第58回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む)3

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PK-3-2] 急性期病院の高次脳機能障害外来における作業療法士の役割

飯塚 航平1, 大久保 裕也1, 大林 茂2 (1.埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション部, 2.埼玉医科大学総合医療センター リハビリテーション科)

【はじめに】
我が国の高次脳機能障害者への支援は平成13年から開始された「高次脳機能障害支援普及事業」によって拡充されているが,現在も医療から福祉,地域への移行に多くの課題が残されている.また,医療機関における支援の在り方は地域移行に重要な影響を与えうる.当院の高次脳機能障害外来は2021年5月に開始され,医療の立場から高次脳機能障害者の支援を行なっている.そこで,本報告は当院の高次脳機能障害外来における作業療法士(以下;OT)の役割および地域との連携について明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は2021年5月〜2023年12月に当院高次脳機能障害外来を利用した57名とした.後方視的に診療録を振り返り,年齢,性別,疾病,発症日,初診日,受診経緯,高次脳機能障害の内容,外来の目標,転帰,OTの関わり,連携先,連携方法について抽出し,記述統計を行なった.OTの関わりと連携先に関してはその内容をより詳細に抽出した.なお本研究は当院倫理員会の承認を得て実施した.
【結果】
平均年齢は44.3±18.5歳,性別は男性42名,女性15名であった.疾病は脳卒中19名,頭部外傷17名,脳動静脈奇形6名,脳腫瘍5名,その他11名,受診の経緯は入院からの継続54%,当院他科からの紹介40%,その他6%であった.有した高次脳機能障害は注意障害86%,遂行機能障害63%,記憶障害47%,社会的行動障害11%,半側空間無視2%,失語症12%であった.外来開始時の目標は自動車運転再開46%,復職・復学23%,社会的手続き(手帳作成や後遺症診断など)19%,自宅生活の支援5%,学校への適応5%であった.外来でのOTの関わりは高次脳機能評価100%,社会生活への助言や提案35%,自主練習の指導30%,他機関との連携26%,日常生活への助言や提案11%であった.他機関との連携は連携なし74%,学校12%,職場9%,就労支援機関7%であった.連携なしの症例は自動車運転再開が目標で運転免許センターより運転の許可が降りた症例や社会的手続きが目標の症例が多数を占めていた.連携ありの症例は復職・復学を目標とした症例が多く,具体的な連携方法は対面での合同カンファレンスの実施,電話や文書を通じてのやり取りであった.転帰はそれぞれ目標を達成して終了79%,定期フォローへ移行9%,途中中断5%,継続中7%であった.OTは全例で高次脳機能評価を行い,その結果を踏まえて,日常生活や学校,職場での社会生活における代償手段の提案や適応方法の検討を行なっていた.また,リハビリテーション科医師(以下;リハ医)と共に,院内のみならず,職場の上司や産業医,学校の教員,就労支援機関など必要に応じて外部との連携も図っていた.連携では患者とそれぞれの間に入り,医学的な情報や知見,患者の特徴を社会生活と結びつけて情報共有を行う役割を果たしていた.
【考察】
当院における高次脳機能障害外来でのOTの役割として,高次脳機能障害の評価やその結果に伴った日常生活や社会生活への助言や提案だけでなく,リハ医を始めとした院内連携やそれぞれの目標に合わせた院外の機関との連携も行い,患者や家族への支援を包括的にコーディネートする役割を果たしていると考えられた.高次脳機能障害者への支援において,専門的な高次脳機能の医学的知見と生活を結びつけて考えることのできるOTが医療から地域への移行の際,間に入ることでより円滑で切れ目のない移行支援につながると考える.