第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-1] ポスター:援助機器 1 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PL-1-1] リハビリテーション病院における3Dプリンタ活用を促進させるための取り組み

自助具のデータベース化

横田 翠, 高浜 功丞, 神保 和正 (千葉県千葉リハビリテーションセンター)

【はじめに】自助具は,障害や病気などによる麻痺,加齢による身体機能の低下を原因とする動作の困難を補うための道具であり,Activities of Daily Living(ADL),Activities Parallel to Daily Living(APDL)等の支援に重要な役割を持つ.臨床場面において自助具は既製品または手作り品を導入するケースが多い.既製品は入手が容易なことと,破損した際に再購入できることがメリットであるが,汎用的な形状をしていることが多く,患者ごとの状態に合わせた最適な自助具としての提供は難しい.手作り品は,患者の症状や状態に合わせ,最適な形状や材質を選択することができる.近年では,臨床場面において3Dプリンタを用いた自助具の作成が普及してきており,設計の自由度や再現性の高さが注目されている.当センターにおいても3Dプリンタを使用し自助具を作成・活用しており,それらの導入事例をデータベース(以下,DB)化しているため,その取り組みについて報告する.
【方法】DBには当センターのセラピストが3Dプリンタで作成した自助具のデータを蓄積し,加えて,適応患者の疾患や状態,および,目的または解決した課題を複数登録した.DBに蓄積されている自助具に適応する患者がいた場合は他のセラピストがそれらのデータを利用できるようにし,各患者の特徴に合わせて自助具のモデルを更新していくシステムを構築,運用している.本報告では,DBに蓄積している自助具の種類や目的,適応した患者について分析した.なお本報告は,千葉県千葉リハビリテーションセンターの倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】2022年から13件のデータが蓄積されている.DB内のデータを用いて作成された自助具は延べ16件であった.登録された自助具の種類は食事1件,ベッド環境2件,整容5件,訓練道具4件となっていた.対象は脊髄損傷,脳卒中,小児疾患の患者であった.このシステムにより,当センターにおける3Dプリンタの使用機会は増加し,より多くの患者に自助具を提供することが可能になった.さらに,DBのベースモデルを修正することによって,同じ自助具を新規で作成する場合と比較して,短時間で完了できるようになった.
【考察】本報告におけるDBにはADL,APDLに関わる様々な活動を目的とした自助具のデータが蓄積され,多様な患者に導入することができている.一方で,3Dプリンタを活用した自助具の作成には発想力を要し,具体的に形にするためのモデルの設計能力と設計に費やす多くの工程の理解が求められる.そのため,3Dプリンタを用いた自助具の作成には経験を要し,広く臨床場面で活用していく難しさがある.今回3DプリンタのデータをDB化したことにより,データの蓄積,更新が容易になりセラピストの負担を軽減し,より良い自助具を提供できるシステムを構築することができたと考える.現状ではこのDBの運用期間が短いこともあり十分なデータを集めるには至っておらず,詳細な分析はできていない.今後はこのDBの運用を進めていき,蓄積データ,運用症例数を増やしていくことで,臨床場面で3Dプリンタをより活用しやすいシステムを構築していく必要がある.