[PM-1-1] 妻への恩返しに向けMTDLPを導入し夫婦関係に良好な変化がみられた一例
【はじめに】今回，転倒により左上腕骨骨幹部骨折を受傷した事例を担当した．介護が必要となった事で夫婦の関係性に変化が生じ，事例が希望とする妻へ恩返しが果たせない状況となっていた．事例と妻に対し生活行為向上マネジメント(以下，MTDLP)を導入した結果，夫婦関係に良好な変化が見られた為以下に報告する．尚，本発表に際して事例の同意を得た．演題発表に関連し，開示すべきCOI関係にある企業団体等はない．
【事例紹介】60歳代の男性．妻と2人暮らし．肺腺癌の既往あり．定年退職まで仕事に専念し妻が家事を担っていたが，退職後は家事が事例の役割であった．X日妻と散歩中に転倒し左上腕骨骨幹部骨折受傷．原発巣は安定しているも頚椎・胸椎に新規の骨転移が認められ病的骨折と診断された．X＋8日観血的整復固定術施行，X＋20日外来作業療法開始．
【外来作業療法初期評価時】利き手：右利き．疼痛NRS3．ROM（右／左）：肩関節屈曲170／70，外転170／65，肘関節屈曲145／110，伸展0／-10．上腕〜手部の浮腫著明．MMT：左上肢3，右上肢4，両下肢4，DASH：機能障害82．5／100点，仕事100／100点．認知機能良好．ADL：更衣と入浴に介助を要し家事全般を妻が行っていた．妻は甲状腺癌の治療直後であり，自身の健康や介護による精神的な不安を抱き，事例に対し攻撃的な様子も見られた．事例からは妻への想いや作業ストーリーが語られ，家事という作業は妻への恩返しの意味がある事がうかがえた．しかし介護が必要となり，自己効力感の低下を認めた．
【経過】夫婦共に不安や別々の想いを抱え，夫婦関係に影響を及ぼす事で家事を通し妻に恩返しをしたいという事例の希望が行えない状態になっていると考えた．その為，夫婦関係の再構築が必要であると判断し，事例と妻の想いの共有を目的にMTDLPを導入した．夫婦それぞれに面接を実施し可能化したい作業を聴取すると，事例からは家事の獲得，妻からはセルフケアの獲得の希望が聴かれた．その為，更衣動作の自立，妻と協力して料理を作る事を合意目標とした．(実行度:1/10,満足度:1/10) 更衣練習は実動作を反復的に実施し，調理練習は作業工程が少ない料理から順にどの料理を作製するか事例と妻と検討した．それらと並行し妻には，事例の想いの共有や疾病理解の教育を合わせて進めた．取り組んだ内容のフィードバックを行い，課題を明確にしつつOTは建設的な関わりを図った．
【結果】疼痛：NRS1．ROM（左）：肩関節屈曲130°外転125°肘関節屈曲110°伸展-20°MMT：左上肢4．DASH：機能障害60点，仕事50点．ADL：更衣自立．簡単な料理や掃除等の家事が遂行可能．(実行度：7／10，満足度：8／10) 上腕〜手部の浮腫が増悪したが「少しずつ恩返しが出来ている」と自己効力感の向上を認めた．妻の攻撃的な様子はなくなり「無理しなくていいからね，感謝しています」と夫婦関係に良好な変化がみられた．
【考察】事例にとって家事は，妻への感謝を示す事，夫として妻を支えるという恩返しの意味があると推察された．しかし，夫婦共に精神的な不安を抱えている事で夫婦の関係性が変化し，事例の想いを果たせない状態となっていたと考えられる．今回，MTDLPを導入し達成に向け協働する過程を通し，事例の想いや身体状況について妻の認識が促進した事で，事例に対し労りや賞賛の想いへと変化し，夫婦関係が良好となり事例にとっての恩返しが可能となったのではないか．また恩返しをする事に価値を置きながら介入した事が，事例が恩返しをしている実感となり自己効力感の向上に繋がったと考える．今回，作業の意味を周囲と共有し，遂行に向けて協働する為にMTDLPの活用は有益であった．
【事例紹介】60歳代の男性．妻と2人暮らし．肺腺癌の既往あり．定年退職まで仕事に専念し妻が家事を担っていたが，退職後は家事が事例の役割であった．X日妻と散歩中に転倒し左上腕骨骨幹部骨折受傷．原発巣は安定しているも頚椎・胸椎に新規の骨転移が認められ病的骨折と診断された．X＋8日観血的整復固定術施行，X＋20日外来作業療法開始．
【外来作業療法初期評価時】利き手：右利き．疼痛NRS3．ROM（右／左）：肩関節屈曲170／70，外転170／65，肘関節屈曲145／110，伸展0／-10．上腕〜手部の浮腫著明．MMT：左上肢3，右上肢4，両下肢4，DASH：機能障害82．5／100点，仕事100／100点．認知機能良好．ADL：更衣と入浴に介助を要し家事全般を妻が行っていた．妻は甲状腺癌の治療直後であり，自身の健康や介護による精神的な不安を抱き，事例に対し攻撃的な様子も見られた．事例からは妻への想いや作業ストーリーが語られ，家事という作業は妻への恩返しの意味がある事がうかがえた．しかし介護が必要となり，自己効力感の低下を認めた．
【経過】夫婦共に不安や別々の想いを抱え，夫婦関係に影響を及ぼす事で家事を通し妻に恩返しをしたいという事例の希望が行えない状態になっていると考えた．その為，夫婦関係の再構築が必要であると判断し，事例と妻の想いの共有を目的にMTDLPを導入した．夫婦それぞれに面接を実施し可能化したい作業を聴取すると，事例からは家事の獲得，妻からはセルフケアの獲得の希望が聴かれた．その為，更衣動作の自立，妻と協力して料理を作る事を合意目標とした．(実行度:1/10,満足度:1/10) 更衣練習は実動作を反復的に実施し，調理練習は作業工程が少ない料理から順にどの料理を作製するか事例と妻と検討した．それらと並行し妻には，事例の想いの共有や疾病理解の教育を合わせて進めた．取り組んだ内容のフィードバックを行い，課題を明確にしつつOTは建設的な関わりを図った．
【結果】疼痛：NRS1．ROM（左）：肩関節屈曲130°外転125°肘関節屈曲110°伸展-20°MMT：左上肢4．DASH：機能障害60点，仕事50点．ADL：更衣自立．簡単な料理や掃除等の家事が遂行可能．(実行度：7／10，満足度：8／10) 上腕〜手部の浮腫が増悪したが「少しずつ恩返しが出来ている」と自己効力感の向上を認めた．妻の攻撃的な様子はなくなり「無理しなくていいからね，感謝しています」と夫婦関係に良好な変化がみられた．
【考察】事例にとって家事は，妻への感謝を示す事，夫として妻を支えるという恩返しの意味があると推察された．しかし，夫婦共に精神的な不安を抱えている事で夫婦の関係性が変化し，事例の想いを果たせない状態となっていたと考えられる．今回，MTDLPを導入し達成に向け協働する過程を通し，事例の想いや身体状況について妻の認識が促進した事で，事例に対し労りや賞賛の想いへと変化し，夫婦関係が良好となり事例にとっての恩返しが可能となったのではないか．また恩返しをする事に価値を置きながら介入した事が，事例が恩返しをしている実感となり自己効力感の向上に繋がったと考える．今回，作業の意味を周囲と共有し，遂行に向けて協働する為にMTDLPの活用は有益であった．