[PK-5-4] 失行・失語を呈した症例へ模倣を用いた介入について
【はじめに】
失行は左半球損傷患者の10〜50%に生じると言われている.失行の主たる症状は道具の操作障害に加えて,模倣障害などがあり,その合併はAD L自立に大きな影響を与える.今回左頭頂・後頭葉に脳梗塞を発症後,失行・全失語・注意障害を呈し,ADL全介助の症例を担当した.家族との目標設定から「食事だけでも自分で食べて欲しい」という希望を尊重し,模倣動作及び他動詞ジェスチャーを訓練に取り入れ,食事環境を調整することにより動作改善を認めた.本報告は書類による同意を得て実施した.
【対象・介入経過】
症例:80歳代右利き男性,現病歴:左頭頂・後頭葉の広範囲に脳梗塞を発症.既往歴:高血圧症・アルツハイマー型認知症.急性期病院にて加療後,28病日目に当院へ転院し回復期作業療法を開始.全失語のため詳細評価は困難. Functional Independence Measure (以下FIM)20点,右Brunstrom stage手指Ⅳ・上肢Ⅳ・下肢Ⅳ.〈ADL〉食事全介助:スプーンを頬に当てる・首を傾げるなどの行動が見られた.整容全介助:歯ブラシを櫛のように使用.移乗:中等度介助.動作への理解ができれば介助量は軽度.更衣全介助:服の上下理解,袖から頭部を入れるような行為が多く見られた.動作時一点を見つめる行為や物体と手の位置関係にズレが生じ,注意機能低下が見られた.
〈1期〉車椅子離床し起立訓練や移乗訓練を中心に介入.ADLは移乗のみ3点.
〈2期〉模倣動作を繰り返し実施.グーパーなど簡単な模倣が可能も保続が見られる.食事場面での介入にてスタッフの持つスプーンの手の形や動作の提示.
〈3期〉模倣が概ね可能となる(2次元・3次元にてグーチョキパー,キツネ,入れ替え),食事介入継続.退院先が施設となり多職種及び家族と再度目標を設定し歩行獲得・食事動作の獲得を設定.早出遅出介入にて更衣動作訓練開始.
〈4期〉他動詞ジェスチャー段階3を応用し,パントマイムから食事動作に応じた物品選択訓練実施.パントマイムに応じてスプーン・フォークの選択が4回に1回程度可能となる. 物体と手の誤差が軽減し,注意機能に改善が見られ,食事は環境調整(ワンプレートでオニギリで提供)により軽介助レベルで摂取可能となる.歩行は手引き歩行で10m程度可能となる. 早出遅出介入での更衣動作継続.
【結果】
Brunstrom stage手指Ⅴ・上肢Ⅳ・下肢Ⅳ.FIM 28点.〈ADL〉食事軽介助,セッティングにより自己にて摂取可能.途中で手が止まることがあるため促しを要した.更衣動作中等度介助,服を着るジェスチャーを行うことで理解し,袖口など誘導することで協力動作を得られた.移乗監視:方向を示し,移乗する場所を理解させることで自己にて動作可能.整容中等度介助:物品を手渡し,ジェスチャーすることで歯磨き・顔拭き・髭剃り動作可能も動作持続が難しく実用性には欠ける状態.
【考察】
本症例は視覚情報から動作を計画する事ができず,その結果食事などの日常生活動作を実行できなくなっていると解釈した.パントマイムから食事形態に応じた物品の選択が可能になった事で,動作を計画する事が可能となったと考える. CMvanHeugtenはストテラジー訓練とADL改善について述べており,動作推測が可能となり,食事動作において介助や教示・環境調整を行ったことにより食事動作獲得に繋がったと考える. Meganはワーキングメモリーと注意機能に強い関連性を示していると報告しており,本症例に関しても,パントマイムからの選択が可能となった事で,視覚情報からワーキングメモリーを引き出す事が可能となり,選択的注意に働きかける事ができたことも動作改善に繋がったと考える.
