第58回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-6] ポスター:高齢期 6

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PJ-6-1] 通所リハビリテーションにおける精神機能に焦点をあてた作業療法の現状—文献レビューを通してー

二村 元気1,2, 小林 法一3 (1.医療法人社団三雍会古賀整形外科, 2.東京都立大学大学院人間健康科学研究科 客員研究員, 3.東京都立大学大学院人間健康科学研究科)

【はじめに】介護保険下における通所リハビリテーション(以下通所リハ)では,心身機能を改善することを目的とした機能回復訓練に偏りがちであることが指摘されている.しかし,厚生労働省の調査からその内訳をみると実施されている訓練のほとんどが身体機能面に関するものであり,精神機能面に関する訓練の詳細は明らかにされていない.そこで通所リハにおける事例報告の文献調査を実施し,精神機能面に焦点を当てた支援を実施した事例報告を抽出・分析し,その特徴を明らかにすることとした.
【方法】PRISMA声明を参考に,医学中央雑誌ver.5とCiNiiを用いて,「通所リハ」「作業療法」「事例or症例」のキーワードで,介護保険法の施行された2000年以降を期間として文献検索を実施した.(2023年12月20日13時)除外基準は,①解説や会議録,②作業療法士による介入でないもの,③介護保険下での通所リハ以外で介入されたものとした.次に内容を吟味し,精神機能面に焦点を当てた支援に関する記述が明らかでないものを除外し,本調査の目的に合致する論文の抽出を行った.最終的に抽出された文献は,「文献情報」「対象者の基本情報(対象者の性別,年齢,主疾患」「精神機能面に焦点を当てた作業療法支援の詳細」にまとめ,アブストラクトテーブルを作成した.また,「作業療法支援の詳細」から「プログラム内容」と「成果」を抽出しラベルを作成した.ラベルの分析は,「プログラム内容」は「作業療法白書2021」の作業療法の手段,「成果」はICFの構成要素に振り分けその傾向を見た.
【結果】文献検索の結果,合計196論文が抽出された.そのうち,27論文を重複のため,150論文を除外基準のため除外し19論文が分析対象となった.この19論文をアブストラクトフォームに整理し,分析を行った結果, 「プログラム内容」は,「相談・指導・調整」が9件,「基本的動作訓練(生活に関連する作業を用いない訓練)」・「各種作業活動—身体運動活動など」が4件,「各種作業活動—日常生活活動」・「各種作業活動—創作・芸術活動」が3件,「各種作業活動—園芸」が2件,「各種作業活動—仕事・学習活動」・「その他」が1件であった.「成果」は,「活力と情動の機能」が11件,「情動機能」が4件,「その他」が3件,「言語に関する精神機能」が2件,「見当識機能」・「知的機能」・「気質と人格の機能」・「睡眠機能」・「知覚機能」・「高次認知機能」・「計算機能」・「自己と時間の経験の機能」が1件であった.
【考察】分析の結果から,精神機能面に焦点を当てた支援に関する記述のある事例報告は少ないことが分かった.プログラム内容は「相談・指導・調整」が最も多く,またその成果として「活力と情動の機能」をあげる報告が多かった.このことから,介護保険下における通所リハにおいては,対象者の活動や参加を促すために物理的環境や社会的環境の調整を行う支援を行い,対象者の意欲や動機づけの改善を成果とする傾向にあることが分かった.一方で,成果に関しては,ほとんどの報告が観察や対象者の発言などの非構成的評価記述を用いており,通所リハにおいて対象者の精神機能面の変化を示すための適切なOutcome指標がないことも示唆された.そのため,実際は精神機能面に焦点を当てた支援が行われているにも関わらず,事例報告に記述されていない可能性も考えられる.今後,ICFにおける「活力と情動の機能」に関する適切なOutcome指標が開発されることで,精神機能面に焦点を当てた支援の報告が増加することが期待されるであろう.