第58回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-4] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む)4

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PK-4-1] 高次脳機能障害者に対する生活版ジョブコーチ支援の報告

高次脳機能障害支援センターの事例から

佐藤 美希子1, 長谷川 純子1, 揚戸 薫1, 小倉 由紀2, 菊地 尚久3 (1.千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域支援センター高次脳機能障害支援部, 2.千葉県千葉リハビリテーションセンター 更生園, 3.千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)

【はじめに】当センターは千葉県高次脳機能障害支援拠点機関であり,専門部署として高次脳機能障害支援センター(以下,支援センター)を設置し,センター全体で高次脳機能障害支援に取り組んでいる.
 高次脳機能障害者のADLは7割前後が自立しているが,契約・手続き等の社会参加の自立は1割,金銭管理や調理の自立は2割余りと,家族が家庭生活で多くのケアをしている実態が明らかになっている(NPO法人日本脳外傷友の会.高次脳機能障害者生活実態調査報告書2009).支援センターでは,生活での困り事に対し, 生活版ジョブコーチ支援手法を用い,一定の成果を挙げている.今回,その取り組みについて報告する.尚,発表にあたり当センター倫理審査の承認を得ている.
【生活版ジョブコーチ支援(以下,生活版JC支援】高次脳機能障害者が自立生活をしていくために必要な知識や技術を実際の生活場面で訓練し援助する訪問型の支援(名古屋市総合リハビリテーションセンター 2006).
【支援事例①主婦への家事支援】30歳代,女性.診断名:右急性硬膜下血種,脳挫傷.障害名:高次脳機能障害(遂行機能障害,記憶障害,注意障害).現病歴:10代で受傷.入院加療後,高校復学.その後,結婚,出産.介入経過:地域保健課より支援センターに「本人より『出産後家事が上手く出来ない』と訴えがあった」と相談.ニーズ:1日の予定が立てられない.夕飯が作れない.アセスメント:調理や買い物自体は1人で可能だが,①献立を立てられない,②いつ調理を始めればよいかわからない,という問題点あり.ツールの導入:課題点①「食材リストアップ表」「1週間の献立表」を導入.不要な食材購入や献立の重複はなくなったが,リストアップ作業や献立作成のアドバイスは必要.課題点②「1日のスケジュール表」を導入.時間通りに家事を行えるようになった.地域移行:ツール利用継続のためヘルパー支援導入.
【支援事例②一人暮らしの生活支援】60歳代,女性.診断名:左被殻出血.障害名:右上下肢麻痺(軽度),失語症,高次脳機能障害(注意障害,記憶障害).現病歴:急性期病院を経て当センター転院.退院後はアパートに独居.介入経過:担当OTより支援センターに退院後生活について相談あり.ニーズ:また料理をしたい.アセスメント:本人が理解しやすいように解釈しルールを変更する,調理では性急により包丁で指を切る,服薬はカレンダー使用で概ね可能だが,部屋を移動する等で日付を間違える,等の情報あり.ヘルパー支援の導入,そのための支援手順書作成,退院時連携会議での伝達を担当OTへ助言.地域移行:退院時連携会議(ケアマネ・ヘルパー参加)に入院担当SW,支援センタースタッフが参加.支援手順書をもとに目標や支援のポイントについて説明.退院から1ヶ月後の連携会議に支援センタースタッフが同席し,生活の安定を確認.
【考察】高次脳機能障害者は退院後やライフステージの変化等により,生活での困り事に直面することが多く,その時期に応じた環境調整が必要である.また,退院時に医療機関から地域支援者に繋ぐ際に高次脳機能障害者の特性が十分に伝わらず,支援が難渋することも多い.その際に,実生活を支えるヘルパー等に支援手順書を用い,支援方法を伝達する生活版JC支援は効果的だと考える.生活版JC支援には,専門職のアセスメントが必要だと考える.OTとして実生活を想定したアセスメントを行い,高次脳機能と関連付け,自立に向けた課題や適切なサポートを抽出し,退院後も支援が途切れないよう地域支援者に繋いでいくことは重要である.