失行は左半球損傷患者の10〜50%に生じると言われている.失行の主たる症状は道具の操作障害に加えて,模倣障害などがあり,その合併はAD L自立に大きな影響を与える.今回左頭頂・後頭葉に脳梗塞を発症後,失行・全失語・注意障害を呈し,ADL全介助の症例を担当した.家族との目標設定から「食事だけでも自分で食べて欲しい」という希望を尊重し,模倣動作及び他動詞ジェスチャーを訓練に取り入れ,食事環境を調整することにより動作改善を認めた.本報告は書類による同意を得て実施した.
【対象・介入経過】
症例:80歳代右利き男性,現病歴:左頭頂・後頭葉の広範囲に脳梗塞を発症.既往歴:高血圧症・アルツハイマー型認知症.急性期病院にて加療後,28病日目に当院へ転院し回復期作業療法を開始.全失語のため詳細評価は困難. Functional Independence Measure (以下FIM)20点,右Brunstrom stage手指Ⅳ・上肢Ⅳ・下肢Ⅳ.〈ADL〉食事全介助:スプーンを頬に当てる・首を傾げるなどの行動が見られた.整容全介助:歯ブラシを櫛のように使用.移乗:中等度介助.動作への理解ができれば介助量は軽度.更衣全介助:服の上下理解,袖から頭部を入れるような行為が多く見られた.動作時一点を見つめる行為や物体と手の位置関係にズレが生じ,注意機能低下が見られた.
〈1期〉車椅子離床し起立訓練や移乗訓練を中心に介入.ADLは移乗のみ3点.
〈2期〉模倣動作を繰り返し実施.グーパーなど簡単な模倣が可能も保続が見られる.食事場面での介入にてスタッフの持つスプーンの手の形や動作の提示.
〈3期〉模倣が概ね可能となる(2次元・3次元にてグーチョキパー,キツネ,入れ替え),食事介入継続.退院先が施設となり多職種及び家族と再度目標を設定し歩行獲得・食事動作の獲得を設定.早出遅出介入にて更衣動作訓練開始.
〈4期〉他動詞ジェスチャー段階3を応用し,パントマイムから食事動作に応じた物品選択訓練実施.パントマイムに応じてスプーン・フォークの選択が4回に1回程度可能となる. 物体と手の誤差が軽減し,注意機能に改善が見られ,食事は環境調整(ワンプレートでオニギリで提供)により軽介助レベルで摂取可能となる.歩行は手引き歩行で10m程度可能となる. 早出遅出介入での更衣動作継続.
【結果】
Brunstrom stage手指Ⅴ・上肢Ⅳ・下肢Ⅳ.FIM 28点.〈ADL〉食事軽介助,セッティングにより自己にて摂取可能.途中で手が止まることがあるため促しを要した.更衣動作中等度介助,服を着るジェスチャーを行うことで理解し,袖口など誘導することで協力動作を得られた.移乗監視:方向を示し,移乗する場所を理解させることで自己にて動作可能.整容中等度介助:物品を手渡し,ジェスチャーすることで歯磨き・顔拭き・髭剃り動作可能も動作持続が難しく実用性には欠ける状態.
【考察】
本症例は視覚情報から動作を計画する事ができず,その結果食事などの日常生活動作を実行できなくなっていると解釈した.パントマイムから食事形態に応じた物品の選択が可能になった事で,動作を計画する事が可能となったと考える. CMvanHeugtenはストテラジー訓練とADL改善について述べており,動作推測が可能となり,食事動作において介助や教示・環境調整を行ったことにより食事動作獲得に繋がったと考える. Meganはワーキングメモリーと注意機能に強い関連性を示していると報告しており,本症例に関しても,パントマイムからの選択が可能となった事で,視覚情報からワーキングメモリーを引き出す事が可能となり,選択的注意に働きかける事ができたことも動作改善に繋がったと考える.