第58回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-7] ポスター:高齢期 7

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PJ-7-3] 回復期リハビリテーション病棟入院中の認知症患者の転倒が自宅退院に及ぼす影響

石井 一樹1, 打田 博行1, 平尾 一樹2 (1.倉敷平成病院, 2.群馬大学大学院保健学研究科)

【はじめに】現在, 高齢者の増加に伴い認知症患者の増加を認めており, 回復期リハビリ病棟(回リハ)でも増加傾向にある. そのような中で認知症患者の自宅退院の促進は重要になる. 先行研究では多くの高齢者が自宅に帰りたいことを示している. また, 施設の入所は保険負担の増加を引き起こす可能性があると示唆されている. さらに, 介護施設ではプライバシー, 自律性, 尊厳の欠如とともに, 他社との関係づくりの困難さや無力感, 孤独感を助長されると言われている. そのため, 認知症患者の自宅退院を促進する要因を特定する必要がある. 様々な要因がある中で転倒も自宅退院を困難にする要因であると考える. 転倒は入院患者において一般的であり, 骨折等の問題を引き起こす可能性がある. その結果, 自宅退院が困難になる可能性がある. そこで認知症患者の転倒と転帰先の因果関係を明らかにすることを目的にした. 本研究の仮説は認知症患者の入院中の転倒は自宅退院を困難にする可能性があるとした.
【対象】2017年~2019年に当院回リハに入院した認知症患者のうち, 入院前に在宅で生活していた患者とした. 回リハ入院中に急性期病院に転院した患者, 入院中に死亡した患者を除外した493例(女性313例, 男性180例, 入院時平均年齢(標準偏差)83.76±7.40であった. 本研究は倫理審査委員会によって承認され個人情報の取り扱いには十分留意して実施された.
【方法】本研究は過去の医療データを使用した後ろ向きコホート研究である. 回リハ入院時に共変量, 独立変数として回リハ入院中の転倒の有無, 従属変数として回リハ退院時に転帰先の情報(自宅かそれ以外か)を取得し, ロジスティック回帰分析の単変量解析にて転倒の有無と自宅退院の関係を単純比較多変量解析にて共変量を考慮し転倒の有無と自宅退院の関係を比較した. ORと95%CIを報告する. 優位水準は両側検定でP<0.05とした. 解析ソフトはRを使用した.
【結果】単変量解析(未調整OR)では転倒なしと比較して転倒ありで転帰先に有意差を認めた(OR:0.6,95%CI:0.4~0.92). 多変量解析(調整済みOR)では転倒なしと比較して転倒ありで転帰先に有意差は認めなかった(OR:0.64,95%CI:0.39~1.05). この結果より転倒の有無と転帰先は有意に関連していないことが分かった.
【考察】今回の結果では認知症患者における回リハ入院中の転倒の有無は転帰先に有意な関連はないことが示唆された. この理由として病棟の違いが結果に影響を与える可能性があると考えられる. 先行研究より急性期病棟では転倒によって自宅退院を困難にすること, 回リハでの転倒は自宅退院と関係しないと報告がある. これらの報告に加えて, 転倒での怪我の多くは比較的軽度だが, 虚弱で機能的予備能力が乏しいと重大な機能障害につながる可能性があるということを示した先行研究の結果を考慮すると, 比較的身体機能が保たれている回リハの認知症患者の転倒は自宅退院に影響を及ぼさなかった可能性がある. 今後は急性期病棟の認知症患者を対象に転倒と自宅退院の関係を調査する必要があるかもしれない.