第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-9] ポスター:高齢期 9

2024年11月10日(日) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PJ-9-5] 当院回復期リハビリテーション病棟における離床時間とFunctional Independence Measureとの関連について

村山 一朗 (医療法人社団 淡路平成会 東浦平成病院 リハビリテーション科)

【序論】
離床時間と日常生活動作能力とは密接に関連しているとの報告がある.当院が所属する平成医療福祉グループでも「患者がベッドにいない病院」を目指し,積極的な離床促進の取り組みを行っている.特に回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)はQuality Indicator(医療の質に関する指標:QI)を導入し,毎月多職種が連携して各患者の離床時間を算出している.
【目的】
目的は,当院回復期病棟における離床時間とFunctional Independence Measure(以下,FIM)の運動項目,認知項目,さらにFIM効率との関連を調査するとともに,離床時間の拡大に繋がるActivities of daily living(以下,ADL)の因子を見つけ,臨床現場における離床促進をさらに推し進めることである.
【方法】
対象は2023年covid-19クラスターによる活動制限の影響が少なかった2023年2月1日から同年10月31日の期間に回復期病棟へ入院し退院した85名.内訳は男性31名,女性54名.年齢は84±8.8歳,疾患は脳血管疾患等14名,運動器疾患等53名,廃用症候群等18名.10日以内の退院,死亡退院,急変による転院患者等は除外とした. 離床時間は毎月多職種で連携し,病室入口等に掲示した離床時間測定シートを用いて集計したものを用いた.統計処理はEZRver1.63を用いて,退院時の離床時間とFIM運動項目合計,FIM認知項目合計,FIM効率との関連についてPearsonの相関係数を求めた.また,入院時と比較して退院時に離床時間が増減したかで2郡に分け,各ADL項目(食事,整容,更衣上衣,下衣,トイレ動作,排尿コントロール,排便コントロール)の利得との関連についてMann-WhitneyのU検定を行った.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
離床時間とFIM運動項目合計(r=0.263,p=0.02),FIM認知項目合計(r=0.125,p=0.28),FIM効率(r=0.107,p=0.36)のいずれも正の相関が認められた.また,離床時間の増加群(以下,増)と維持もしくは減少群(以下,減)との比較では,食事(増:1[0-2]/減:1[0-2],p<0.4),整容(増:2[1-4]/減:2[1-3],p<0.1),更衣上衣(増:2[1.75-4.25]/減:2[1-3],p<0.1),排便コントロール(増:2[1-4]/減:1[0-2],p<0.05)で有意差はみられなかった.一方で,更衣下衣(増:3[1-4.25]/減:21[1-3],p<0.03),トイレ動作(増:3[0-4]/減:1.5[0-3],p<0.02),排尿コントロール(増:2[1-4]/減:1[0-2],p<0.04)で有意差がみられた.
【考察】
今回の調査では離床時間とFIM運動項目に相関があり,ADLの中でも特に排泄に関連する項目の改善と離床時間の増加は関連することが示唆された.
目的のある座位での活動は臥位に比べ腹圧をかけやすくなる.座位の習慣化により骨盤底筋が刺激され,膀胱と尿道を支持し畜尿障害を防ぐとの報告がある.また,尿排出障害改善の観点からも腹圧をかけやすくする,ということは重要とされている.また,トイレ動作の自立度改善は人としての尊厳回復でもあり,離床を促す心理的動機ともなり得たのではと考える.
一方で以前から離床促進の取り組みを多職種と連携しながら強化しており,離床の「時間」については一定の段階で天井効果となる懸念もある.重要なことは各患者に応じた介入であり,趣味・余暇・ADLと多方面から離床を進める取り組みを行って行く必要がある.