[PK-8-1] 認知症の人の社会参加実施に関わる作業療法士個人要因の探索
全国の介護老人保健施設への調査
【背景】社会参加とは仕事や社会貢献だけでなく周囲との関わりや役割を指す. 社会参加において作業療法士(以下,OT)は目標設定から環境調整,専門職連携等の一連の役割を担っており,本人にとって重要な作業を通して社会参加への支援をすることができる.しかし認知症の人への社会参加に向けたリハビリテーション(以下,リハビリ)介入は,認知症本人の幸福感や満足感を高める効果が報告されているが,施設での実施率は定かではない(認知症介護研究・研修大府センター, 2021, 2022).社会参加を目標にしたリハビリ介入の実施には,認知症本人のみならず, 家族やリハビリ専門職,施設内外の環境要因が関連すると考えられる.特にリハビリ専門職の要因としては,介入に関わる作業療法士自身の臨床実践能力や認知症に対する理解が重要と考えるが,これらに注目した研究はほとんどない.そこで本研究ではOTの個人要因に着目し,社会参加に向けたリハビリ介入実施との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】全国の介護老人保健施設で働くOTの管理者3,973名を対象にアンケート調査をwebまたは紙面にて実施した.項目内容は個人及び施設属性,認知症に対するスティグマ評価,生活期リハビリにおけるコンピテンシー自己評価,社会参加に向けたリハビリ介入実施経験を用いた.社会参加に向けたリハビリ介入実施経験は,社会参加の目標設定の経験あり(目標設定群),目標設定には至っていないが社会参加に関わる取り組みの経験あり(介入実施群),行ったことがない(非実施群)の3群に分類し比較分析を行った.統計方法はカイ二乗検定及び一元配置分散分析(Tukey-Kramer多重比較検定)を使用しR4.3.0で行われた.本研究は社会福祉法人仁至会倫理・利益相反委員会の承認に基づき実施され,研究目的やプライバシー保護を書面上にて説明し,同意を得て実施した(承認番号0502).
【結果】759名から回答が得られ(回収率19.1%),完全データの679名を解析対象とした.社会参加に関わるリハビリの実施については,目標設定群は37.1%,介入実施群は33.1%,非実施群は29.8%であった.OTの個人要因として,他の職場経験の有無,地域資源との関わり(社会福祉協議会,他の介護サービス事業所)にて有意差を認めた(目標設定群>非実施群, p<0.05).コンピテンシー自己評価尺度では総合点及び下位尺度「専門職として地域に関わる能力」「共有・協働能力」において有意な差が認められた(目標設定群>非実施群, 介入実施群>非実施群, p<0.05).認知症スティグマ評価尺度は有意差を認めなかった.
【考察】本研究は社会参加の目標設定及びリハビリ介入に関連するOTの個人要因について比較検討した.社会参加の実施率は70.2%であり,7割以上が社会参加の目標設定または社会参加に関わるリハビリ介入を実施したことがあると答えた.介入の中で他者との交流や役割活動の要素を取り入れた社会参加を実施することが可能であった.関連要因では,社会参加を目標に設定したOTは,他の職場経験や地域資源との関わりが豊富であり,特に社会福祉協議会や他の介護サービス事業所との連携を行っていることが示唆された.介入の中で他者交流や役割活動を行っているOTは,周囲との連携の能力が高く,他職種や家族等と関わっていることが明らかになった.本研究はOTの管理者を対象としているため介入別に直接かかわる要因を定めることは難しい.本研究により,社会参加に向けたリハビリ介入を進めていくためには,OTとして家族や友人など周囲との交流の機会や役割活動を提供したり,施設外の地域資源と連携を進めていくが重要であることが示唆された.
【方法】全国の介護老人保健施設で働くOTの管理者3,973名を対象にアンケート調査をwebまたは紙面にて実施した.項目内容は個人及び施設属性,認知症に対するスティグマ評価,生活期リハビリにおけるコンピテンシー自己評価,社会参加に向けたリハビリ介入実施経験を用いた.社会参加に向けたリハビリ介入実施経験は,社会参加の目標設定の経験あり(目標設定群),目標設定には至っていないが社会参加に関わる取り組みの経験あり(介入実施群),行ったことがない(非実施群)の3群に分類し比較分析を行った.統計方法はカイ二乗検定及び一元配置分散分析(Tukey-Kramer多重比較検定)を使用しR4.3.0で行われた.本研究は社会福祉法人仁至会倫理・利益相反委員会の承認に基づき実施され,研究目的やプライバシー保護を書面上にて説明し,同意を得て実施した(承認番号0502).
【結果】759名から回答が得られ(回収率19.1%),完全データの679名を解析対象とした.社会参加に関わるリハビリの実施については,目標設定群は37.1%,介入実施群は33.1%,非実施群は29.8%であった.OTの個人要因として,他の職場経験の有無,地域資源との関わり(社会福祉協議会,他の介護サービス事業所)にて有意差を認めた(目標設定群>非実施群, p<0.05).コンピテンシー自己評価尺度では総合点及び下位尺度「専門職として地域に関わる能力」「共有・協働能力」において有意な差が認められた(目標設定群>非実施群, 介入実施群>非実施群, p<0.05).認知症スティグマ評価尺度は有意差を認めなかった.
【考察】本研究は社会参加の目標設定及びリハビリ介入に関連するOTの個人要因について比較検討した.社会参加の実施率は70.2%であり,7割以上が社会参加の目標設定または社会参加に関わるリハビリ介入を実施したことがあると答えた.介入の中で他者との交流や役割活動の要素を取り入れた社会参加を実施することが可能であった.関連要因では,社会参加を目標に設定したOTは,他の職場経験や地域資源との関わりが豊富であり,特に社会福祉協議会や他の介護サービス事業所との連携を行っていることが示唆された.介入の中で他者交流や役割活動を行っているOTは,周囲との連携の能力が高く,他職種や家族等と関わっていることが明らかになった.本研究はOTの管理者を対象としているため介入別に直接かかわる要因を定めることは難しい.本研究により,社会参加に向けたリハビリ介入を進めていくためには,OTとして家族や友人など周囲との交流の機会や役割活動を提供したり,施設外の地域資源と連携を進めていくが重要であることが示唆された.