[PK-3-4] 身体機能と高次脳機能に着目した不全型Susac症候群に対する作業療法
【はじめに】Susac症候群は脳症,難聴,視力障害を三徴とし,脳,網膜,内耳における微小血管障害を主病態とする希少疾患である.脳病変は障害部位により多彩な神経症状を呈するが,作業療法(以下,OT)における標準的介入方法の報告は少なく,臨床経過や機能予後,社会復帰など不明な点が多い.身体的機能障害と高次脳機能障害を合併したためOT介入が難渋したが,2か月間の入院リハビリテーションによりADLを再獲得した不全型Susac症候群の一例を報告する.報告にあたり本人から同意を得ている.
【症例】20歳代女性.右利き.両親と3人暮らし.生来健康で小学校保健・体育教員教諭である.X年Y月Z日,雷鳴様頭痛が繰り返し出現し当院に搬送された.脳梁を中心とする脳梗塞が確認され,精査加療目的のため緊急入院した.第7病日に脳梗塞が再発し,第20病日OTの依頼を受け介入を開始した.
【OT評価 第20病日】意識はJCS2,会話は可能だがNRS1−2程度の頭痛が残存しており,活気・意欲は乏しく,家族に依存的であった.四肢に明らかな麻痺はなく,握力は18㎏/19㎏であった.起居動作は自立しているが,歩行はふらつきのため介助を要した.ADLは排泄と入浴が一部介助でありBI 85/100.高次脳機能評価ではMOCA-J 23/30,FAB17/18,TMT-J (A/B)43秒/60秒であった.
【OT計画】日中の活動性が低く,歩行やADLに介助を要した.また,見当識障害,意欲低下,依存的態度から高次脳機能障害が疑われた.そのため日中の活動時間を確保し,行動観察や神経心理検査を行う方針とした.頭痛が再燃しないように運動負荷量に配慮し,急性期は集中力の持続が難しく神経心理検査については簡単な検査から評価を行った.
【経過及び結果】(第20~34病日)第24病日に新規脳梗塞があり,失調様歩行,軽度右片麻痺が出現した.高次脳機能評価ではMOCA−J23/30と変化はないが,TMT-J (A/B)55秒/77秒と初回より低下し,認知・注意機能障害が疑われた.高次脳機能訓練を追加し,OT以外の時間にも高次脳機能訓練を自主的に行えるよう指導した.
(第35~第49病日)ADLは自立したが,第36,46病日に脳梗塞を再発した.軽度左片麻痺と歩行,排泄,入浴に介助が必要となり,情動・記憶・集中力の低下など社会的行動障害もみられるようになった.
(第50病日~64病目)脳梗塞による中枢神経症状と視神経乳頭腫脹,網膜出血の所見から不全型Susac症候群と診断され,ステロイドパルス療法が開始された.治療後より,高次脳機能障害は改善傾向あり,積極的に自主練習に取り組めるようになった.
(第65病日~第72病日)ADLは自立し,MOCA−J30/30,TMT-J (A/B)29秒/29秒まで改善し,認知機能や高次脳機能の改善を認めた.粗大運動では,高負荷のスポーツ要素を取り入れた訓練と家事動作練習を追加した.復職と自動車運転再開を目的にリハビリテーションの継続を希望し,第72病日に回復期リハビリテーション病院へ転院した.
【考察】本症例は不全型Susac症候群と診断され,多発する脳梗塞により片麻痺,歩行障害に加え認知機能・高次脳機能障害など多彩な神経症状が出現した.したがってOT介入時には身体的アプローチに加え,高次脳機能や精神・心理学的所見の評価も必要であった.注目すべき点としてステロイドパルス後よりOTの介入効果が確認され,ステロイドパルス療法と併用してOT介入を継続したことが,認知機能や高次脳機能の早期回復につながった可能性がある.精神的活動の低下は自発的な身体的活動の低下につながるため,病前性格や心理的因子・社会的背景を踏まえ,神経・精神症状を経過観察しながら適切な課題提供することが重要と考えられた.
【症例】20歳代女性.右利き.両親と3人暮らし.生来健康で小学校保健・体育教員教諭である.X年Y月Z日,雷鳴様頭痛が繰り返し出現し当院に搬送された.脳梁を中心とする脳梗塞が確認され,精査加療目的のため緊急入院した.第7病日に脳梗塞が再発し,第20病日OTの依頼を受け介入を開始した.
【OT評価 第20病日】意識はJCS2,会話は可能だがNRS1−2程度の頭痛が残存しており,活気・意欲は乏しく,家族に依存的であった.四肢に明らかな麻痺はなく,握力は18㎏/19㎏であった.起居動作は自立しているが,歩行はふらつきのため介助を要した.ADLは排泄と入浴が一部介助でありBI 85/100.高次脳機能評価ではMOCA-J 23/30,FAB17/18,TMT-J (A/B)43秒/60秒であった.
【OT計画】日中の活動性が低く,歩行やADLに介助を要した.また,見当識障害,意欲低下,依存的態度から高次脳機能障害が疑われた.そのため日中の活動時間を確保し,行動観察や神経心理検査を行う方針とした.頭痛が再燃しないように運動負荷量に配慮し,急性期は集中力の持続が難しく神経心理検査については簡単な検査から評価を行った.
【経過及び結果】(第20~34病日)第24病日に新規脳梗塞があり,失調様歩行,軽度右片麻痺が出現した.高次脳機能評価ではMOCA−J23/30と変化はないが,TMT-J (A/B)55秒/77秒と初回より低下し,認知・注意機能障害が疑われた.高次脳機能訓練を追加し,OT以外の時間にも高次脳機能訓練を自主的に行えるよう指導した.
(第35~第49病日)ADLは自立したが,第36,46病日に脳梗塞を再発した.軽度左片麻痺と歩行,排泄,入浴に介助が必要となり,情動・記憶・集中力の低下など社会的行動障害もみられるようになった.
(第50病日~64病目)脳梗塞による中枢神経症状と視神経乳頭腫脹,網膜出血の所見から不全型Susac症候群と診断され,ステロイドパルス療法が開始された.治療後より,高次脳機能障害は改善傾向あり,積極的に自主練習に取り組めるようになった.
(第65病日~第72病日)ADLは自立し,MOCA−J30/30,TMT-J (A/B)29秒/29秒まで改善し,認知機能や高次脳機能の改善を認めた.粗大運動では,高負荷のスポーツ要素を取り入れた訓練と家事動作練習を追加した.復職と自動車運転再開を目的にリハビリテーションの継続を希望し,第72病日に回復期リハビリテーション病院へ転院した.
【考察】本症例は不全型Susac症候群と診断され,多発する脳梗塞により片麻痺,歩行障害に加え認知機能・高次脳機能障害など多彩な神経症状が出現した.したがってOT介入時には身体的アプローチに加え,高次脳機能や精神・心理学的所見の評価も必要であった.注目すべき点としてステロイドパルス後よりOTの介入効果が確認され,ステロイドパルス療法と併用してOT介入を継続したことが,認知機能や高次脳機能の早期回復につながった可能性がある.精神的活動の低下は自発的な身体的活動の低下につながるため,病前性格や心理的因子・社会的背景を踏まえ,神経・精神症状を経過観察しながら適切な課題提供することが重要と考えられた.