[PJ-8-1] 園芸療法によって認知症患者の意欲は向上するか
【はじめに・目的】
認知症のある患者は能力の問題によって様々な作業への参加が難しくなり意欲低下をもたらす.特に入院中はその環境の影響により,作業剥奪が進むことでさらに意欲の低下が引き起こされる.一方で多くの高齢者にとって園芸は馴染みが多い作業であり,自然に接することや成長を楽しむこと等,心理的に良い効果があることが言われている.これらの背景から,認知症のある患者が園芸療法を行うことは意欲の向上に寄与するのでないかと考えた.そこで本研究の目的は,認知症疾患医療センター入院中の患者に対して,園芸療法が意欲の向上をもたらすのかどうか検証することとした.本研究の実施前に,倫理的な手続きとして,院長から研究実施の承認を得た.そして,全ての対象者の家族に説明書及び同意書を郵送し,同意を得て研究を行った.
【方法】
研究期間は令和5年5月1日から6月30日の2か月間であった.対象者はMini-Mental State Examination(以下MMSE) 2~23点で性別,年齢,疾患,園芸経験問わず30名を選出し,実施群20名,非実施群10名とした.対象者は無作為に抽出し振り分けた.実施群は各5名で屋内,屋外にそれぞれ分けて集団にて行った.屋内で行った対象者はベッド上ギャッジアップ座位で参加する対象者も含まれた.実施頻度は20~30分間を週2回,屋上,作業療法室または病棟内にて実施した.園芸療法プログラムは①挨拶(日付確認,自己紹介) ②前回の振り返り ③園芸活動の実施(水やりや手入れ) ④終わりの挨拶・次回予告という固定化した流れで行った.栽培する植物はミニトマト,朝顔,ミニひまわりとした.効果判定意欲の指標(Vitality Index:以下VI)を1か月毎に初回・中間・最終として評価した.データの分析として,園芸の実施群と非実施群の2群に分け,繰り返しのある二元配置分散分析を用いて解析を行い,有意水準は5%とした.
【結果】
期間中に体調不良による参加困難者や服薬調整により精神・身体面に変動があった者は除外した.終了時,実施群14名(男性4名,女性10名.平均年齢80.6±5.7歳),非実施群7名(男性1名,女性6名.平均年齢84.6±11.1歳)合計21名を対象に解析した.実施群開始前のMMSEの平均値12.2±5.4点,非実施群開始前の平均値11.1±7.2点であり,有意な差は認められなかった.VIの実施群開始前の平均値6.92±1.86点から開始後は7.42±1.8点となった.非実施群開始前の平均値は,5.57±2.38点から開始後4.17±2.71点となった.分散分析の結果から,2群間で有意な交互作用が認められ,園芸療法実施群は非実施群に比べ意欲の向上が認められた(F=6.569,p=0.019).
【考察】
今回の結果から,園芸に参加した患者はしていない患者に比べると意欲が高まることが確認できた.園芸療法の効果として,継続的な世話を役割としたことが成長への期待感や日々成長変化する植物に対する情動をもたらし,自ら水やりするなどの自発性や意欲を引き出す効果があることが言われている(増谷他,2013).認知症により意欲の低下や環境変化から不安感や孤独感を感じやすく,さらに入院生活中の最低限の活動量は意欲や気力の低下を招いてしまうと推察される.今回普段の集団活動や個別リハビリに加えて園芸療法を実施したことは意欲が向上する要因になったと考えられる.今後は,園芸活動の内容を検討・活動中の様子を分析する等し,効果的な実施方法を考案していくことが必要である.
認知症のある患者は能力の問題によって様々な作業への参加が難しくなり意欲低下をもたらす.特に入院中はその環境の影響により,作業剥奪が進むことでさらに意欲の低下が引き起こされる.一方で多くの高齢者にとって園芸は馴染みが多い作業であり,自然に接することや成長を楽しむこと等,心理的に良い効果があることが言われている.これらの背景から,認知症のある患者が園芸療法を行うことは意欲の向上に寄与するのでないかと考えた.そこで本研究の目的は,認知症疾患医療センター入院中の患者に対して,園芸療法が意欲の向上をもたらすのかどうか検証することとした.本研究の実施前に,倫理的な手続きとして,院長から研究実施の承認を得た.そして,全ての対象者の家族に説明書及び同意書を郵送し,同意を得て研究を行った.
【方法】
研究期間は令和5年5月1日から6月30日の2か月間であった.対象者はMini-Mental State Examination(以下MMSE) 2~23点で性別,年齢,疾患,園芸経験問わず30名を選出し,実施群20名,非実施群10名とした.対象者は無作為に抽出し振り分けた.実施群は各5名で屋内,屋外にそれぞれ分けて集団にて行った.屋内で行った対象者はベッド上ギャッジアップ座位で参加する対象者も含まれた.実施頻度は20~30分間を週2回,屋上,作業療法室または病棟内にて実施した.園芸療法プログラムは①挨拶(日付確認,自己紹介) ②前回の振り返り ③園芸活動の実施(水やりや手入れ) ④終わりの挨拶・次回予告という固定化した流れで行った.栽培する植物はミニトマト,朝顔,ミニひまわりとした.効果判定意欲の指標(Vitality Index:以下VI)を1か月毎に初回・中間・最終として評価した.データの分析として,園芸の実施群と非実施群の2群に分け,繰り返しのある二元配置分散分析を用いて解析を行い,有意水準は5%とした.
【結果】
期間中に体調不良による参加困難者や服薬調整により精神・身体面に変動があった者は除外した.終了時,実施群14名(男性4名,女性10名.平均年齢80.6±5.7歳),非実施群7名(男性1名,女性6名.平均年齢84.6±11.1歳)合計21名を対象に解析した.実施群開始前のMMSEの平均値12.2±5.4点,非実施群開始前の平均値11.1±7.2点であり,有意な差は認められなかった.VIの実施群開始前の平均値6.92±1.86点から開始後は7.42±1.8点となった.非実施群開始前の平均値は,5.57±2.38点から開始後4.17±2.71点となった.分散分析の結果から,2群間で有意な交互作用が認められ,園芸療法実施群は非実施群に比べ意欲の向上が認められた(F=6.569,p=0.019).
【考察】
今回の結果から,園芸に参加した患者はしていない患者に比べると意欲が高まることが確認できた.園芸療法の効果として,継続的な世話を役割としたことが成長への期待感や日々成長変化する植物に対する情動をもたらし,自ら水やりするなどの自発性や意欲を引き出す効果があることが言われている(増谷他,2013).認知症により意欲の低下や環境変化から不安感や孤独感を感じやすく,さらに入院生活中の最低限の活動量は意欲や気力の低下を招いてしまうと推察される.今回普段の集団活動や個別リハビリに加えて園芸療法を実施したことは意欲が向上する要因になったと考えられる.今後は,園芸活動の内容を検討・活動中の様子を分析する等し,効果的な実施方法を考案していくことが必要である.