第58回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-6] ポスター:高齢期 6

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PJ-6-7] 認知症の人の視点を重視した社会参加に関する作業療法の実践

地域で実践する作業療法士へのインタビュー調査から

池田 保1, 田島 明子2 (1.北海道リハビリテーション大学校 作業療法学科, 2.湘南医療大学 保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】認知症の人の支援として,国は新オレンジプランと認知症施策推進大綱を制定した.これらは,認知症の人の視点に立って,住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らす社会が目指されている.この政策のポイントは,認知症の人の当事者視点に立つことと認知症の人の社会参加の促進にあり,予防と共生が必要と言われている.作業療法でも,認知症の人を地域で支えるための支援の必要性が求められている(香山,2016)が,認知症の人のニーズや意思の把握が難しく,認知症の人が社会参加するための支援方法は体系化されていない.そこで,本研究では,認知症の人が望む社会参加に必要な支援について作業療法ではどのような支援が行えるのかを明らかにし,支援方法の体系化を図ることとした.
【対象と方法】対象:対象は,認知症の人の社会参加に繋がる実践を論文や学会で報告している作業療法士とした.認知症の人の家族支援など,認知症の人を対象としていない場合は除外した.経験年数は5年以上とし,6名の作業療法士にインタビューを実施した.方法:インタビューは,インタビューガイドを作成し,半構造化インタビューを行った.インタビュー終了後に逐語録を作成し,SCAT(Steps for Coding and Theorization)にて分析を行なった.SCATは,インタビューなどの言語データを4つのステップで分析,解釈する方法で構成概念を作成する.作成した構成概念を紡いでストーリーラインを記述し,そこから理論を記述する分析手法である(大谷,2011).本研究は,SCATの手法に沿って構成概念から理論記述を作成した後,認知症の人の社会参加に関する作業療法の実践プロトコルを作成した.本研究は,所属機関倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:21063).
【結果】分析の結果,85個の構成概念が生成された.その中で,認知症の人の社会参加に関する作業療法の支援の構成概念は31個であった.例えば,「活動で生じた問題を認知症の人の意見で解決」「地域のニーズに対応する活動」「認知症の人や地域の人に馴染みのある場の活用」「支援する・される関係ではなく一緒の仲間という水平の関係を構築」などだった.これらの構成概念を用いて作業療法における「目標設定」「プログラム立案」「プログラム実施」のアセスメントに沿って支援内容を体系化した.支援のポイントとして,プログラムを立案する時点で認知症の人も交えて考えることや馴染みのある場所,分け隔てなく関われる環境を設定していた.また,地域貢献や地域のニーズに沿った活動など地域性を活かした活動を地域の人と一緒に行っていたことが特徴的であった.
【考察】本研究で作成したプロトコルにより認知症の人の社会参加の支援には,認知症の人個人の評価と共に地域の困りごとや地元の産業を評価することが重要であった.すなわち,地域の社会資源の有無や適応のみを考えていくのではなく,地域の人との繋がりや結びつきが持てる作業的関わりが認知症の人の社会参加には必要であると言える.したがって,認知症の人と地域の人,両者の困りごとを補完し合える活動を地域の人と一緒に行えるように考えていく必要がある.竹原(2022)は,「認知症の人を受け入れる社会の素地を創ること,すなわち認知症の人が安心して生活できる社会に変えることが必要(竹原,2022)」と述べており,本研究により作業療法の関わりで認知症の人と地域を繋ぐ支援を推進していければと考えられた.また,認知症の初期段階から認知症の人が望む生活を可能限り叶えられる介入が可能であることが示唆された.