[PL-2-4] 三好型筋ジストロフィー患者への移乗用道具作製により外出頻度の増加を支援した一症例
【はじめに】
訪問リハビリテーションでの作業療法の役割は,その方の日常生活動作(以下ADL),手段的日常生活動作などの作業遂行に焦点を当て,生活空間の拡大,生活の質の向上を図ることが重視されている.今回,三好型筋ジストロフィーを呈し,疾患の進行により車の運転や車椅子操作が困難となったことで自宅内引きこもりとなった症例を担当した.電動車椅子を導入し,移乗方法を検証し道具作製を行った結果,定期的な外出が行えるようになったためここに報告する.尚,本報告に対しご本人には同意を得ている.
【症例紹介】
70歳代男性.要介護3.20歳代の時に四肢脱力があり発症. 50歳後半頃から転倒が増え,長距離の歩行は困難となり屋外では車椅子を使用するようになる.5~6年前より自宅内でも転倒が増え,歩行困難となる.家が狭く車椅子操作が難しいなどの理由から本人希望にて自宅内は車椅子を用いず,いざりでの移動している.症状は緩徐進行性に増悪しており,ライフスタイルは年々少しずつ変化している.妻と2人暮らしで,妻は日中就労している.need妻に介助負担をかけず外出がしたい. 関節可動域(Rt/Lt)股関節伸展-30°/-20°膝関節伸展-30°/-20°,足関節背屈5/10°GMT上肢2~3 下肢2~3 体幹3~4.握力(Rt/Lt)8㎏/6㎏. ADLはFIM105/126.道具の準備は介助必要であるが動作は全て自己に可能. 2~3㎝程度の段であれば上腕三頭筋に頼る形でプッシュアップし,片側づつ臀部を上げ何とか段差を上がることは可能である.
【経過及び結果】
2020年の介入当初は,自家用車を運転し買い物や旅行に行くなど活動的であった.疾患の進行により2022年冬頃より運転や車椅子操作が困難となったが,本人は妻に負担をかけたくないという思いが強く,自分で行えないならと半年程,受診以外の外出を控え自宅内引きこもりとなっていた.そこで屋外での移動手段として電動車椅子の導入を提案した.提案当初は,電動車椅子導入に難色を示していたが,電動車椅子の使用動画を用いて,利便性などを繰り返し説明することで納得され,導入することとなった.しかし家屋構造上上がり框と車椅子座面間に約30㎝程度の高低差が出来てしまい,移乗が困難な状況であった.スライディングボードの使用を検討したが,いざりで傾斜を登る事が困難であった.2~3cm程度の段差昇降は可能であったため,緩やかな3段の階段状のものを発泡スチロールで作製し高低差の解消を図った.それを用いることで何とか移乗は可能であったため,反復的に移乗練習を実施し,最終的に見守りでの移乗が可能となった.家族に対しても指導をい,その結果,現在は週1回の頻度で妻と自宅近くのショッピングモールや散歩に行く等,外出機会が増えている.また,何事も悲観的な考えとなっていたが,前向きな発言が増え自己肯定感が高くなるなど気持ちの変化もみられている.
【考察】
福祉用具や道具の選定,提供において身体機能の補完という観点だけでなく,外出頻度の減少の原因の一つになっていた「家族へ負担をかけるなら外出しなくていい」という利用者の気持ちに寄り添い可能な限り本人の潜在能力を生かし,介護負担の少ない方法を検討し支援を行えた.そうした利用者に適した道具の提供を行えたことで,外出という作業活動を支援し再獲得したことで生活の質の向上も図ることが出来たと考える.今後も症状の進行により様々な問題に直面してくると思われる.その都度,患者の状態像に応じた生活の維持と家族の介護負担軽減の視点で介入しながら,本人のみならず家族のニーズ,想いも汲み取り介入していく必要があり,訪問リハビリテーション介入の大きな役割であると考える.
訪問リハビリテーションでの作業療法の役割は,その方の日常生活動作(以下ADL),手段的日常生活動作などの作業遂行に焦点を当て,生活空間の拡大,生活の質の向上を図ることが重視されている.今回,三好型筋ジストロフィーを呈し,疾患の進行により車の運転や車椅子操作が困難となったことで自宅内引きこもりとなった症例を担当した.電動車椅子を導入し,移乗方法を検証し道具作製を行った結果,定期的な外出が行えるようになったためここに報告する.尚,本報告に対しご本人には同意を得ている.
【症例紹介】
70歳代男性.要介護3.20歳代の時に四肢脱力があり発症. 50歳後半頃から転倒が増え,長距離の歩行は困難となり屋外では車椅子を使用するようになる.5~6年前より自宅内でも転倒が増え,歩行困難となる.家が狭く車椅子操作が難しいなどの理由から本人希望にて自宅内は車椅子を用いず,いざりでの移動している.症状は緩徐進行性に増悪しており,ライフスタイルは年々少しずつ変化している.妻と2人暮らしで,妻は日中就労している.need妻に介助負担をかけず外出がしたい. 関節可動域(Rt/Lt)股関節伸展-30°/-20°膝関節伸展-30°/-20°,足関節背屈5/10°GMT上肢2~3 下肢2~3 体幹3~4.握力(Rt/Lt)8㎏/6㎏. ADLはFIM105/126.道具の準備は介助必要であるが動作は全て自己に可能. 2~3㎝程度の段であれば上腕三頭筋に頼る形でプッシュアップし,片側づつ臀部を上げ何とか段差を上がることは可能である.
【経過及び結果】
2020年の介入当初は,自家用車を運転し買い物や旅行に行くなど活動的であった.疾患の進行により2022年冬頃より運転や車椅子操作が困難となったが,本人は妻に負担をかけたくないという思いが強く,自分で行えないならと半年程,受診以外の外出を控え自宅内引きこもりとなっていた.そこで屋外での移動手段として電動車椅子の導入を提案した.提案当初は,電動車椅子導入に難色を示していたが,電動車椅子の使用動画を用いて,利便性などを繰り返し説明することで納得され,導入することとなった.しかし家屋構造上上がり框と車椅子座面間に約30㎝程度の高低差が出来てしまい,移乗が困難な状況であった.スライディングボードの使用を検討したが,いざりで傾斜を登る事が困難であった.2~3cm程度の段差昇降は可能であったため,緩やかな3段の階段状のものを発泡スチロールで作製し高低差の解消を図った.それを用いることで何とか移乗は可能であったため,反復的に移乗練習を実施し,最終的に見守りでの移乗が可能となった.家族に対しても指導をい,その結果,現在は週1回の頻度で妻と自宅近くのショッピングモールや散歩に行く等,外出機会が増えている.また,何事も悲観的な考えとなっていたが,前向きな発言が増え自己肯定感が高くなるなど気持ちの変化もみられている.
【考察】
福祉用具や道具の選定,提供において身体機能の補完という観点だけでなく,外出頻度の減少の原因の一つになっていた「家族へ負担をかけるなら外出しなくていい」という利用者の気持ちに寄り添い可能な限り本人の潜在能力を生かし,介護負担の少ない方法を検討し支援を行えた.そうした利用者に適した道具の提供を行えたことで,外出という作業活動を支援し再獲得したことで生活の質の向上も図ることが出来たと考える.今後も症状の進行により様々な問題に直面してくると思われる.その都度,患者の状態像に応じた生活の維持と家族の介護負担軽減の視点で介入しながら,本人のみならず家族のニーズ,想いも汲み取り介入していく必要があり,訪問リハビリテーション介入の大きな役割であると考える.