[PJ-7-7] スヌーズレンが認知症高齢者に及ぼす効果
スヌーズレンルームと居住空間における実施の比較
はじめに 筆者らは,特別養護老人ホームの認知症高齢者を対象にスヌーズレンを行い,認知症の行動心理症状 (BPSD)の軽減や意味のある作業の効果を検証してきた.そして介護職員にも利用者とスヌーズレンを経験してもらい,居住空間における応用や環境を含めた課題を明らかにした.BPSDの一つの原因は感覚均衡のアンバランスによると言われており(Kovach2000),それを解決する手段の一つに,スヌーズレンルーム(ルーム)がある.そこでは適切な感覚刺激と意味のある作業(Cohen-Mansfield et.al2015,Jakob & Collier2017)を提供することが可能である.そこで今回,ルームと同様に実際の居住空間でも機器を持ち運び環境調整することで効果が得られるかどうかを検証することとした.その結果,同様の効果に加え,全体にも良い影響をもたらしたため報告する.
方法 対象は80歳代の重度認知症の女性である.週1−2回で合計12回(ルームは1~8回,居住空間は9~12回)実施した.1回は約30分であった.開始前に日本版感覚プロファイル短縮版(SSP)を測定した.認知症行動障害尺度(DBD13)を開始前,8,12回の終了時に測定した.1,8,9,12回に意志質問紙(VQ)を測定し,作業遂行前,遂行中,遂行後の各々20分間を録画した.録画評価には重度認知症者のwell-beingを測定するPositive Response Schedule(PRS)(Perrin,1997)を用いた.PRSは従事要素と感情要素合計10項目からなり,感情要素FearはAngerに修正し,測定単位を20秒から10秒に修正した.結果はグラフ化し,χ二乗検定を行った.録画は2名の研究者でチェックした.居住空間にはルームの可動式バブルチューブ,アロマディフィ—ザー,プロジェクターを持ち運び,感覚刺激の調整を行った.この環境下で本人が好む歌手の動画鑑賞を行った.研究実施にあたり利用者家族に同意を得ている.
結果 開始前のSSPは139点7項目中6項目で非常に高かった.DBD13は20,16,14点と変化した.VQは36,46,47,47点と変化した.録画チェックの一致率は作業遂行前89.6%,遂行中96.5%,遂行後85.9%であった.不一致は第2著者が再判定した.その結果,1)遂行前と遂行中の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素と感情要素Happyが有意に増加した.ルームの1回と居住空間の12回は感情要素Angerが有意に減少した.2)遂行中と遂行後の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素と感情要素Happyが有意に減少した.3)遂行前と遂行後の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素が有意に増加した.ルームの1回と居住空間の12回は感情要素Angerが有意に減少した.4)遂行中の比較では,ルームは従事要素と感情要素Happyが有意に増加した.居住空間は従事要素に差はなかったが,感情要素Happyが有意に増加した.尚,居住空間では他利用者と介護職員も一緒に楽しんで鑑賞することが可能になった.介護職員から,居住空間での作業の継続と他の作業活動を行いたいとの希望があった.
考察 結果から,ルーム,機器を持ち運んだ居住空間のどちらも従事要素の増加,感情要素Happyの増加,感情要素Angerの減少が見られた.これらより,居住空間に機器を持ち運び多重的な感覚刺激を調整することで,他の利用者とも一緒に作業に参加できるようになり,介護職員もBPSD解決の糸口を見出すことにつながったと考えられる.このように,作業療法士が施設生活のwell-beingに寄与する環境調整と作業提供のマネジメントの役割を果たし,認知症ケアモデルの確立に重要な職種であることが示唆された.
方法 対象は80歳代の重度認知症の女性である.週1−2回で合計12回(ルームは1~8回,居住空間は9~12回)実施した.1回は約30分であった.開始前に日本版感覚プロファイル短縮版(SSP)を測定した.認知症行動障害尺度(DBD13)を開始前,8,12回の終了時に測定した.1,8,9,12回に意志質問紙(VQ)を測定し,作業遂行前,遂行中,遂行後の各々20分間を録画した.録画評価には重度認知症者のwell-beingを測定するPositive Response Schedule(PRS)(Perrin,1997)を用いた.PRSは従事要素と感情要素合計10項目からなり,感情要素FearはAngerに修正し,測定単位を20秒から10秒に修正した.結果はグラフ化し,χ二乗検定を行った.録画は2名の研究者でチェックした.居住空間にはルームの可動式バブルチューブ,アロマディフィ—ザー,プロジェクターを持ち運び,感覚刺激の調整を行った.この環境下で本人が好む歌手の動画鑑賞を行った.研究実施にあたり利用者家族に同意を得ている.
結果 開始前のSSPは139点7項目中6項目で非常に高かった.DBD13は20,16,14点と変化した.VQは36,46,47,47点と変化した.録画チェックの一致率は作業遂行前89.6%,遂行中96.5%,遂行後85.9%であった.不一致は第2著者が再判定した.その結果,1)遂行前と遂行中の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素と感情要素Happyが有意に増加した.ルームの1回と居住空間の12回は感情要素Angerが有意に減少した.2)遂行中と遂行後の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素と感情要素Happyが有意に減少した.3)遂行前と遂行後の比較では,ルーム,居住空間とも従事要素が有意に増加した.ルームの1回と居住空間の12回は感情要素Angerが有意に減少した.4)遂行中の比較では,ルームは従事要素と感情要素Happyが有意に増加した.居住空間は従事要素に差はなかったが,感情要素Happyが有意に増加した.尚,居住空間では他利用者と介護職員も一緒に楽しんで鑑賞することが可能になった.介護職員から,居住空間での作業の継続と他の作業活動を行いたいとの希望があった.
考察 結果から,ルーム,機器を持ち運んだ居住空間のどちらも従事要素の増加,感情要素Happyの増加,感情要素Angerの減少が見られた.これらより,居住空間に機器を持ち運び多重的な感覚刺激を調整することで,他の利用者とも一緒に作業に参加できるようになり,介護職員もBPSD解決の糸口を見出すことにつながったと考えられる.このように,作業療法士が施設生活のwell-beingに寄与する環境調整と作業提供のマネジメントの役割を果たし,認知症ケアモデルの確立に重要な職種であることが示唆された.