[PM-1-3] 回復期リハビリテーション病棟でのMTDLP活用によりTHA（人工股関節置換術）患者の教育指導に繋がった事例
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟協会の指針であるOT5か条（第2版）では，「地域生活の拡大・充実（再建）に向けて，作業に焦点を当てた個別性のある支援を行うこと」が求められている．また，その目標達成のために，課題に対する多職種による対象者主体の具体的な調整・支援が必要である．今回，回復期リハビリテーション病棟（以下，回復期病棟）において，人工股関節置換術（以下，THA）後の対象者に，生活行為向上マネジメント（以下，MTDLP）を活用したことで，主体的な患者教育指導に繋げることができた事例を報告する．
【倫理的配慮】個人情報とブライバシー保護に配慮し，対象者本人に対して口頭および書面にて説明を行った．今回の演題発表に際しての同意を得ている．
【事例紹介】80歳代後半の女性．身長：148.4cm，体重：59.9kg，BMI：27.2．夫と次男との3人暮らし．両変形性股関節症の診断．左股関節痛の増大によりA病院を受診したところ，関節破壊の進行が判明した．X日に左THA施行．X＋12日に当院回復期病棟入棟となった．
【作業療法評価】 MMSE：26点，MoCA-J：26点，股関節脱臼に関連する禁忌肢位理解には楽観的であった．FIM：74点（運動項目：44点・認知項目：30点）．起居動作：中等度介助，移乗動作：中等度介助，移動：車椅子にて介助．更衣動作：下衣着脱は全介助，トイレ動作：中等度介助，入浴動作：全介助．リスク評価および予測ツール合計スコア：5/12点．合意目標においては，実行度：1/10，満足度は2/10．
【基本方針および作業療法実施計画】患者教育指導の観点から多職種で協働することとした．基本的プログラム：ROM練習，筋力増強練習，基本動作練習．応用的プログラム：更衣動作や入浴動作などのADL練習，洗濯動作や調理動作などのIADL練習．社会適応的プログラム：屋外移動練習，公共交通機関利用練習，自己管理の促進．
【介入経過】X＋12日に作業療法開始．生活行為聞き取りシート，興味・関心チェックシートを用いたインテークにて「実は数十年間ずっと宗教を信仰していました」「ここ最近は行けていませんが，また教会に通えるようになりたいです」との発言あり．合意目標を「公共交通機関を利用して教会に参拝すること」に決定．生活行為マネジメントシートでのアセスメント，プランニングを経て，課題および目標・プログラムを多職種で共有した．作業療法，理学療法，管理栄養士，看護師らによる各職種での患者教育指導を実施．合意目標に関連した動作ポイントの指導，食事栄養指導，自主練習指導などに展開した．その経過において，対象者自身が主体的に取り組めるようになった．X＋62日に自宅での動作練習，X＋65日にはバスの乗車練習実施．退院前には生活行為引き継ぎとして，ご家族をはじめ，社会福祉士，ケアマネジャー，訪問リハビリスタッフに情報を共有．X＋70日に自宅退院となった．
【結果】FIM：112点（運動項目：79点・認知項目：33点）．基本動作，ADLはすべて自立．6分間歩行：220m，FBS：40点．リスク評価および予測ツールの合計スコア：7/12点．BMI：26．合意目標においては，実行度：1/10，満足度：8/10．
【考祭】THA患者に対しては，家事動作や社会的活動を考慮し，病院内ADLのみならず，幅広い視点での生活指導が望まれている．今回，対象者にとって価値ある作業に着目したこと，合意目標を多職種で共有したこと，MTDLPの各プロセスを丁寧に実施したことで，対象者が主体的に取り組める契機になり，患者教育指導の観点から多職種協働を図ることができたと考える．回復期病棟におけるMTDLPの活用は，患者教育指導を進めるうえでの一助になるだろう．
【倫理的配慮】個人情報とブライバシー保護に配慮し，対象者本人に対して口頭および書面にて説明を行った．今回の演題発表に際しての同意を得ている．
【事例紹介】80歳代後半の女性．身長：148.4cm，体重：59.9kg，BMI：27.2．夫と次男との3人暮らし．両変形性股関節症の診断．左股関節痛の増大によりA病院を受診したところ，関節破壊の進行が判明した．X日に左THA施行．X＋12日に当院回復期病棟入棟となった．
【作業療法評価】 MMSE：26点，MoCA-J：26点，股関節脱臼に関連する禁忌肢位理解には楽観的であった．FIM：74点（運動項目：44点・認知項目：30点）．起居動作：中等度介助，移乗動作：中等度介助，移動：車椅子にて介助．更衣動作：下衣着脱は全介助，トイレ動作：中等度介助，入浴動作：全介助．リスク評価および予測ツール合計スコア：5/12点．合意目標においては，実行度：1/10，満足度は2/10．
【基本方針および作業療法実施計画】患者教育指導の観点から多職種で協働することとした．基本的プログラム：ROM練習，筋力増強練習，基本動作練習．応用的プログラム：更衣動作や入浴動作などのADL練習，洗濯動作や調理動作などのIADL練習．社会適応的プログラム：屋外移動練習，公共交通機関利用練習，自己管理の促進．
【介入経過】X＋12日に作業療法開始．生活行為聞き取りシート，興味・関心チェックシートを用いたインテークにて「実は数十年間ずっと宗教を信仰していました」「ここ最近は行けていませんが，また教会に通えるようになりたいです」との発言あり．合意目標を「公共交通機関を利用して教会に参拝すること」に決定．生活行為マネジメントシートでのアセスメント，プランニングを経て，課題および目標・プログラムを多職種で共有した．作業療法，理学療法，管理栄養士，看護師らによる各職種での患者教育指導を実施．合意目標に関連した動作ポイントの指導，食事栄養指導，自主練習指導などに展開した．その経過において，対象者自身が主体的に取り組めるようになった．X＋62日に自宅での動作練習，X＋65日にはバスの乗車練習実施．退院前には生活行為引き継ぎとして，ご家族をはじめ，社会福祉士，ケアマネジャー，訪問リハビリスタッフに情報を共有．X＋70日に自宅退院となった．
【結果】FIM：112点（運動項目：79点・認知項目：33点）．基本動作，ADLはすべて自立．6分間歩行：220m，FBS：40点．リスク評価および予測ツールの合計スコア：7/12点．BMI：26．合意目標においては，実行度：1/10，満足度：8/10．
【考祭】THA患者に対しては，家事動作や社会的活動を考慮し，病院内ADLのみならず，幅広い視点での生活指導が望まれている．今回，対象者にとって価値ある作業に着目したこと，合意目標を多職種で共有したこと，MTDLPの各プロセスを丁寧に実施したことで，対象者が主体的に取り組める契機になり，患者教育指導の観点から多職種協働を図ることができたと考える．回復期病棟におけるMTDLPの活用は，患者教育指導を進めるうえでの一助になるだろう．