[PJ-8-6] 在宅の要介護者の生活を考える
特殊寝台の利用からみた実態と改善の提案
【はじめに】長期臥床による廃用症候群や生活不活発等による心身機能の低下,活動・参加の制限・制約は大きな課題であり,その原因や解決に関する作業療法的なアプローチは数多くの報告がある.われわれは,「長期臥床」を「長い期間の臥床」と「(1日のうち)長い時間の臥床」に分けて検討する必要があると考えているが,医中誌で「長い時間の臥床」をキーワードに最近5年間で検索すると3件の検索が得られるが,いずれも要介護者の弊害に関するものではなかった.一方,厚生労働省は,Ohayonらのデータを示し,「高齢者には8時間以内のベッド上生活」を推奨しているが,医中誌で「日本人・ベッド上」をキーワードに検索した結果は0件であった.
【目的】本研究では,我が国の要介護者が1日のうち「何時間をベッド上で過ごし(在床時間)」,「何時間の睡眠をとっているのか(睡眠時間)」を調査すること,本来はベッドを離れて過ごすべき時間とその生活について提案することを目的とする.
【方法】介護保険で福祉用具貸与のうち特殊寝台(付属品を含む)を利用する要介護者に,パラマウントベッド社製測定器「NN-1920R」を設置し,在床時間,離床回数,睡眠時間の1週間のデータを回収し,1日の生活時間を算出した.その他,利用者と家族に福祉用具専門相談員が貸与開始時に起居動作やADL動作における課題と疾患等の基礎的な情報,1週間後に特殊寝台導入効果のヒアリング調査を行った.得られたデータは,それぞれの平均値や基礎的な情報を介護度別やBarthel Index(BI)等に対応させて整理して,我が国の要介護者の在床時間・離床時間等の特徴と離床時間を確保するための方策等から活動や参加に結び付けられるような作業療法の提言を検討・考察した.
【倫理的配慮】
日本医療科学大学の研究倫理委員会で研究計画の承認を得た(受付番号:2022015)
【結果】369名(男性157名,女性212名,平均年齢83.2±10.5歳)のデータを回収した.平均在床時間は15.3±5.3時間,睡眠時間は10.9時間±4.0時間であった.介護度別では,要介護1から要介護5へと重度になるにつれて在床時間が長くなる傾向があった.また,BIのスコアの高いものから低くなるにつれて在床時間が長くなる傾向があった.
【考察】今回の調査から,我が国の要介護者は,Ohayonらの報告よりも在床時間,睡眠時間がともに多く,在床時間と睡眠時間の差も大きかった.このことは,厚生労働省が指摘するように,日本では定年後は子育て後等の要因が影響し,その人の役割がなくなることで,無為無作為に過ごす時間が多いことを示唆している.医中誌で「高齢者,役割喪失」をキーワードにすると24件を検索することができるが,社会的関係性が希薄化するなど負の影響の報告の一方で,作業療法士の報告では「意味のある作業」や「役割の再獲得」を支援することでよりよい生活を送ることができる報告を見ることができる.我々の調査から新村らは,特殊寝台の利活用が本人の動作の痛みや負担を軽減し,介護者の負担も軽減できることで離床しやすくなることを報告したが,これは,特殊寝台の利活用を促す,つまり環境因子を促通因子とすることで在床時間を短縮する可能性はあるが,離床後につながる活動と参加に資する動機づけが必要であることも示唆している.今後は,特殊寝台だけではなく,福祉用具等の利活用による環境因子の促通から活動と参加に如何につなげることができるのかという視点からも効果を考えていきたい.
【目的】本研究では,我が国の要介護者が1日のうち「何時間をベッド上で過ごし(在床時間)」,「何時間の睡眠をとっているのか(睡眠時間)」を調査すること,本来はベッドを離れて過ごすべき時間とその生活について提案することを目的とする.
【方法】介護保険で福祉用具貸与のうち特殊寝台(付属品を含む)を利用する要介護者に,パラマウントベッド社製測定器「NN-1920R」を設置し,在床時間,離床回数,睡眠時間の1週間のデータを回収し,1日の生活時間を算出した.その他,利用者と家族に福祉用具専門相談員が貸与開始時に起居動作やADL動作における課題と疾患等の基礎的な情報,1週間後に特殊寝台導入効果のヒアリング調査を行った.得られたデータは,それぞれの平均値や基礎的な情報を介護度別やBarthel Index(BI)等に対応させて整理して,我が国の要介護者の在床時間・離床時間等の特徴と離床時間を確保するための方策等から活動や参加に結び付けられるような作業療法の提言を検討・考察した.
【倫理的配慮】
日本医療科学大学の研究倫理委員会で研究計画の承認を得た(受付番号:2022015)
【結果】369名(男性157名,女性212名,平均年齢83.2±10.5歳)のデータを回収した.平均在床時間は15.3±5.3時間,睡眠時間は10.9時間±4.0時間であった.介護度別では,要介護1から要介護5へと重度になるにつれて在床時間が長くなる傾向があった.また,BIのスコアの高いものから低くなるにつれて在床時間が長くなる傾向があった.
【考察】今回の調査から,我が国の要介護者は,Ohayonらの報告よりも在床時間,睡眠時間がともに多く,在床時間と睡眠時間の差も大きかった.このことは,厚生労働省が指摘するように,日本では定年後は子育て後等の要因が影響し,その人の役割がなくなることで,無為無作為に過ごす時間が多いことを示唆している.医中誌で「高齢者,役割喪失」をキーワードにすると24件を検索することができるが,社会的関係性が希薄化するなど負の影響の報告の一方で,作業療法士の報告では「意味のある作業」や「役割の再獲得」を支援することでよりよい生活を送ることができる報告を見ることができる.我々の調査から新村らは,特殊寝台の利活用が本人の動作の痛みや負担を軽減し,介護者の負担も軽減できることで離床しやすくなることを報告したが,これは,特殊寝台の利活用を促す,つまり環境因子を促通因子とすることで在床時間を短縮する可能性はあるが,離床後につながる活動と参加に資する動機づけが必要であることも示唆している.今後は,特殊寝台だけではなく,福祉用具等の利活用による環境因子の促通から活動と参加に如何につなげることができるのかという視点からも効果を考えていきたい.