[PJ-8-3] 一人暮らしの重度認知症患者の長期的な自立生活を支援するIoT家電
【はじめに】
近年,世界中でインターネットが急速に普及し,生活を支えるIoT機器なくしては人間の生活が成り立たないような状況である.他方,認知症者の在宅生活を支えるツールとしてのIoT機器の普及はまだまだ発展途上にある.このような中,今回報告する症例は13年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けたにもかかわらず,要介護5となった今でも住み慣れた自宅にて独居生活を送るために有効活用できたIoTの一例に若干の考察を踏まえ報告する.なお本発表において報告すべき利益相反関係はなく,また症例本人と家族の同意も得ている.
【症例】
80歳代前半,女性.診断名はアルツハイマー型認知症であり,69歳のときに診断を受けた.
キーパーソンである息子は,3子中の第3子の次男で,症例が住む家から車で30分程度離れた所に暮らす.他の姉兄は県外に住んでいるため,家族では次男がほぼ一人で介護を行っている.症例は20年前に夫を亡くしたが,その後も自宅で生活していくことを強く希望していた.
認知症診断時は,MMSE:19/30点・FIM:100/126点にて要介護度は要支援2であった.その後,徐々に病気が進行し症状が増悪する.9年後にはMMSE:0/30点・FIM:25/126点で,ADLはほぼ全介助となり,要介護5となる.同年,精神保健福祉手帳1級に認定される.また,介護に訪れる息子を認識できなくなってから5年経つ今では,コミュニケーションもほとんど取れない.息子は毎朝1時間程度,症例が済む家にて介護し,社会福祉サービスは,毎日夕方に1時間の身体介護ヘルパーと週5回のデイサービスを利用している.13年間の自宅以外での生活は,転倒による左大腿骨頸部骨折や内臓疾患による1ヵ月程度の入院3回と2週間程度のショートステイを1度利用したのみである.
【機器の使用について】
IoT機器としては,WEBカメラ(カメラ)と腕時計型脈拍計による遠隔モニタリングと,テレビやエアコンなどはスマートリモコンによるIoT化で遠隔操作を行っている.
カメラは,認知機能が低下し電話が使えなくなったため,電話に代わるコミュニケーション手段として,また在宅時の所在位置把握として使用開始した.その後,転倒やBPSDによる不穏や問題行動の確認のために使用範囲を拡大して用いている.認知機能がさらに低下してからは,リモコンなども使えず,環境調整も自力で行えなくなってきたため,電灯やエアコンやテレビ・ラジオなどをスマートリモコンでIoT化し,照明やテレビ・ラジオのオンオフや部屋の温度調整を息子のスマートホンのアプリで遠隔操作できるようにした.
費用は,初期費用として5万円程度かかり,公的助成などは受けていない.以降,運用のための月額費用はインターネット代の5千円程度である.
【考察】
生活家電のIoT化により,キーパーソンが遠隔で状態観察を行い,環境調整を行えることは,先行報告でもあるようにキーパーソンにとって大きな安心感と共に,その都度対応せずに済むことから介護の負担を大きく抑えることが出来ている.
一方で,家電のIoT化を行うにも機材を設定し,維持や管理するためにある程度の器械操作の知識は必要であること,状態観察のためにモニタリングされる側のプライバシーの保護など課題はある.その点でこれまでの取り組みを推奨しかねることもあるが,演者としては,介護に大きな負担と感じることなく症例の希望通り住み慣れた自宅で生活できていることに,葛藤を抱えつつもよかったと感じている.
近年,世界中でインターネットが急速に普及し,生活を支えるIoT機器なくしては人間の生活が成り立たないような状況である.他方,認知症者の在宅生活を支えるツールとしてのIoT機器の普及はまだまだ発展途上にある.このような中,今回報告する症例は13年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けたにもかかわらず,要介護5となった今でも住み慣れた自宅にて独居生活を送るために有効活用できたIoTの一例に若干の考察を踏まえ報告する.なお本発表において報告すべき利益相反関係はなく,また症例本人と家族の同意も得ている.
【症例】
80歳代前半,女性.診断名はアルツハイマー型認知症であり,69歳のときに診断を受けた.
キーパーソンである息子は,3子中の第3子の次男で,症例が住む家から車で30分程度離れた所に暮らす.他の姉兄は県外に住んでいるため,家族では次男がほぼ一人で介護を行っている.症例は20年前に夫を亡くしたが,その後も自宅で生活していくことを強く希望していた.
認知症診断時は,MMSE:19/30点・FIM:100/126点にて要介護度は要支援2であった.その後,徐々に病気が進行し症状が増悪する.9年後にはMMSE:0/30点・FIM:25/126点で,ADLはほぼ全介助となり,要介護5となる.同年,精神保健福祉手帳1級に認定される.また,介護に訪れる息子を認識できなくなってから5年経つ今では,コミュニケーションもほとんど取れない.息子は毎朝1時間程度,症例が済む家にて介護し,社会福祉サービスは,毎日夕方に1時間の身体介護ヘルパーと週5回のデイサービスを利用している.13年間の自宅以外での生活は,転倒による左大腿骨頸部骨折や内臓疾患による1ヵ月程度の入院3回と2週間程度のショートステイを1度利用したのみである.
【機器の使用について】
IoT機器としては,WEBカメラ(カメラ)と腕時計型脈拍計による遠隔モニタリングと,テレビやエアコンなどはスマートリモコンによるIoT化で遠隔操作を行っている.
カメラは,認知機能が低下し電話が使えなくなったため,電話に代わるコミュニケーション手段として,また在宅時の所在位置把握として使用開始した.その後,転倒やBPSDによる不穏や問題行動の確認のために使用範囲を拡大して用いている.認知機能がさらに低下してからは,リモコンなども使えず,環境調整も自力で行えなくなってきたため,電灯やエアコンやテレビ・ラジオなどをスマートリモコンでIoT化し,照明やテレビ・ラジオのオンオフや部屋の温度調整を息子のスマートホンのアプリで遠隔操作できるようにした.
費用は,初期費用として5万円程度かかり,公的助成などは受けていない.以降,運用のための月額費用はインターネット代の5千円程度である.
【考察】
生活家電のIoT化により,キーパーソンが遠隔で状態観察を行い,環境調整を行えることは,先行報告でもあるようにキーパーソンにとって大きな安心感と共に,その都度対応せずに済むことから介護の負担を大きく抑えることが出来ている.
一方で,家電のIoT化を行うにも機材を設定し,維持や管理するためにある程度の器械操作の知識は必要であること,状態観察のためにモニタリングされる側のプライバシーの保護など課題はある.その点でこれまでの取り組みを推奨しかねることもあるが,演者としては,介護に大きな負担と感じることなく症例の希望通り住み慣れた自宅で生活できていることに,葛藤を抱えつつもよかったと感じている.