[PK-6-4] 自動車運転評価における注意障害の有無による上肢と下肢の反応時間の差
【はじめに】日本における高齢化社会では,高齢者の自動車運転事故が社会問題となっている.臨床場面では高齢者の認知力低下に加え,脳卒中による注意障害を併発した症例に対し,ドライビングシミュレーターや脳卒中ドライバーのスクリーニング評価日本版などの運転に関する評価,TMT-JやCATなどの注意機能の評価を行うことが一般的である.しかし,ほとんどの検査が上肢を使った机上で実施するため,下肢の動作の反応を予測することは困難である.そこで今回我々は,上肢と下肢の反応時間の差をCPTで測定し,①上肢と下肢の反応速度の差と,②注意障害の有無によって差が変化するのかを調査したので,結果を報告する.
【倫理的配慮】倫理的配慮として,症例に本研究の目的や内容を説明し同意が得られたもののみ実施した.なお当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【対象】当該研究に協力した被験者は,脳梗塞または脳出血による診断で入院した25名(男性18名,女性7名),平均年齢69.44歳(±9.85歳)に協力を依頼した.病前の自動車運転の履歴は問わない.認知的条件として,意識障害,コミュニケーション障害がなく,実施おいて障害となる高次脳機能障害や認知障害がないこと,注意障害があってもTMT-Jが理解でき,最後まで実施できることとした.身体的条件として,一定時間椅子座位が保持できること,検査実施において使用する上下肢は非麻痺側の使用とした.
【方法】方法はTMT-Jで注意障害の有無を確認,CPTの反応時間課題(以下SRT課題)とAX課題を連続して実施し,学習効果を緩和するため上肢を実施後,下肢は1週間程度の時間を空けて実施した.PCの設定としては上肢はパソコンのスペースキー,下肢はELECOM社製Route R,USBフットペダルスイッチを使用した.統計分析に関しては①上肢と下肢の差についてはマンホイットニー検定を,②注意障害のとの関連性については,スピアマンの相関係数を用いた.
【結果】統計分析の結果,①上肢と下肢の差については,CPTのSRT課題では上肢と下肢で反応速度に有意な差があるが,AX課題では有意な差がなかった.②注意障害のとの関連性については,TMT-J part Bの成績が悪い人はAX課題の上肢も遅くなるという相関関係があった.さらに下肢についてはp=0.051と有意差はなかったが,数値としてはかなり際どい結果が得られた.
【考察】本研究は脳卒中罹患者の自動車運転再開のために行う検査において,上肢と下肢の反応速度の差と注意障害との関連を調査した.①上肢と下肢の反応速度の差については,SRT課題で有意な差が得られた.これはKawaiら(2022)の研究からも,「手よりも足の方が反応するまでの時間が長かった」とあり,加藤ら(2008)の研究でも,上肢の方が下肢より反応速度は速い結果となっている.本研究では誤反応の差は認めなかったが,反応速度に関しては同様の結果が得られたものと考えられる.②注意障害との関連に関しては,TMT-J Pert Bでの異常とAX課題の上肢の反応速度が遅延するという相関関係が得られた.下肢に関しても数値的にはきわどい数値となった事から無視することはできない.AX課題は予測的制御と反応的制御が必要であり,より複雑な認知機能が必要なことから,注意障害が強く影響し反応速度が遅延したものと考えられる.
【終わりに】本研究の結果で,下肢の反応速度が上肢と比較して遅延すること,注意障害の有無でさらに遅延時間が延長することが示唆された.脳卒中患者においては高頻度で注意障害を合併しており,自動車運転再開の検査において下肢の反応速度や注意障害の影響も考慮すべきである.
【倫理的配慮】倫理的配慮として,症例に本研究の目的や内容を説明し同意が得られたもののみ実施した.なお当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【対象】当該研究に協力した被験者は,脳梗塞または脳出血による診断で入院した25名(男性18名,女性7名),平均年齢69.44歳(±9.85歳)に協力を依頼した.病前の自動車運転の履歴は問わない.認知的条件として,意識障害,コミュニケーション障害がなく,実施おいて障害となる高次脳機能障害や認知障害がないこと,注意障害があってもTMT-Jが理解でき,最後まで実施できることとした.身体的条件として,一定時間椅子座位が保持できること,検査実施において使用する上下肢は非麻痺側の使用とした.
【方法】方法はTMT-Jで注意障害の有無を確認,CPTの反応時間課題(以下SRT課題)とAX課題を連続して実施し,学習効果を緩和するため上肢を実施後,下肢は1週間程度の時間を空けて実施した.PCの設定としては上肢はパソコンのスペースキー,下肢はELECOM社製Route R,USBフットペダルスイッチを使用した.統計分析に関しては①上肢と下肢の差についてはマンホイットニー検定を,②注意障害のとの関連性については,スピアマンの相関係数を用いた.
【結果】統計分析の結果,①上肢と下肢の差については,CPTのSRT課題では上肢と下肢で反応速度に有意な差があるが,AX課題では有意な差がなかった.②注意障害のとの関連性については,TMT-J part Bの成績が悪い人はAX課題の上肢も遅くなるという相関関係があった.さらに下肢についてはp=0.051と有意差はなかったが,数値としてはかなり際どい結果が得られた.
【考察】本研究は脳卒中罹患者の自動車運転再開のために行う検査において,上肢と下肢の反応速度の差と注意障害との関連を調査した.①上肢と下肢の反応速度の差については,SRT課題で有意な差が得られた.これはKawaiら(2022)の研究からも,「手よりも足の方が反応するまでの時間が長かった」とあり,加藤ら(2008)の研究でも,上肢の方が下肢より反応速度は速い結果となっている.本研究では誤反応の差は認めなかったが,反応速度に関しては同様の結果が得られたものと考えられる.②注意障害との関連に関しては,TMT-J Pert Bでの異常とAX課題の上肢の反応速度が遅延するという相関関係が得られた.下肢に関しても数値的にはきわどい数値となった事から無視することはできない.AX課題は予測的制御と反応的制御が必要であり,より複雑な認知機能が必要なことから,注意障害が強く影響し反応速度が遅延したものと考えられる.
【終わりに】本研究の結果で,下肢の反応速度が上肢と比較して遅延すること,注意障害の有無でさらに遅延時間が延長することが示唆された.脳卒中患者においては高頻度で注意障害を合併しており,自動車運転再開の検査において下肢の反応速度や注意障害の影響も考慮すべきである.