[PJ-9-1] できる能力に焦点を当て,家族と一緒にリビングで食事ができることを目指した一例
【はじめに】
今回,入院が長期化し寝たきり状態で退院してきたが,サービス利用による地域の支えと家族の支えによって,能力が向上していったことで家族と一緒にリビングで食事ができるという目標の達成に向けて関わった内容をまとめたため報告する.今回の発表にあたり対象者に書面を用いて十分な説明を行い,倫理的配慮に基づき同意を得た.
【症例紹介】
80歳代男性.X年に誤嚥性肺炎にて入院.入院中に血管炎が判明し,ステロイド治療を開始.順調に回復していたが,途中で胆嚢炎を発症するなど入院期間が長期化したため寝たきり状態にて自宅退院となったためADL改善目的で訪問看護,訪問リハビリが開始となった.認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲb.寝たきり度ランクC1で起居動作は全介助レベル.端坐位は介助がなければ保持困難.筋力(MMT)は上下肢3~4レベル,体幹3レベル.膝折れなどもあり歩行困難.BIは15/100点(食事,移乗で加点)トイレは尿バルーン留置しており,排便はオムツ排泄である.サービスは週2回訪問看護(月,木),週2回訪問リハビリ(火,金),週2回デイサービス(水,土),月2回の訪問診療を利用している.自宅は一軒家で妻と2人暮らしであるが,長男嫁や本人の妹や家政婦が交代しながら毎日自宅を訪れて本人,妻を支援している.また,交友関係も広く,自宅に友人が来る機会も多い.自宅環境としては,ベッドの置いてある部屋とリビングは同じ空間であるが間に13.5㎝の高さの段差があり,妻の介助では車椅子のまま降ろすことは可能だが昇ることが困難であった.
【経過】
訓練についてはギャッジアップ機能を利用しながらの起居動作訓練から開始.ベッド端坐位での上下肢の運動や車椅子座位での運動を実施していき,離床時間を拡大.3ヶ月後にはギャッジフラットから起居自立し,移乗動作も軽介助レベルとなった.認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ,寝たきり度A1.筋力(MMT)は上下肢4~5レベル,体幹4レベルへ向上した.歩行は膝折れがなくなったものの日常生活動作に反映することは難しく,手すりや家具などの支持物と腰部と腋窩介助にて中等度介助で訓練レベルの歩行であった.課題であった13.5㎝の高さの段差については,スロープ等の環境調整も検討したが設置困難.妻の介助下での段差昇降も検討したが介助可能なレベルに到達することが困難と判断.そのため,車椅子から床に降りる動作と四つ這い移動の動作を繰り返し訓練した結果,車椅子介助でリビングへ行き,ベッドへ戻る際は四つ這いでベッドまで移動し,ベッドのL字柵支持と妻の腰部介助にて戻ることが可能となった.妻の介助でもリビングに移動できるようになったことで家族と一緒に食卓を囲むことや友人が自宅に来た際にも一緒に会話を楽しむことができるようになった.
【考察】
機能訓練やデイサービスの利用機会によって起居,移乗動作能力が向上し,妻の介助でも離床できる能力を獲得できた.リビングに移動するための一番の課題となっていた13.5㎝の段差は能力向上や福祉用具の導入でカバーすることが難しかったため,介入の中で床に降りて,四つ這い移動するという形を妻に提案できたことで行動範囲を拡大することに繋がった.その後は家族と市外への遠出や温泉への外出機会なども増えた.親族や友人の訪問も多く,その方々がリビングで過ごす機会も多いため,会話や食事の輪の中に入れることは本人によっても楽しく過ごすことができ,安心できる時間であり,外出機会の増加や家族,友人と過ごせる時間の拡大はQOL向上にも繋がったと考える.
今回,入院が長期化し寝たきり状態で退院してきたが,サービス利用による地域の支えと家族の支えによって,能力が向上していったことで家族と一緒にリビングで食事ができるという目標の達成に向けて関わった内容をまとめたため報告する.今回の発表にあたり対象者に書面を用いて十分な説明を行い,倫理的配慮に基づき同意を得た.
【症例紹介】
80歳代男性.X年に誤嚥性肺炎にて入院.入院中に血管炎が判明し,ステロイド治療を開始.順調に回復していたが,途中で胆嚢炎を発症するなど入院期間が長期化したため寝たきり状態にて自宅退院となったためADL改善目的で訪問看護,訪問リハビリが開始となった.認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲb.寝たきり度ランクC1で起居動作は全介助レベル.端坐位は介助がなければ保持困難.筋力(MMT)は上下肢3~4レベル,体幹3レベル.膝折れなどもあり歩行困難.BIは15/100点(食事,移乗で加点)トイレは尿バルーン留置しており,排便はオムツ排泄である.サービスは週2回訪問看護(月,木),週2回訪問リハビリ(火,金),週2回デイサービス(水,土),月2回の訪問診療を利用している.自宅は一軒家で妻と2人暮らしであるが,長男嫁や本人の妹や家政婦が交代しながら毎日自宅を訪れて本人,妻を支援している.また,交友関係も広く,自宅に友人が来る機会も多い.自宅環境としては,ベッドの置いてある部屋とリビングは同じ空間であるが間に13.5㎝の高さの段差があり,妻の介助では車椅子のまま降ろすことは可能だが昇ることが困難であった.
【経過】
訓練についてはギャッジアップ機能を利用しながらの起居動作訓練から開始.ベッド端坐位での上下肢の運動や車椅子座位での運動を実施していき,離床時間を拡大.3ヶ月後にはギャッジフラットから起居自立し,移乗動作も軽介助レベルとなった.認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ,寝たきり度A1.筋力(MMT)は上下肢4~5レベル,体幹4レベルへ向上した.歩行は膝折れがなくなったものの日常生活動作に反映することは難しく,手すりや家具などの支持物と腰部と腋窩介助にて中等度介助で訓練レベルの歩行であった.課題であった13.5㎝の高さの段差については,スロープ等の環境調整も検討したが設置困難.妻の介助下での段差昇降も検討したが介助可能なレベルに到達することが困難と判断.そのため,車椅子から床に降りる動作と四つ這い移動の動作を繰り返し訓練した結果,車椅子介助でリビングへ行き,ベッドへ戻る際は四つ這いでベッドまで移動し,ベッドのL字柵支持と妻の腰部介助にて戻ることが可能となった.妻の介助でもリビングに移動できるようになったことで家族と一緒に食卓を囲むことや友人が自宅に来た際にも一緒に会話を楽しむことができるようになった.
【考察】
機能訓練やデイサービスの利用機会によって起居,移乗動作能力が向上し,妻の介助でも離床できる能力を獲得できた.リビングに移動するための一番の課題となっていた13.5㎝の段差は能力向上や福祉用具の導入でカバーすることが難しかったため,介入の中で床に降りて,四つ這い移動するという形を妻に提案できたことで行動範囲を拡大することに繋がった.その後は家族と市外への遠出や温泉への外出機会なども増えた.親族や友人の訪問も多く,その方々がリビングで過ごす機会も多いため,会話や食事の輪の中に入れることは本人によっても楽しく過ごすことができ,安心できる時間であり,外出機会の増加や家族,友人と過ごせる時間の拡大はQOL向上にも繋がったと考える.