能動的な生活習慣を構築し,継続することができた.
【考察】老健で能動的な生活習慣を構築するためには,クライアント(以下,CL)が利用者間のコミュニティに属することや,CLの興味や価値に基づいた新しいコミュニティを作ることが有益である.さらに作業に従事し続けられる環境づくり(例:自主トレチェック表)が生活習慣を維持することにつながっていくと考える.