第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-9] ポスター:高齢期 9

2024年11月10日(日) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PJ-9-6] 褥瘡委員会における作業療法士の活動

褥瘡の院内発生「0」を目指して

前田 哲, 吉田 瑞穂, 山下 浩樹 (医療法人銀門会 甲州リハビリテーション病院 作業療法科)

【はじめに】
 褥瘡は,「予防」が重要とされている.当院は,180床(内療養型病床46床)の リハビリテーション病院であるが,2020年の褥瘡の院内発生率が3.6%と,2013年度の一般病床の推定発生率1.52%より高い状況であった.2020年度より,褥瘡回診にOTが同席し,褥瘡予防のための課題の抽出と対策を講じたことで,褥瘡の院内発生率の軽減を図ることができた.本演題では,この活動の振り返りを行い,その有用性と今後の課題について報告する.
 発表に当たり,院内の倫理委員会の承認を得ている.
【活動・方法】
 活動①月1回行われている褥瘡回診にOTも同席.回診では,褥瘡の処置・栄養についての内容が中心に行われていたため,褥瘡の発生原因の分析,適切なポジショニング・シーティングの実施,移乗方法についても回診内容に含めた.回診時に,創部から原因の推測を共有し,ポジショニングやシーティング・移乗方法において,リハが主体となり対策を検討した方がよい課題は,担当のリハスタッフにフィードバックを行った. 活動②フィードバックした内容が適正に反映されているか確認のため,回診とは別日に褥瘡対策委員の看護師とラウンドを行った. 活動③2020年は,褥瘡の院内発生が26件と多く,部位は,仙骨部・踵部でベッド上での発生が約9割であった.原因としては,不適切なポジショニング(点で支える・身体とベッドにピローを詰め込む等)やポジショニングピローの不足(各階に2セットのみ)により,除圧が十分行えていないことにあった.褥瘡対策の基準に,『褥瘡対策を行う適切な設備を有していること』とあり,ポジショニングピローを院内で用意してもらえるよう上申した.合わせて,ポジショニングの教育を行った.教育は,各階毎に少人数で数回に分けて実施した.また,動画でいつでも確認できるようにした. 活動④2021年ポジショニングピローが導入され,ポジショニングスキルのさらなる定着を図るため,リハ職が指導するのではなく,褥瘡対策委員の看護師が病棟で直接指導できるように,委員のポジショニングスキルの向上を図った. 活動⑤2022年褥瘡・スキンテアの予防のため,入院初日のカンファレンスの中で,多職種でリスクの確認が確実に行えるよう,フォーマット化した.
 上記の取り組みの成果として2020年~2023年の褥瘡の院内の発生率を算出し,また院内発生の要因を分析した.
【結果】
 院内での褥瘡発生率(2020年3.6%・2021年1.0%・2022年0.7%・2023年0.6%),4年間の発生部位(仙骨57.1%・踵19.1%・外踝7.1%・その他16.7%),発生場面(ベッド上78.6%・移乗時14.3%・車椅子座位時7.1%),局所的要因(圧迫57.1%・ズレ24.5%・失禁湿潤18.4%)であった.ポジショニングピローの導入と教育を行った2021年度から院内の褥瘡発生が減少した.院内の褥瘡発生の約8割はベッド上で,その内の8割は,ポジショニング不良による圧迫やズレによるものであった.
【考察】
 褥瘡回診やラウンドで褥瘡が発生した要因を分析し,対応策を講じたことで,褥瘡の院内発生率の低減が図れた.今回は,ポジショニングピローの導入とポジショニングスキルの教育を実施したことで,除圧やズレの軽減が図れたと考えられる.また,回診後の指導内容が定着できているかラウンドで再確認を行ったことにより,発生率の改善につながったと考える.
 発生場面では,車椅子上での発生が少ない.これは,以前より車椅子クッションの選定時に座圧測定をしていること,モジュール型車椅子でシーティングを行っていることが推察される.ベッド上での発生「0」を目指すためには,車椅子同様,評価に基づいたマットレスの選定と,褥瘡ハイリスク患者のベッド上での圧測定が今後の課題と考える.