[PJ-9-3] 回復期リハビリテーション病棟で障がい高齢者の役割支援に精通した作業療法士が退院後生活の役割に焦点を当てて実践するプロセス
【はじめに】障がい高齢者の役割に関して,役割の数や行動時間が多いほど幸福感を得られる可能性(緑川学,2016)や,失った役割を複数の役割で補い自我を充実させている(竹原敦,2019)報告があり,作業療法で役割を支援する必要性が明らかにされている.しかしADL向上を図り,在宅復帰に導く(石川誠,2016)回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)において,役割に焦点を当てた支援方法は十分明らかにされていない.著者は,ADL改善が優先される病院環境との葛藤,一方で指標となる役割支援に関する方法論が少なく,特に障がい高齢者の役割支援が不十分になりやすいと実感していた.そのため,作業療法士(OTR)による障がい高齢者への役割支援は,回復期リハ病棟でどのように行われているのかという研究疑問に至った.
【目的】回復期リハ病棟で障がい高齢者の役割支援に精通したOTRが退院後生活の役割に焦点を当て,障がい高齢者の役割能力の向上や役割継続に向けた支援体制を作るために実践するプロセス(以下,実践プロセス)を明らかにし,回復期リハ病棟での作業療法における役割支援に関する示唆を得る.
【方法】障がい高齢者の役割支援に関する事例報告を発表したOTR17名を研究対象者として選定し,半構造化面接を実施した.分析はM-GTAを用いて行った.本研究は所属大学院研究倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】2つのコアカテゴリー,7つのカテゴリー,10個のサブカテゴリー,40個の概念が生成された.以下,{コアカテゴリー},[カテゴリー]を用いて実践プロセスを説明する.はじめに支援の全体像として,OTRが障がい高齢者との訓練中に働きかける{役割の自信と方略を障がいに適応させる直接的支援}と,OTRが家族などの支援者と関わる中で障がい高齢者に働きかける{病院と退院後生活に繋がりを持たせる間接的支援}があり,これらは入院時から同時進行で行われていた.次にプロセスの流れとして,OTRは入院時,障がい高齢者の意欲低下や機能回復の希望を把握し,[心身の回復感を提供する]ことから始め,身辺動作の獲得や病気との折り合いをつけ始めた[生活基盤の回復を確認する]ことで,役割に焦点を当てた支援に移行していた.評価では,作業療法評価と他職種や家族の視点を踏まえ,[実現可能な役割を目標にする].介入では模擬動作で役割への自信を高めつつ,現状に即した動き方を理解させる.また病棟で役割を担う機会や,早期から家族に現状役割を共有し[患者と支援者に退院後役割の見通しを持たせる].その中でOTRは,役割を担う場所は退院後の生活環境であることを認識し,障がい高齢者に役割の代替手段の指導や,家族等支援者に役割の介助範囲を伝え,退院後生活で[役割を担える戦略と場を準備]していた.
【考察】本研究の結果,この実践プロセスは,入院初期は,機能回復への希望に配慮した支援から始め,生活基盤の回復に合わせて役割に焦点を当てていた.その過程でOTRは,病棟内で役割を担うきっかけを作ることが重要と認識し,その後,障がい高齢者に役割機会の提供や現状能力の理解を促し,家族等支援者には役割を支える負担を減らす具体的な指導を行い,退院後生活を見据えて病院で途切れない支援体制を作る,というプロセスだと考えられた.本研究の限界として,M-GTAは研究対象者の視点で限定された範囲における理論生成を目的としており,今回の研究対象者以外では,別のプロセスや特徴がありうると考えられた.今後は実際に回復期リハ病棟のOTRが行っている役割支援の状況を調査し,今回得られた結果がどの程度実施されているのかを明らかにする必要がある.
【目的】回復期リハ病棟で障がい高齢者の役割支援に精通したOTRが退院後生活の役割に焦点を当て,障がい高齢者の役割能力の向上や役割継続に向けた支援体制を作るために実践するプロセス(以下,実践プロセス)を明らかにし,回復期リハ病棟での作業療法における役割支援に関する示唆を得る.
【方法】障がい高齢者の役割支援に関する事例報告を発表したOTR17名を研究対象者として選定し,半構造化面接を実施した.分析はM-GTAを用いて行った.本研究は所属大学院研究倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】2つのコアカテゴリー,7つのカテゴリー,10個のサブカテゴリー,40個の概念が生成された.以下,{コアカテゴリー},[カテゴリー]を用いて実践プロセスを説明する.はじめに支援の全体像として,OTRが障がい高齢者との訓練中に働きかける{役割の自信と方略を障がいに適応させる直接的支援}と,OTRが家族などの支援者と関わる中で障がい高齢者に働きかける{病院と退院後生活に繋がりを持たせる間接的支援}があり,これらは入院時から同時進行で行われていた.次にプロセスの流れとして,OTRは入院時,障がい高齢者の意欲低下や機能回復の希望を把握し,[心身の回復感を提供する]ことから始め,身辺動作の獲得や病気との折り合いをつけ始めた[生活基盤の回復を確認する]ことで,役割に焦点を当てた支援に移行していた.評価では,作業療法評価と他職種や家族の視点を踏まえ,[実現可能な役割を目標にする].介入では模擬動作で役割への自信を高めつつ,現状に即した動き方を理解させる.また病棟で役割を担う機会や,早期から家族に現状役割を共有し[患者と支援者に退院後役割の見通しを持たせる].その中でOTRは,役割を担う場所は退院後の生活環境であることを認識し,障がい高齢者に役割の代替手段の指導や,家族等支援者に役割の介助範囲を伝え,退院後生活で[役割を担える戦略と場を準備]していた.
【考察】本研究の結果,この実践プロセスは,入院初期は,機能回復への希望に配慮した支援から始め,生活基盤の回復に合わせて役割に焦点を当てていた.その過程でOTRは,病棟内で役割を担うきっかけを作ることが重要と認識し,その後,障がい高齢者に役割機会の提供や現状能力の理解を促し,家族等支援者には役割を支える負担を減らす具体的な指導を行い,退院後生活を見据えて病院で途切れない支援体制を作る,というプロセスだと考えられた.本研究の限界として,M-GTAは研究対象者の視点で限定された範囲における理論生成を目的としており,今回の研究対象者以外では,別のプロセスや特徴がありうると考えられた.今後は実際に回復期リハ病棟のOTRが行っている役割支援の状況を調査し,今回得られた結果がどの程度実施されているのかを明らかにする必要がある.